赤ちゃんが突然夜中に泣き出して、何をしても泣き止まない経験をされた方もいらっしゃるでしょう。
この夜泣きという現象に、多くの保護者が悩まされています。
実は、夜泣きがいつから始まるかには、赤ちゃんの脳と身体の発達が深く関わっているのです。
一般的には生後3〜4ヶ月頃からですが、いつから始まるかには個人差も大きいものです。
本記事では、月齢別の特徴や原因、そして具体的な対応方法まで詳しく解説します。
夜泣きはいつから始まるの?
夜泣きは、一般的に生後3〜4ヶ月頃から始まることが多く、この時期に赤ちゃんの睡眠リズムが大きく変化するためです。
まず、夜泣きとは何かを正確に理解しておきましょう。夜泣きとは、夜間に突然目を覚まして激しく泣き、抱っこや授乳などの通常の対処法ではなかなか泣き止まない状態を指します。空腹やおむつの不快感など、明確な理由がある泣きとは区別されます。
生後3〜4ヶ月は、赤ちゃんの脳が急速に発達する時期です。この頃になると、昼夜の区別がついてきて、夜にまとまって眠れるようになり始めます。しかし同時に、睡眠の質も変化します。新生児期はほとんどがレム睡眠(浅い眠り)でしたが、この時期からノンレム睡眠(深い眠り)が増えてきます。この睡眠構造の変化が、夜泣きの始まりと関連していると考えられています。
ただし、夜泣きが始まる時期には大きな個人差があります。生後2ヶ月頃から始まる赤ちゃんもいれば、生後6ヶ月を過ぎてから始まる赤ちゃんもいます。また、まったく夜泣きをしない赤ちゃんも存在します。これは、赤ちゃんの気質、脳の発達ペース、生活環境などが影響しているためです。
つまり、夜泣きは生後3〜4ヶ月頃から始まることが多いものの、時期には個人差があり、早い子も遅い子もいるということです。
では、月齢によって夜泣きの特徴はどのように変化するのでしょうか。
月齢別にみる夜泣きの特徴といつから始まるのか
月齢によって夜泣きの原因や特徴は大きく異なり、発達段階に応じた理解が大切です。
新生児期〜生後2ヶ月(夜泣きではなく生理的な泣き)
この時期の夜間の泣きは、厳密には夜泣きとは呼びません。新生児は昼夜の区別がまだついておらず、2〜3時間おきに目を覚ますのが自然な状態です。この時期の泣きは、空腹、おむつの不快感、室温の問題など、明確な理由があることがほとんどです。
赤ちゃんの脳はまだ未熟で、体内時計が確立されていません。そのため、昼も夜も関係なく、お腹が空いたら泣き、眠くなったら眠るというサイクルを繰り返します。これは生理的に必要な行動であり、異常ではありません。
この時期は、泣いている理由を一つひとつ確認して対応することが基本です。授乳、おむつ交換、抱っこなどで対応すれば、比較的落ち着くことが多いでしょう。
生後3〜4ヶ月(夜泣きの始まり)
生後3〜4ヶ月になると、いわゆる夜泣きが始まる赤ちゃんが増えてきます。この時期は、体内時計が発達し始め、昼夜のリズムが整い始める過渡期です。夜にまとまって眠れる時間が少しずつ長くなってきますが、睡眠の構造が変化する中で、夜間に突然泣き出すことがあります。
この時期の夜泣きは、睡眠サイクルの移行時に起こりやすいという特徴があります。レム睡眠からノンレム睡眠へ、またはその逆へ移行する際に、中途半端に目が覚めてしまうのです。完全に目覚めきれず、かといって再び眠りに戻ることもできず、不快感から泣いてしまいます。
また、この頃は首がすわり、寝返りの練習を始める赤ちゃんもいます。日中に獲得した新しい運動能力を、脳が睡眠中にも処理しようとして、身体が動いてしまい目が覚めることもあります。
生後5〜8ヶ月(夜泣きのピーク期)
生後5〜8ヶ月は、夜泣きが最も激しくなる時期と言われています。この頃の赤ちゃんは、日中の活動量が大幅に増え、寝返り、お座り、ずりばいなど、様々な運動発達を遂げます。また、人見知りが始まり、情緒面でも大きな発達が見られる時期です。
日中に受けた刺激や経験を、脳は睡眠中に整理・統合します。この処理過程で、赤ちゃんは夢を見たり、記憶を定着させたりしています。刺激が多すぎると、脳の処理が追いつかず、睡眠が浅くなって夜泣きにつながることがあります。
また、離乳食が始まる時期でもあり、消化の問題やアレルギーなどが影響することもあります。歯が生え始める不快感も、夜泣きの一因となります。
この時期の夜泣きは、理由が複合的で対応が難しいことが多いですが、多くの赤ちゃんが経験する正常な発達過程の一部です。
生後9ヶ月〜1歳半(人見知り・場所見知りによる夜泣き)
生後9ヶ月を過ぎると、赤ちゃんの認知能力が大きく発達します。記憶力が向上し、ママやパパとの愛着がより強固になる一方で、分離不安が強まる時期でもあります。
この時期の夜泣きは、日中に経験した分離不安や、新しい環境への不安が影響していることが多いです。保育園に通い始めた、旅行に行った、引っ越しをしたなど、環境の変化があると夜泣きが増えることがあります。
また、つかまり立ちや伝い歩き、早い子では歩き始める時期でもあり、運動発達に伴う興奮や疲労も夜泣きの原因となります。言葉の理解も進む時期で、脳が新しい情報を処理する負荷が高まっています。
このように、月齢によって夜泣きの原因は様々に変化し、それぞれの発達段階に応じた理解と対応が求められます。
それでは、夜泣きが始まる背景にある具体的な原因を深く見ていきましょう。
夜泣きがいつから始まるかに関わる主な原因
夜泣きが始まる背景には、赤ちゃんの脳と身体の発達に伴う複数の要因が関係しています。
最も大きな要因は、脳の発達段階と睡眠リズムの変化です。生後3〜4ヶ月頃、赤ちゃんの体内時計を司る視交叉上核という脳の部位が発達してきます。これにより、光を感じて昼夜のリズムを認識できるようになります。しかし、この移行期は不安定で、睡眠リズムが乱れやすく、夜泣きが始まるきっかけとなります。
レム睡眠とノンレム睡眠のバランスも重要な要因です。新生児期はレム睡眠の割合が約50%と非常に高く、浅い眠りが大半を占めます。成長とともにノンレム睡眠が増えていきますが、この変化の過程で、睡眠サイクルの切り替わりがうまくいかず、中途覚醒しやすくなります。特に、レム睡眠からノンレム睡眠へ移行する際や、その逆の際に、完全に覚醒してしまうことがあります。
日中の刺激や経験の処理も見逃せません。赤ちゃんは日々、膨大な量の新しい情報を取り入れています。見たこと、聞いたこと、触れたこと、すべてが学習の材料です。これらの情報は、睡眠中に脳で整理され、記憶として定着されます。刺激が多すぎる日や、特別な経験をした日の夜は、脳の活動が活発になり、睡眠が浅くなって夜泣きにつながることがあります。
体調や環境の変化も大きな影響を与えます。風邪の引き始め、予防接種の後、歯が生え始める時期などは、身体の不快感から夜泣きが増えることがあります。また、室温が暑すぎたり寒すぎたり、部屋が明るすぎたり、音がうるさかったりするなど、睡眠環境の問題も原因となります。引っ越しや旅行、来客など、普段と違う状況も赤ちゃんにとってはストレスとなり、夜泣きの引き金になることがあります。
さらに、赤ちゃんの気質も関係しています。もともと敏感な気質の赤ちゃんは、小さな変化にも反応しやすく、夜泣きしやすい傾向があります。一方、おおらかな気質の赤ちゃんは、多少の変化があっても比較的よく眠れることが多いです。
このように、夜泣きが始まる原因は一つではなく、複数の要因が複雑に絡み合って起こる現象なのです。
では、実際に夜泣きが始まったとき、どのように対応すればよいのでしょうか。
夜泣きが始まったときの月齢別対応方法
月齢に応じた適切な対応をすることで、赤ちゃんも保護者も少しでも楽になることができます。
生後3〜4ヶ月の夜泣き対応
この時期は、まだ睡眠リズムが不安定な時期なので、優しく対応することが基本です。泣いたらすぐに駆けつけて、抱っこしてあげましょう。まだセルフコンフォーティング(自分で落ち着く力)が十分に育っていないため、保護者の温もりと安心感が必要です。
抱っこの際は、縦抱きにして軽く揺らしたり、背中をトントンとリズミカルに叩いたりすると落ち着くことが多いです。胎内にいたときの環境に近い状態を作ってあげると、安心して眠りに戻れることがあります。
授乳も有効な方法です。母乳やミルクを飲むことで安心し、再び眠りにつけることがあります。ただし、授乳の習慣が夜泣き対応の唯一の方法になってしまうと、後々大変になることもあるので、抱っこや声かけなど、他の方法も併用することをおすすめします。
室温や寝具の確認も忘れずに。暑すぎたり寒すぎたりしていないか、布団がかかりすぎていないかなどをチェックしましょう。
生後5〜8ヶ月の夜泣き対応
この時期は夜泣きのピーク期で、対応が最も難しい時期です。すぐに抱き上げずに、まず少し様子を見るという方法も試してみましょう。数分間だけ見守り、赤ちゃんが自分で再び眠りに戻れるか確認します。ただし、激しく泣いている場合や長時間泣き続ける場合は、無理せず抱っこしてあげてください。
抱っこする際は、明るい電気をつけず、薄暗い照明のままで対応します。明るい光は脳を覚醒させてしまうため、できるだけ暗い環境を保ちましょう。また、あまり刺激的な遊びや会話は避け、静かにゆっくりと揺らしたり、子守唄を小さな声で歌ったりします。
日中の活動を見直すことも重要です。朝はしっかり日光を浴びせ、日中は適度に身体を動かす遊びを取り入れましょう。ただし、寝る前の2時間は興奮するような遊びは避け、静かに過ごす時間を作ります。
入眠儀式を確立することも効果的です。お風呂→授乳やミルク→絵本→子守唄→就寝というように、毎晩同じ流れを作ることで、赤ちゃんは「これから寝る時間だ」と理解しやすくなります。
生後9ヶ月以降の夜泣き対応
この時期になると、言葉の理解が進んでいるため、優しく声をかけることが効果的です。「大丈夫だよ」「ママ(パパ)はここにいるよ」と安心させる言葉をかけながら、背中をさすったり、手を握ったりします。
添い寝をしている場合は、抱き上げずに寝たまま対応することも可能になってきます。身体に触れて安心感を与えながら、眠りに戻るのを待ちます。ただし、これで落ち着かない場合は、無理せず抱っこしてあげましょう。
分離不安が強い時期なので、日中にたっぷりスキンシップを取ることが大切です。保護者と十分に関わり、安心感を得られた日は、夜も比較的よく眠れる傾向があります。
また、日中に大きな環境変化があった日は、夜泣きが増えることを予測して、いつもより早めに寝かしつけを始めたり、入眠儀式を丁寧に行ったりするなど、工夫しましょう。
このように、月齢に応じた対応を心がけることで、夜泣きへの負担を軽減できます。
さらに、夜泣きが始まる前から予防的にできることもあります。
夜泣きが始まる前からできる予防的な生活習慣
夜泣きを完全に防ぐことは難しいですが、規則正しい生活習慣を整えることで、夜泣きの頻度や強度を軽減できる可能性があります。
まず、規則正しい生活リズムの確立が基本です。毎日同じ時間に起き、同じ時間に寝るというリズムを作ることで、体内時計が整いやすくなります。朝は7時頃までには起こし、カーテンを開けて日光を浴びせましょう。朝の光が体内時計をリセットし、夜の睡眠の質を高めます。
昼寝の時間も重要です。月齢に応じた適切な昼寝時間を確保しつつ、遅い時間の昼寝は避けましょう。生後5〜6ヶ月以降は、15時までには昼寝を終えるようにすると、夜の寝つきが良くなります。昼寝のさせすぎも夜の睡眠に影響するため、月齢に応じた適切な時間を守ることが大切です。
日中の適度な活動と刺激も大切ですが、バランスが重要です。外気浴や散歩、月齢に応じた遊びなどで、適度に身体と脳を使うことは良質な睡眠につながります。ただし、刺激が多すぎると逆効果になるため、赤ちゃんの様子を見ながら調整しましょう。特に午後は、穏やかな遊びを中心にし、興奮させすぎないように注意します。
入眠儀式の習慣化は、夜泣き予防に非常に効果的です。お風呂→授乳→絵本→子守唄など、毎晩同じ流れを繰り返すことで、赤ちゃんは「この流れの後は眠る時間」と学習します。この予測可能性が安心感につながり、スムーズな入眠と安定した睡眠を促します。入眠儀式は、生後2〜3ヶ月頃から始めることができます。
寝室の環境づくりも見逃せません。室温は夏場26〜28度、冬場20〜23度程度が適切です。湿度は50〜60%に保ちましょう。寝室は暗くし、夜間の授乳やおむつ替えの際も、必要最小限の照明にとどめます。また、静かな環境を保つことも大切ですが、完全な無音よりも、ホワイトノイズや優しい音楽を小さく流す方が、かえって安眠できることもあります。
寝具の選び方も重要です。硬めのマットレスを使用し、枕は基本的に不要です。布団のかけすぎに注意し、赤ちゃんが暑くなりすぎないようにしましょう。季節に応じて、スリーパーなどを活用するのも良い方法です。
このように、日々の生活習慣を整えることで、夜泣きが始まるリスクを減らし、始まっても軽度で済む可能性が高まります。
では、夜泣きはいつまで続くのか、そして長期化する場合の対応についても知っておきましょう。
夜泣きはいつまで続く?親自身のケアも大切に
多くの赤ちゃんの夜泣きは1歳半〜2歳頃までには自然に落ち着きますが、それまでの期間、保護者自身のケアも非常に重要です。
一般的に、夜泣きは1歳半から2歳頃には自然に減少し、消失することが多いです。この頃になると、脳の発達が進み、睡眠リズムが安定してきます。また、言葉でのコミュニケーションができるようになり、日中に不安や感情を表現できるため、夜間に処理すべき情報が減少します。自己調整能力も向上し、夜中に目が覚めても自分で再び眠りにつけるようになります。
ただし、3歳を過ぎても夜泣きが続く子どももいます。この場合、睡眠環境の問題、日中のストレス、身体の不調、発達上の特性などが影響している可能性があります。長引く場合は、小児科医や睡眠の専門家に相談することをおすすめします。睡眠時無呼吸症候群や鉄欠乏性貧血など、医学的な問題が隠れていることもあるためです。
夜泣きへの対応で最も大切なのは、実は保護者自身のストレスケアです。毎晩の夜泣き対応は、想像以上に心身に負担がかかります。睡眠不足が続くと、判断力が低下し、イライラしやすくなり、育児全体がつらくなってしまいます。
可能であれば、パートナーと交代で対応しましょう。「今日は私、明日はあなた」というように分担することで、それぞれがまとまった睡眠を取れる日を確保できます。一人で抱え込まず、祖父母や信頼できる人に時々頼ることも大切です。数時間でも赤ちゃんを預けて、自分の時間を持つことは、心の健康を保つために必要なことです。
日中に少しでも仮眠を取ることも重要です。赤ちゃんが昼寝している間に、家事を後回しにしてでも一緒に眠りましょう。完璧な家事よりも、自分の睡眠を優先することが、長期的には家族全体の幸福につながります。
また、同じ悩みを持つ保護者とつながることも心の支えになります。育児サークルやSNSなどで、夜泣きの経験を共有し、励まし合うことで、孤独感が軽減されます。「自分だけじゃない」と思えることは、大きな救いになります。
専門家への相談タイミングとしては、夜泣きが3歳を過ぎても続く、保護者が精神的に限界を感じている、赤ちゃんの日中の様子に気になる点がある、といった場合が挙げられます。早めに相談することで、適切なアドバイスや支援を受けられ、状況が改善することも多いのです。
夜泣きは、多くの家庭が経験する一時的な現象です。必ず終わりが来ます。今がつらい時期でも、赤ちゃんの成長とともに状況は変化していきます。完璧を目指さず、できる範囲で対応しながら、自分自身も大切にしてください。周囲のサポートを得ながら、この時期を乗り越えていきましょう。
監修

略歴
2017年 | 本田右志理事長より右脳記憶教育講座を指南、「JUNKK認定マスター講師」取得 |
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2018年 | 幼児教室アップルキッズをリビングサロンとして開講 |
2020年 | 佐々木進学教室Tokiwaみらい内へ移転、「佐々木進学教室幼児部」として再スタート |
2025年 | 一般社団法人 日本右脳記憶教育協会(JUNKK)代表理事に就任 |