イヤイヤ期になると、これまで何でも食べていたこどもが急に食事を拒否するようになり、心配になる親御さんは多いものです。
「今日もほとんど食べない」「栄養が足りているのか不安」と悩みながら、毎回の食事時間が親子の攻防戦になってしまうこともあるでしょう。
イヤイヤ期の食べない行動には明確な理由があり、適切な対処法と工夫を知ることで改善することができます。
この記事では、食事を拒否する時の具体的な対処法から、原因の理解、楽しい食事のアイデア、長期的な改善方法まで詳しく解説します。
イヤイヤ期に食べない時の効果的な対処法
イヤイヤ期に食べない時は、無理強いせず食事環境を整えることで、こどもの自然な食欲を引き出すことが重要です。
最も基本的で重要なのは、無理強いしない姿勢を保つことです。「あと一口」「全部食べるまで席を立たない」といった強制的なアプローチは、かえって食事への嫌悪感を強めてしまいます。こどもが「いらない」「お腹いっぱい」と言った時は、その気持ちを受け入れ、「そうなんだね、今日はこれで終わりにしよう」と自然に食事を終わらせることが大切です。1回や2回食べなくても、健康に大きな影響はありませんし、強制することで食事に対するネガティブな印象を植え付けてしまう方が長期的にはマイナスです。
食事環境の見直しと改善も効果的な対処法です。テレビを消して食事に集中できる環境を作る、こどもが座りやすい高さの椅子を用意する、食器を扱いやすいサイズに変更するといった物理的な環境整備が重要です。また、食事の時間に家族が揃って楽しい雰囲気を作ることで、「食事は楽しい時間」という印象を与えることができます。騒がしすぎる環境や、急かすような雰囲気は避け、ゆったりとした時間の中で食事ができるよう配慮します。
タイミングと量の調整も重要なポイントです。こどもの食欲には波があり、機嫌や体調によって食べられる量が変わります。普段よりも少なめの量から始めて、「全部食べられた」という達成感を味わってもらうことで、食事への自信を育てることができます。また、間食の時間や量を見直し、食事の時間にお腹が空くようなリズムを作ることも大切です。おやつを食べすぎている場合は、量を減らしたり時間を早めたりして調整します。
家族との食事時間を活用することも効果的です。大人や兄弟姉妹が美味しそうに食べている様子を見ることで、こども自身も「食べてみたい」という気持ちが生まれることがあります。また、「今日はニンジンが甘いね」「このお肉柔らかいね」といった具合に、食べ物について楽しく会話をすることで、食事への興味を引くことができます。
段階的なアプローチも有効な方法です。完全に拒否している食材でも、まずは皿の上に少量置くことから始め、次に匂いを嗅いでもらう、舌で少し触れてもらう、小さく一口食べてもらうといった段階を踏むことで、徐々に慣れさせることができます。この時、各段階で無理をせず、こどものペースに合わせて進めることが重要です。
食べやすい形状や温度にする工夫も大切です。大きすぎる食材は小さく切る、硬すぎるものは柔らかく煮る、熱すぎるものは適温まで冷ますといった配慮により、こどもが食べやすい状態にします。また、手づかみで食べられるメニューを増やすことで、こども自身が「自分で食べられた」という達成感を得やすくなります。
代替案を用意することも効果的な対処法です。「これが嫌なら、こっちはどう?」といった具合に、2〜3の選択肢を用意することで、こども自身が選ぶ楽しさを味わいながら、何かしら栄養のあるものを摂取してもらうことができます。ただし、選択肢が多すぎると迷ってしまうため、適度な数に絞ることが大切です。
このように、無理強いしない姿勢・環境の整備・タイミングの調整・家族での食事・段階的アプローチを組み合わせることで、食べない時も適切に対処することができます。
しかし、効果的な対処をするためには、なぜ食べなくなるのかその原因を理解することも重要です。
なぜ食べなくなるのか?原因と背景
イヤイヤ期に食べなくなるのは、自立欲求の高まりと感覚の敏感さ、興味の変化が主な原因となるためです。
自立欲求と食事の関係が最も大きな要因の一つです。イヤイヤ期のこどもは「自分で決めたい」「自分でやりたい」という気持ちが強くなるため、「これを食べなさい」と言われることに対して反発を感じやすくなります。食事の内容、量、食べる順番、使う食器なども、すべて自分で決めたいという欲求があります。また、スプーンやフォークを使いたがったり、手づかみで食べたがったりするのも、自分でコントロールしたいという気持ちの現れです。大人が食べさせようとすると「自分で!」と拒否するのは、決してわがままではなく、成長の証拠なのです。
味覚や食感への敏感さも重要な要因です。イヤイヤ期のこどもは感覚が非常に敏感になっており、食べ物の味、匂い、食感、温度などに対して大人以上に敏感に反応します。以前は平気だった食材でも、ちょっとした変化(調理法、温度、盛り付け方など)で食べられなくなることがあります。例えば、いつものニンジンでも、切り方が違う、煮込み時間が違うといった微細な変化でも「違う」と感じて拒否することがあります。また、複数の食材が混ざっている料理を嫌がり、一つずつ分けて食べたがる傾向も見られます。
遊びや他のことへの興味が食事よりも優先されることも原因の一つです。イヤイヤ期のこどもは好奇心が旺盛で、目の前にある楽しいことに夢中になりがちです。食事の時間になっても、遊んでいるおもちゃ、見ているテレビ、窓の外の景色などに興味が向いてしまい、食事に集中できないことがあります。また、食事よりも遊びの方が楽しいと感じるため、「早く食事を終わらせて遊びたい」という気持ちから、適当に食べたり、全く食べなかったりすることもあります。
体調や成長リズムの変化も見逃せない要因です。風邪の引き始め、疲労、便秘、歯の生え変わりなどの身体的な変化により、食欲が低下することがあります。また、成長のスパートが一段落した時期には、以前ほど多くのエネルギーを必要としないため、自然と食べる量が減ることもあります。さらに、活動量の変化(外遊びが少なかった日、昼寝をしすぎた日など)により、お腹が空くタイミングがずれることもあります。
食事への恐怖や不安も原因となることがあります。過去に食事中に怖い思いをした(食べ物で喉を詰まらせた、熱いものでやけどをしたなど)記憶があると、食事自体に不安を感じるようになることがあります。また、食事中に叱られた経験が多いと、「食事時間=嫌な時間」という関連付けができてしまい、食べることへの意欲が低下することもあります。
環境の変化による影響もあります。引っ越し、保育園の入園、家族構成の変化などがあると、ストレスから食欲が低下することがあります。また、いつもと違う場所での食事(外食、親戚の家など)では、環境に慣れずに食べられないこともよくあります。
親の態度や雰囲気の影響も重要です。親が「食べてくれない」と心配しすぎている雰囲気や、「早く食べなさい」と急かす態度は、こどもにもプレッシャーとして伝わり、かえって食べにくくなることがあります。また、食事中にスマートフォンを見ていたり、テレビがついていたりすると、こども自身も食事に集中できなくなります。
偏食の始まりという側面もあります。イヤイヤ期は味覚が発達し、好き嫌いがはっきりしてくる時期でもあります。以前は何でも食べていたこどもが、特定の食材や料理を嫌がるようになるのは、味覚の発達による自然な現象でもあります。
このように、イヤイヤ期の食べない行動は、自立欲求・感覚の敏感さ・興味の分散・体調変化・環境要因など複数の原因が複合的に作用して起こる現象なのです。
こうした原因を踏まえて、食事をもっと楽しい時間にするための工夫も重要です。
食事を楽しくするアイデアと工夫
食事を楽しくするには、見た目の工夫と参加型の体験を取り入れ、コミュニケーションを大切にすることが効果的です。
見た目や盛り付けの工夫は、こどもの食事への興味を大きく引きます。色とりどりの野菜を使ってカラフルな見た目にする、動物や花の形に切った食材を使う、キャラクター弁当風の盛り付けにするといった視覚的な楽しさを演出することで、「食べてみたい」という気持ちを引き出すことができます。例えば、ニンジンを星型に切る、ブロッコリーを「小さな森」に見立てる、ご飯でおにぎりを作って顔を描くといった簡単な工夫でも、こどもにとっては特別で楽しい食事になります。また、こども用の可愛い食器やカラフルなお箸、面白い形のコップを使うことで、食事道具自体への興味も高まります。
一緒に作る楽しさを体験してもらうことも非常に効果的です。年齢に応じて、野菜を洗う、材料を混ぜる、型抜きをする、盛り付けをするといった簡単な調理のお手伝いをしてもらうことで、「自分が作った」という特別感と達成感を味わってもらえます。2歳頃であれば、レタスをちぎったり、トマトを洗ったりといった簡単な作業から始め、3歳頃になると、クッキーの型抜きやサラダの盛り付けなども楽しめるようになります。自分が参加して作った料理は、普段食べない食材でも「食べてみよう」という気持ちが生まれやすくなります。
食材や調理法の変化を楽しむことも大切です。同じ野菜でも、生で食べる、茹でる、焼く、蒸すといった違いを体験してもらったり、切り方を変える(輪切り、千切り、乱切りなど)ことで、新しい発見と楽しみを提供できます。また、「今日は特別にピックに刺して食べよう」「手づかみで食べていいよ」といった特別感のある食べ方を提案することで、いつもの食材でも新鮮な気持ちで楽しめます。
食事中のコミュニケーション術も重要な要素です。「このトマトは甘いね」「このお肉は柔らかいね」といった食材についての楽しい会話をしたり、「今日の給食は何だった?」「明日は何を食べたい?」といった食事に関する話題で盛り上がったりすることで、食事の時間がコミュニケーションの楽しい時間になります。また、「もぐもぐタイム」「ごっくんできた」といった食べる動作を言葉にして楽しむことで、食べること自体を遊びの一部にすることができます。
テーマ食事の企画も子どもたちに人気です。「今日は赤い食べ物の日」「丸い食べ物を集めました」「今日は手づかみデー」といったテーマを設定することで、食事に特別感と楽しさを演出できます。また、「レストランごっこ」をして、こどもがお客さんになったり、逆に店員さんになったりして遊びながら食事をすることも効果的です。
季節感を取り入れた工夫も喜ばれます。春は桜の形に切った食材、夏はスイカや海の生き物をイメージした盛り付け、秋は紅葉の色合いを活かした料理、冬は雪だるまや雪の結晶をイメージした白い食材を使うといった季節に合わせた演出により、食事と季節のつながりを感じてもらうことができます。
音楽や歌を取り入れることも効果的です。「いただきます」の歌、「野菜の歌」、食べ物に関する手遊び歌などを食事の時間に取り入れることで、楽しい雰囲気を演出できます。また、「もぐもぐ」「かみかみ」といった擬音語を使って、食べる動作を楽しく表現することも、小さなこどもには喜ばれます。
食材への興味を引く工夫として、食べる前に「これは何の野菜かな?」「どんな味がするかな?」といったクイズ形式で興味を引いたり、「この野菜はどこで育つのかな?」といった食材の背景について簡単に話したりすることで、食べ物への知的好奇心を刺激することができます。
成功体験を積み重ねることも重要です。「今日は全部食べられたね」「新しい食べ物に挑戦できたね」「上手にフォークが使えたね」といった具合に、食事に関する小さな成功を見つけて具体的に褒めることで、食事への自信と楽しさを育てることができます。
このように、見た目の工夫・参加体験・調理法の変化・コミュニケーション・テーマ設定・季節感・音楽・知的好奇心・成功体験を組み合わせることで、食事を楽しい時間に変えることができます。
しかし、これらの工夫を一時的なものに終わらせず、長期的な改善につなげることも重要です。
食事習慣を改善する長期的なアプローチ
食事習慣の改善には、規則正しいリズムの確立と栄養への理解、食への興味を育てることを基盤とした長期的なアプローチが重要です。
規則正しい食事リズムの確立が最も基本的で重要な改善策です。毎日決まった時間に朝食、昼食、夕食、おやつを摂ることで、こどもの体内リズムが整い、自然とお腹が空くタイミングが身につきます。例えば、朝7時に朝食、12時に昼食、15時におやつ、18時に夕食といった具体的なスケジュールを決めて、家族全員で守るようにします。このリズムが確立されると、食事の時間になると自然と食欲が湧いてくるようになり、食べない問題も改善されやすくなります。
栄養バランスの考え方も長期的な視点で捉えることが大切です。1回の食事ですべての栄養素を完璧に摂る必要はなく、1週間程度の期間で全体的なバランスが取れていれば十分です。「今日は野菜をあまり食べなかったけれど、昨日はよく食べた」「肉は嫌がるけれど、魚は好きなので魚でタンパク質を摂取」といった柔軟な考え方を持つことで、親のストレスも軽減され、こどもにとってもプレッシャーの少ない食事環境を作ることができます。
食への興味を育てる方法として、食材の成長過程を見せることが効果的です。ベランダでプチトマトやハーブを育てる、スーパーで一緒に食材を選ぶ、農業体験に参加するといった活動を通して、食べ物がどこから来るのか、どのように育つのかを学んでもらうことで、食材への愛着と興味を育てることができます。また、図鑑や絵本を使って野菜や果物について学んだり、食べ物に関するクイズや遊びを取り入れたりすることも効果的です。
家族全体での食事の価値観を統一することも重要です。「食事は楽しい時間」「家族で過ごす大切な時間」「感謝していただく時間」といった食事に対するポジティブな価値観を家族全員で共有することで、こどもにとって食事が特別で大切な時間として認識されるようになります。また、祖父母や他の家族も同じ考え方で接することで、一貫したメッセージを伝えることができます。
成長に合わせた段階的改善も大切なアプローチです。2歳前後では手づかみ食べや好奇心を大切にし、3歳頃からは食事のマナーや栄養について簡単に教え始め、4歳頃には食材の名前や調理方法にも興味を持ってもらうといった段階的な目標設定をします。無理に早く進めようとせず、そのこどもの発達段階に合わせてゆっくりと改善していくことが重要です。
食事記録をつけることも長期的な改善に役立ちます。何を食べた、どのくらい食べた、どんな様子だったかを簡単にメモしておくことで、そのこどもの食事パターンや好みの変化を把握でき、より効果的なアプローチを見つけることができます。また、少しずつでも改善している部分を客観的に確認できるため、親の励みにもなります。
専門家との連携も時には必要です。栄養士、保健師、小児科医などに相談することで、専門的な視点からのアドバイスを受けることができます。特に、極端に食べない状況が長期間続く場合や、体重の増加に問題がある場合は、早めに専門家に相談することが重要です。
環境の継続的な改善も大切です。食事をする空間を心地よく保つ、家族全員が楽しく食事できる雰囲気を維持する、食事に関するストレスを家庭に持ち込まないといった環境面での配慮を継続することで、長期的に良好な食事習慣を維持することができます。
他の子との比較をしないことも重要な心構えです。「○○ちゃんはよく食べるのに」「保育園ではちゃんと食べているのに」といった比較ではなく、そのこども自身の過去と比較して「以前よりも食べられるようになった」「新しい食材に挑戦できた」といった成長に注目することで、こどもの自信を育て、長期的な改善につなげることができます。
将来的な目標設定も効果的です。「小学生になったら給食を楽しく食べられるように」「家族でレストランに行った時に楽しく食事できるように」といった具体的な将来像を持つことで、日々の小さな改善に意味を見出し、継続的な取り組みのモチベーションを保つことができます。
このように、規則正しいリズム・栄養バランスの理解・食への興味育成・家族での価値観統一・段階的改善・専門家連携・環境改善・比較しない姿勢・将来目標を組み合わせることで、イヤイヤ期の食事問題を長期的に改善し、健全な食習慣を確立することができるでしょう。
監修

略歴
2017年 | 本田右志理事長より右脳記憶教育講座を指南、「JUNKK認定マスター講師」取得 |
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2018年 | 幼児教室アップルキッズをリビングサロンとして開講 |
2020年 | 佐々木進学教室Tokiwaみらい内へ移転、「佐々木進学教室幼児部」として再スタート |
2025年 | 一般社団法人 日本右脳記憶教育協会(JUNKK)代表理事に就任 |