こどもの指しゃぶりを見て、吸っている指と利き手に関係があるのか疑問に思ったことはありませんか。
右手の親指を吸っているから右利きになるのか、それとも利き手とは無関係なのか気になります。
また、どの指を吸うかによって何かわかることがあるのか、親として知っておきたいと思うのは自然なことです。
この記事では、指しゃぶりと利き手の関係から、吸う指の種類と特徴、利き手の発達との関連、そして吸う指を変える必要性について詳しく解説します。
指しゃぶりと利き手に関係はあるのか
指しゃぶりと利き手には一定の関係がありますが、必ずしも一致するわけではなく、個人差が大きいのが特徴です。
研究で分かっていることとして、いくつかの研究では、胎児期や乳児期に吸う指と、後に確立される利き手との間に関連性があることが示されています。例えば、超音波検査で胎児が右手の親指を吸っている場合、その後右利きになる確率が高いという報告があります。また、生後数ヶ月の段階で一貫して右手の指を吸う赤ちゃんは、右利きになる傾向があるとされています。
しかし、この関連性は絶対的なものではありません。右手の指を吸っていても左利きになる子もいれば、左手の指を吸っていても右利きになる子もいます。統計的な傾向としては関連があるものの、個々のケースでは必ずしも当てはまらないのです。研究によると、吸う指と利き手が一致する割合は約60〜70%程度とされており、残りの30〜40%は一致しないということになります。
利き手が決まる時期について、利き手は生まれた時から決まっているわけではなく、徐々に確立されていきます。新生児期から生後6ヶ月頃までは、まだ利き手の明確な偏りは見られず、両手を同じように使います。生後6ヶ月から1歳頃になると、徐々にどちらかの手を好んで使う傾向が現れ始めますが、まだ確定的ではありません。
1歳から3歳頃にかけて、利き手の傾向がより明確になってきます。スプーンを持つ手、おもちゃを取る手などに偏りが見られるようになります。しかし、まだこの時期も完全に確定しているわけではなく、状況によって使う手が変わることもあります。3歳から4歳頃には、ほとんどの子で利き手がほぼ確立されます。絵を描く、箸を持つ、ボールを投げるといった動作で、一貫して同じ手を使うようになります。
指しゃぶりの指の選び方には、いくつかのパターンがあります。最も多いのは親指を吸うパターンで、全体の約70〜80%がこれに該当するとされています。親指は太くて吸いやすく、また口に入れやすい位置にあるため、自然と選ばれやすいのです。右手の親指を吸う子が左手の親指を吸う子より若干多い傾向がありますが、これは右利きの人が多いことと関連していると考えられます。
人差し指を吸う子も一定数います。親指の次に多いのが人差し指で、約10〜15%程度とされています。人差し指は親指より細く長いため、口の奥まで入れやすく、異なる感覚刺激を得られます。また、中指や薬指を吸う子も少数ですが存在します。複数の指を同時に吸う子、手全体や拳を吸う子もおり、指しゃぶりのスタイルは多様です。
個人差が大きい理由として、指しゃぶりの指の選び方には様々な要因が影響します。まず、胎児期の姿勢が影響することがあります。お腹の中での体の向きや位置によって、どちらの手が口に近いかが決まり、それが指しゃぶりの習慣につながることがあります。また、生まれた後の抱き方も影響します。授乳時の抱き方によって、どちらの手が自由になるかが変わり、自由な方の手の指を吸うようになることがあります。
感覚の好みも重要な要因です。こどもによって、親指の太さと短さが好きな子、人差し指の細さと長さが好きな子など、好みの感覚刺激が異なります。この感覚の好みは個人差が大きく、利き手とは必ずしも関係しません。また、偶然の習慣形成もあります。たまたま右手の指が口に入って吸い始め、それが習慣になったというケースも多く、必ずしも利き手や脳の優位性と関連しているわけではありません。
両手を使う時期の影響もあります。乳児期はまだ両手を同じように使う時期であり、その時期に形成された指しゃぶりの習慣が、後の利き手とは異なる手の指を吸うパターンとして残ることがあります。さらに、兄弟姉妹の影響で、上の子が吸っている指を真似して、本来の利き手とは逆の手の指を吸い始めることもあります。
このように、指しゃぶりと利き手には一定の関連性がありますが、絶対的な関係ではなく、様々な要因によって個人差が生まれるのです。
では、どの指を吸うかによって、何か特徴があるのでしょうか。
吸う指の種類と特徴
吸う指の種類によって、若干の傾向や特徴がありますが、発達や性格に決定的な違いがあるわけではありません。
親指を吸う子の特徴として、親指は最も一般的に吸われる指です。親指は太くて短く、吸いやすい形状をしています。また、握った時に自然と外側に出る位置にあるため、口に入れやすいのです。親指を吸う子は、比較的しっかりとした吸啜力を持つ傾向があり、授乳時もよく飲む子が多いとされています。
親指しゃぶりの利点として、親指は他の指に比べて器用に動かしやすく、自分で口に入れたり出したりしやすいという特徴があります。また、親指は太いため、歯茎への圧力が広く分散され、一点に集中しにくいという面もあります。ただし、長期間続けると出っ歯になりやすいという歯科的な懸念もあります。
親指を吸う時の姿勢として、多くの場合、残りの指を顔に添えたり、鼻に当てたりします。この姿勢が安定感をもたらし、より深い安心感を得られるようです。また、親指を吸いながら、もう一方の手で耳を触ったり、髪を触ったりする子も多く見られます。
人差し指を吸う子の特徴として、人差し指は親指の次に多く吸われる指です。人差し指は細くて長いため、口の中のより奥まで入れることができ、異なる感覚刺激を得られます。人差し指を吸う子は、より強い感覚刺激を求める傾向があるとする見解もありますが、科学的に確立された説ではありません。
人差し指しゃぶりの特徴として、人差し指を吸う時は、親指を顎に添えたり、頬に当てたりすることが多く見られます。この姿勢も安定感と安心感をもたらします。また、人差し指は細いため、歯の間に深く入り込みやすく、開咬(上下の前歯が噛み合わない状態)になりやすいという歯科的な特徴があります。
中指や薬指を吸う子は比較的少数ですが、存在します。中指は最も長い指であり、口の奥まで届きやすいという特徴があります。中指や薬指を吸う子は、親指や人差し指とは異なる感覚を求めていると考えられますが、なぜこれらの指を選ぶのかは個人によって異なり、明確な理由は分かっていません。
複数の指を吸う子もいます。親指と人差し指を同時に吸う、あるいは2〜3本の指をまとめて吸う子もいます。この場合、より広い範囲の感覚刺激を得られること、より強い吸引感を得られることが理由と考えられます。複数の指を吸う子は、単一の指を吸う子より、より強い安心感を求めている可能性があります。
指以外を吸う子(手全体、拳)の特徴として、新生児期から乳児期初期には、まだ指を器用に動かせないため、拳全体や手のひらを口に入れることが多く見られます。これは発達の初期段階では正常な行動です。しかし、月齢が進んでも拳全体を吸い続ける場合、より広範囲の感覚刺激を求めている、あるいは単に習慣として残っている可能性があります。
手全体を吸う場合、よだれが多くなり、手や袖が濡れやすいという特徴があります。また、皮膚トラブル(湿疹、ただれなど)も起こりやすいため、スキンケアに注意が必要です。拳を吸う習慣は、比較的早い時期にやめることが多く、1歳頃には特定の指を吸うパターンに移行することが一般的です。
布やタオルを吸う子もいます。指ではなく、ブランケットの端やタオルの角を吸う子もいます。これは厳密には指しゃぶりとは異なりますが、同じく安心感を得るための行動です。布の感触と口腔刺激を同時に得られることが、これらのこどもにとって心地よいのだと考えられます。
左右の手を使い分ける子もいます。日中は右手の指を吸い、夜は左手の指を吸うといった使い分けをする子もいます。これは、状況によって求める安心感のレベルが異なる、あるいは単に偶然の習慣である可能性があります。
このように、吸う指の種類には様々なパターンがあり、それぞれに若干の特徴がありますが、どの指を吸うから良い悪いということはありません。
吸う指と利き手の発達には、どのような関連があるのでしょうか。
利き手の発達と指しゃぶりの関連
利き手の発達と指しゃぶりには、胎児期から始まる発達の連続性の中で、一定の関連性が見られます。
胎児期の指しゃぶりと利き手の関係として、研究によると、胎児期の指しゃぶりは既に利き手の傾向を反映している可能性があります。妊娠15週頃から、超音波検査で胎児が指を吸う様子が観察されますが、右手の親指を吸う胎児が多いことが報告されています。これは、人口の約90%が右利きであることと一致しています。
胎児期の脳の発達において、既に左右の脳半球に機能的な差異が生まれ始めており、それが手の使い方の偏り、ひいては指しゃぶりの指の選択にも影響していると考えられます。ただし、胎児期の姿勢(子宮内での位置)も影響するため、必ずしも脳の優位性だけで決まるわけではありません。
乳児期の手の使い方と指しゃぶりの関係として、生後3〜6ヶ月頃から、赤ちゃんは徐々に意図的に手を動かせるようになります。この時期、おもちゃに手を伸ばす、物をつかむといった動作で、どちらの手をより多く使うかを観察することができます。指しゃぶりの指と、物を取る時によく使う手が一致していることが多く、これは脳の運動制御の偏りを反映していると考えられます。
生後6〜12ヶ月頃になると、より複雑な手の動作ができるようになります。積み木をつかむ、スプーンを持つといった動作で、利き手の傾向が現れ始めます。この時期に一貫して右手の指を吸う子は、右手で物を取ったり、右手でスプーンを持ったりする傾向が見られます。
幼児期の利き手の確立と指しゃぶりの関係として、1歳から3歳頃にかけて、利き手はより明確になっていきます。クレヨンで絵を描く、ボールを投げる、箸を持つといった動作で、一貫して同じ手を使うようになります。興味深いことに、利き手が確立する過程で、指しゃぶりをやめる子も多く見られます。これは、手を使った遊びや活動が増え、指しゃぶり以外の興味が広がるためと考えられます。
また、言語発達との関連も指摘されています。言語は主に左脳で処理され、左脳は右半身の運動も制御しています。そのため、言語発達と右利きには関連があるとされ、言葉が発達してくると同時に、利き手も確立し、指しゃぶりも減っていくという発達の流れが見られます。
指しゃぶりから見える発達のサインとして、指しゃぶりのパターンの変化は、発達の段階を示すサインとなることがあります。例えば、新生児期の無意識的な吸啜から、生後3〜6ヶ月頃の意図的な指しゃぶりへの移行は、運動制御の発達を示しています。特定の状況(眠い時、不安な時)でのみ指を吸うようになることは、感情と行動を結びつける認知発達の証です。
指しゃぶりをやめるタイミングも発達のサインです。3〜4歳頃に自然に指しゃぶりをやめる子が多いのは、この時期に自己調整能力、言語能力、社会性が大きく発達するためです。友達との関わりが増え、「大きい子は指を吸わない」という社会的な認識を持つようになることも、やめるきっかけになります。
左右の脳の発達と指しゃぶりの関係として、右利きの人は左脳が優位であり、左利きの人は右脳が優位(あるいは両方の脳を均等に使う)という傾向があります。指しゃぶりの指の選択も、この脳の優位性を反映している可能性があります。ただし、脳の発達は複雑で、指しゃぶりだけから脳の発達を判断することはできません。
両手利きの子の指しゃぶりとして、稀に両手利き(両利き)の子がいます。この場合、指しゃぶりも左右両方の手の指を使うことがあります。あるいは、特に偏りなくどちらの手の指も吸うことがあります。両手利きの子は、脳の左右の機能分化が典型的なパターンとは異なることがあり、その結果として指しゃぶりのパターンも特徴的になることがあります。
このように、利き手の発達と指しゃぶりには関連性があり、発達の過程を理解する一つの手がかりとなります。
では、吸う指を変えたり、無理に変えさせたりする必要はあるのでしょうか。
吸う指を変えたり無理に変えさせる必要性
吸う指を無理に変える必要は基本的になく、自然に任せることが最も良いアプローチです。
吸う指を変える必要はあるかという疑問について、結論から言えば、ほとんどの場合、吸う指を変える必要はありません。どの指を吸っているかよりも、指しゃぶり自体をいつやめるかの方がはるかに重要です。親指を吸っているから人差し指に変えさせる、右手の指を吸っているから左手の指に変えさせるといった介入は、通常必要ありません。
吸う指を変えようとすることは、こどもにとって大きなストレスになります。慣れ親しんだ安心方法を奪われ、別の方法を強制されることで、不安が増し、かえって指しゃぶりが強化されることもあります。また、親の過度な介入により、親子関係が悪化するリスクもあります。
歯並びへの影響の違いについて、確かに、吸う指によって歯並びへの影響は若干異なります。親指は太いため、前歯を広く押し出す傾向があり、出っ歯になりやすいとされています。一方、人差し指は細いため、歯の間に深く入り込み、開咬になりやすいとされています。中指や薬指も同様に、細長いため開咬のリスクがあります。
しかし、これらの違いは相対的なものであり、絶対的なものではありません。どの指を吸っていても、長期間続ければ歯並びには何らかの影響が出る可能性があります。逆に、早期にやめれば、どの指を吸っていても影響は最小限に抑えられます。つまり、「どの指を吸うか」よりも「いつやめるか」の方が、歯並びへの影響には重要なのです。
もし歯科医から「この指を吸うのは歯並びに良くない」と指摘された場合でも、まず考えるべきは「指しゃぶり自体をやめる」ことであり、「別の指に変える」ことではありません。別の指に変えても、指しゃぶりを続けている限り、何らかの影響は残ります。
無理に変えるリスクとして、吸う指を無理に変えようとすることには、いくつかのリスクがあります。まず、心理的ストレスが大きくなります。慣れ親しんだ方法を変えることは、大人でも難しいことです。こどもにとっては、唯一の確実な安心方法を奪われることになり、不安やストレスが増大します。
また、他の問題行動が出現する可能性があります。指しゃぶりを無理に止められたり変えられたりすると、代わりに爪噛み、髪を抜く、頭を打ちつけるといった他の問題行動が現れることがあります。これは、安心を得る方法を失ったこどもが、別の方法を探し求める結果です。
親子関係の悪化も懸念されます。吸う指について繰り返し注意されたり、手を引っ張られたりすることで、こどもは親に対して不信感や反発を持つようになることがあります。これは長期的な親子関係にも影響を及ぼす可能性があります。
自然に任せるべき理由として、第一に、こども自身が選んだ指には理由があるということです。その指が最も安心感を与える、その感覚が最も心地良い、その指が最も口に入れやすいといった、こどもなりの理由があって選んでいます。その選択を尊重することが大切です。
第二に、多くの場合、指しゃぶり自体が3〜4歳頃には自然にやめられます。どの指を吸っていても、最終的にはやめるのですから、吸う指を変えることにエネルギーを使うよりも、適切な時期に指しゃぶり全体をやめるサポートをする方が効果的です。
第三に、無理な介入は逆効果になることが多いということです。指しゃぶりに対する過度な注意や介入は、こどもの意識をより指しゃぶりに向けさせ、かえって習慣を強化することがあります。自然に任せ、他の活動に興味を向けさせる方が、結果的にスムーズにやめられることが多いのです。
例外的に介入が必要な場合として、ごく稀に、医学的な理由で吸う指を変える必要がある場合があります。例えば、特定の指に怪我や皮膚疾患があり、その指を吸うことで悪化する場合や、先天的な指の奇形があり、その指を吸うことで問題が生じる場合などです。このような場合は、医師の指導のもとで、慎重に対応する必要があります。
また、非常に激しく吸うために、特定の指の皮膚や爪に深刻なダメージが生じている場合は、一時的に保護する意味で、別の指に誘導することを検討することもあります。ただし、これも専門家に相談しながら、こどもの心理的負担を最小限にする方法で行う必要があります。
見守る際のポイントとして、吸う指を変える必要はありませんが、指しゃぶり全体については適切に見守ることが大切です。衛生面に気をつける(手を清潔に保つ、爪を短く切る)、皮膚トラブルがあればケアする、4歳を過ぎても続いている場合は徐々にやめる働きかけを始める、歯並びへの影響が気になる場合は歯科医に相談する、といった対応が必要です。
こどもの心理状態を理解することも重要です。指しゃぶりが急に増えた場合は、何かストレスや不安を感じているサインかもしれません。吸う指を変えることに注目するのではなく、こどもの心の状態に目を向け、必要なサポートを提供することが大切です。
このように、吸う指を無理に変える必要はなく、自然に任せながら、適切な時期に指しゃぶり全体をやめるサポートをすることが、最も良いアプローチなのです。そして、どの指を吸っているかに一喜一憂するのではなく、こどもの健やかな成長全体を見守る広い視野を持つことが、何より大切なのです。
監修

略歴
2017年 | 本田右志理事長より右脳記憶教育講座を指南、「JUNKK認定マスター講師」取得 |
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2018年 | 幼児教室アップルキッズをリビングサロンとして開講 |
2020年 | 佐々木進学教室Tokiwaみらい内へ移転、「佐々木進学教室幼児部」として再スタート |
2025年 | 一般社団法人 日本右脳記憶教育協会(JUNKK)代表理事に就任 |