イヤイヤ期にかわいくないと感じてしまう時の心理とは?対処法も!

イヤイヤ期

イヤイヤ期の激しい癇癪や理不尽な要求に疲れ果てて、愛するわが子をかわいくないと感じてしまった経験は多くの親が持っています。

そんな自分の気持ちに罪悪感を抱き、「母親・父親失格なのではないか」と自分を責めてしまう方も少なくないでしょう。

しかし、イヤイヤ期にかわいくないと感じることは決して珍しいことではなく、適切な理解と対処があれば乗り越えることができます。

この記事では、なぜそのような気持ちになるのか心理的背景から、罪悪感との向き合い方、愛情を取り戻す方法、長期的な心構えまで詳しく解説します。

イヤイヤ期にかわいくないと感じてしまうのはなぜ?心理的背景

イヤイヤ期にかわいくないと感じてしまうのは、親の疲労と理想とのギャップが原因で起こる自然な人間の感情です。

理想の子育てへのプレッシャーが大きな要因の一つです。多くの親は「良い親なら常にこどもを愛おしく思うはず」「どんな時でもこどもをかわいいと感じるべき」という理想を抱いています。しかし、現実のイヤイヤ期は想像以上に過酷で、毎日続く癇癪、理不尽な要求、予測不可能な行動に心身ともに疲弊してしまいます。朝から晩まで「いや!」「だめ!」と言い続けるこども、公共の場で大声で泣き叫ぶこども、何を言っても聞かないこどもを前にして、「かわいい」という感情が湧いてこないのは当然の反応なのです。

疲労とストレスの蓄積も重要な背景にあります。イヤイヤ期の対応は24時間365日続く非常にハードな仕事です。夜泣きで睡眠不足、食事の度の格闘、外出先での癇癪対応、家事との両立など、心身の疲労が限界に達している状態では、どんなに愛するこどもでも「かわいい」と感じる余裕がなくなってしまいます。特に、自分の時間が全く取れない、パートナーのサポートが少ない、周囲に頼れる人がいないといった状況では、孤独感と疲労感が重なり、ネガティブな感情が強くなりがちです。

社会的な期待との齟齬も大きなストレス源となります。「母親なら常にこどもをかわいがるべき」「親の愛情は無条件のはず」といった社会的な期待と、現実の複雑な感情との間にギャップを感じることで、自分を責めてしまいます。また、SNSや育児雑誌で見る「理想的な親子の姿」と自分の現実を比較することで、「自分はダメな親だ」という気持ちが強くなってしまうことがあります。

こどもの行動と親の価値観の衝突も影響します。静かにしていてほしい場面で大声を出す、急いでいる時に動こうとしない、危険なことを何度注意してもやめないなど、親の価値観や期待とは正反対の行動を取るこどもに対して、イライラや失望を感じることがあります。これらの感情が積み重なることで、一時的に「かわいくない」という気持ちが生まれてしまうのです。

ホルモンバランスの影響も見逃せません。特に産後間もない時期や、妊娠中、生理前などは、ホルモンバランスの変化により感情が不安定になりやすく、普段なら微笑ましく思えることでもイライラしたり、ネガティブに感じたりしやすくなります。これは身体的な変化による自然な反応であり、決して愛情が足りないわけではありません。

完璧主義的な性格も影響することがあります。「良い親でありたい」「こどもには良い環境を与えたい」という真面目な気持ちが強すぎると、現実とのギャップに苦しみやすくなります。思い通りにいかない子育てに対して、「自分の育て方が悪いからこどもがこんな風になるのではないか」という自責の念が、こどもに対するネガティブな感情を生み出すことがあります。

孤独感も大きな要因です。核家族化が進む現代では、子育ての悩みを共有できる相手が少なく、一人でストレスを抱え込みがちです。「他の人に相談したら引かれるのではないか」「こんなことを思ってしまう自分は異常なのではないか」という不安から、さらに孤独感が深まり、ネガティブな感情が強くなってしまいます。

過去の経験や育った環境の影響もあります。自分自身が厳しく育てられた、愛情を十分に受けて育たなかった、といった経験がある場合、こどもへの接し方が分からなかったり、感情的になってしまった後に強い自己嫌悪を感じたりすることがあります。

このように、イヤイヤ期にかわいくないと感じてしまうのは、疲労・ストレス・プレッシャー・孤独感など複数の要因が重なって起こる自然な人間の感情なのです。

しかし、そのような気持ちになってしまった自分に対して、強い罪悪感を抱く方も多いでしょう。

かわいくないと感じた時の罪悪感との向き合い方

かわいくないと感じた時は、自分を責めすぎず、その感情を一時的で自然なものとして受け入れることから始めることが重要です。

最も大切なのは、自分を責めすぎないことです。「こどもをかわいくないと思ってしまった」という事実に対して、「ひどい親だ」「愛情が足りない」「母親・父親失格だ」と自分を責める必要はありません。イヤイヤ期は親にとって非常に困難な時期であり、疲労とストレスが限界に達している状態では、どんなに愛するこどもでも一時的にネガティブな感情を抱くことは人間として自然な反応です。重要なのは、その感情に支配され続けることではなく、それを受け入れて適切に対処することです。

感情を認めることから始めることも大切なステップです。「今、私はこどもをかわいくないと感じている」「とても疲れていて、愛おしいという気持ちが湧いてこない」という現在の気持ちを素直に認めることから始めます。感情を否定したり、無理にポジティブに変えようとしたりするのではなく、まずは「今はそういう気持ちなんだな」と受け入れることが、回復への第一歩となります。

他の親も同じ気持ちを抱えている事実を知ることも、罪悪感の軽減に役立ちます。実際に、多くの親がイヤイヤ期に同様の気持ちを経験しており、それを口に出さないだけなのです。育児雑誌のアンケートでも、「こどもをかわいいと思えない時がある」と回答する親は決して少なくありません。つまり、あなただけが特別にひどい親なのではなく、多くの親が通る道なのだということを理解することで、自分を責める気持ちを軽減できます。

感情と行動は別物であることを理解することも重要です。こどもを「かわいくない」と感じても、それがこどもへの愛情がないということではありませんし、適切な世話や関わりができないということでもありません。感情は一時的に変化するものであり、行動は意識的にコントロールできるものです。たとえネガティブな感情を抱いていても、こどもの基本的なニーズを満たし、安全を確保し、必要なケアを提供することはできます。

孤独感を軽減する方法を見つけることも大切です。信頼できる友人、家族、パートナーに正直な気持ちを話すことで、「自分だけではない」という安心感を得ることができます。また、同じような経験をした先輩ママ・パパの体験談を聞くことで、「この感情も必ず過ぎ去る」という希望を持つことができます。地域の子育て支援センターや母親学級なども、孤独感を軽減する良い場所となります。

専門家の助けを求めることも、時には必要です。カウンセラー、心理士、保健師などに相談することで、客観的な視点からアドバイスを受けることができます。「こんなことで相談するのは大げさかもしれない」と思わず、自分の心の健康を守るために積極的に専門家の力を借りることは、とても重要な判断です。

感情の背景にある具体的な問題を特定することも効果的です。「睡眠不足が続いている」「パートナーのサポートが不足している」「自分の時間が全くない」「体調が優れない」など、ネガティブな感情の原因となっている具体的な問題を特定することで、改善策を考えることができます。

自分なりのリフレッシュ方法を見つけることも大切です。15分だけでも一人の時間を作る、好きな音楽を聴く、温かいお風呂に入る、好きな食べ物を食べるなど、短時間でもできる自分なりの回復方法を見つけておくことで、感情のバランスを保ちやすくなります。

日記やメモに気持ちを書き出すことも、感情の整理に役立ちます。「今日はこんな気持ちだった」「こんなことがあって疲れた」「でも、こんな可愛い瞬間もあった」といった具合に、ネガティブな感情だけでなく、小さなポジティブな出来事も一緒に記録することで、バランスの取れた視点を保つことができます。

このように、罪悪感とは自分を責めずに感情を受け入れ、孤独感を軽減し、具体的な改善策を見つけることで上手に向き合うことができます。

そして、一時的に感じたネガティブな感情から回復し、愛情を取り戻すための方法も重要です。

愛情を取り戻すための具体的な方法

愛情を取り戻すには、こどもの成長と小さな可愛らしさを改めて見つめ直し、親子の絆を深める時間を意識的に作ることが効果的です。

こどもの成長を改めて見つめ直すことから始めましょう。イヤイヤ期の困難な行動にばかり注目してしまいがちですが、少し視点を変えてこどもの成長に目を向けてみます。「以前はできなかった階段の上り下りが上手になった」「新しい言葉を覚えて話せるようになった」「お手伝いをしようとする気持ちが見える」といった成長の兆候を意識的に探すことで、こどもへのポジティブな感情を取り戻すことができます。写真や動画を見返して、生まれたばかりの頃から現在までの成長の軌跡を振り返ることも効果的です。

小さな可愛らしさを再発見するコツとして、日常の何気ない瞬間に注目することが大切です。寝ている時の穏やかな顔、お気に入りのおもちゃを大切に抱きしめている姿、一生懸命に何かを伝えようとしている表情、新しいことに挑戦している真剣な顔など、癇癪や「いや!」以外の瞬間にも多くの愛らしさがあることに気づくことができます。また、こどもの小さな手、ふわふわの髪の毛、まだ完全でない発音など、この時期だけの特別な可愛らしさもたくさんあります。

親子の絆を深める時間を意識的に作ることも重要です。イヤイヤ期は対立することが多いため、楽しい時間を共有する機会を意図的に増やします。こどもが比較的機嫌の良い時間帯を選んで、一緒に絵本を読んだり、簡単な手遊びをしたり、お散歩をしたりして、ポジティブな親子時間を積み重ねます。この時は、しつけや指導を一切せず、純粋にこどもと楽しい時間を過ごすことに集中します。

スキンシップを増やすことも効果的です。抱っこ、頬ずり、手をつなぐ、背中をさするなど、肌と肌の触れ合いは親子双方に安心感と愛情を生み出します。特に、こどもが落ち着いている時や甘えてきた時は、積極的にスキンシップを取ることで、お互いの絆を深めることができます。

ポジティブな記憶の蓄積を意識することも大切です。一日の終わりに「今日の良かったこと」を3つ見つける習慣をつけることで、困難な出来事ばかりに注目しがちな思考パターンを変えることができます。「今日は一緒にお風呂で歌を歌って楽しかった」「お買い物で手をつないで歩けた」「『ありがとう』って言ってくれた」といった小さな幸せを積み重ねることで、こどもに対するポジティブな感情を育てることができます。

こどもの気持ちに共感する練習をすることも愛情回復に役立ちます。「なぜこの子はこんな行動を取るのだろう?」ではなく、「この子なりに何かを伝えようとしているのかな」「不安だから甘えているのかな」「疲れているのかな」といった具合に、行動の背景にある気持ちを想像してみることで、理解と共感が深まり、愛おしさを感じやすくなります。

他の大人からこどもの良い面を聞くことも効果的です。保育園の先生、祖父母、友人などから「○○ちゃんのこんなところが素敵ですね」「こんなことができるようになりましたね」といった話を聞くことで、客観的な視点からこどもの魅力を再認識することができます。

こどもが喜ぶサプライズを計画することも、愛情を取り戻すきっかけになります。好きなおやつを用意したり、特別なお出かけをしたり、新しいおもちゃを買ったりすることで、こどもの喜ぶ顔を見ることができ、「この子を幸せにしたい」という気持ちを思い出すことができます。

将来の姿を想像することも有効です。「この子が大きくなったらどんな人になるだろう」「今の経験が将来の成長にどうつながるだろう」といった長期的な視点を持つことで、現在の困難も成長の過程として捉えることができ、愛情深く見守る気持ちを取り戻すことができます。

感謝の気持ちを育てることも大切です。「この子がいるから、親として成長できる」「この子と過ごす時間があるから、毎日に意味がある」「大変だけれど、この子の成長を間近で見られるのは幸せなこと」といった感謝の気持ちを意識的に育てることで、こどもに対する愛情も自然と深まっていきます。

このように、成長の再発見・可愛らしさの再認識・絆を深める時間・ポジティブな記憶の蓄積・感謝の気持ちを通じて、一時的に薄れた愛情を取り戻すことができます。

そして、このような経験を長期的な成長の機会として捉える心構えも重要です。

長期的な視点での心構えとサポート体制

長期的には、一時的な感情の変化を自然なものとして受け入れ、親自身のケアと周囲のサポートを活用しながら、将来への希望と信頼を持つことが重要です。

一時的な感情であることの受け入れが最も基本的な心構えです。「こどもをかわいくない」と感じた気持ちは、永続的なものでも、愛情の欠如を示すものでもありません。疲労、ストレス、ホルモンバランス、環境の変化など様々な要因により一時的に生じる感情であり、適切なケアとサポートがあれば必ず回復するものです。「今はそういう時期なんだ」「これも子育ての過程の一部なんだ」と受け入れることで、自分を責めることなく前向きに対処することができます。

親自身のメンタルケアを最優先に考えることも重要です。こどものケアばかりに集中して自分のことを後回しにしがちですが、親の心の健康があってこそ、こどもに対する適切な愛情とケアを提供することができます。十分な睡眠を取る、栄養バランスの良い食事を摂る、適度な運動をする、趣味の時間を持つといった基本的な自己ケアを怠らないことが大切です。また、定期的に一人の時間を作り、自分の気持ちを整理したり、リフレッシュしたりする時間を確保することも必要です。

周囲のサポートの重要性を理解し、積極的に活用することも欠かせません。パートナー、両親、友人、地域の子育て支援サービスなど、利用できるサポートは遠慮なく利用します。「一人で頑張らなければ」という思い込みを手放し、「みんなで子育て」という考え方を持つことで、負担を分散し、心の余裕を作ることができます。また、同じような経験をしている他の親とのつながりを持つことで、孤独感を軽減し、励まし合うことができます。

専門家のサポートを受けることも、時には必要です。保健師、カウンセラー、心理士、小児科医などに相談することで、専門的な視点からのアドバイスや支援を受けることができます。「このくらいで相談するのは」と遠慮する必要はありません。早めに相談することで、問題が深刻化する前に適切な対処ができます。

将来への希望と信頼を持つことも大切な心構えです。イヤイヤ期は必ず終わりが来る一時的な時期であり、この困難な時期を乗り越えることで、親子の絆はより深くなります。「今は大変だけれど、いつか笑って思い出せる日が来る」「この経験が、将来の良い関係につながる」という希望を持つことで、現在の困難にも意味を見出すことができます。

感情の変化を記録することも長期的には有効です。日記やメモに、良い日も悪い日も含めて感情の変化を記録しておくことで、「悪い時期もあったけれど、必ず回復している」というパターンを客観的に把握することができます。これにより、次に同じような気持ちになった時も、「これも一時的なものだ」と冷静に対処することができるようになります。

成長のプロセスとして捉えることも重要です。この経験を通して、親として、そして人間として成長することができます。困難な感情と向き合い、乗り越えることで、忍耐力、共感力、問題解決能力などが向上し、より成熟した親になることができます。また、同じような悩みを持つ他の親の気持ちを理解し、サポートすることもできるようになります。

こどもとの関係性の変化を楽しむことも長期的な視点では大切です。イヤイヤ期が終わった後のこどもとの関係は、以前とは違ったより深い絆で結ばれています。お互いに困難な時期を乗り越えた経験は、将来にわたって親子の特別な絆となります。

予防的な対策を立てることも有効です。今回の経験を踏まえて、次に同じような状況になった時(下の子のイヤイヤ期など)に備えて、事前にサポート体制を整えたり、ストレス管理の方法を確立したりしておくことで、より上手に対処することができるようになります。

感謝の気持ちを育て続けることも長期的な心の安定につながります。困難な経験も含めて、こどもと過ごす時間、親として成長できる機会、家族の絆を深めるチャンスなど、ポジティブな側面に目を向け続けることで、長期的に安定した愛情を保つことができます。

このように、一時的な感情の受け入れ・自己ケア・サポート活用・将来への希望・成長のプロセスとしての理解を通じて、長期的に安定した親子関係を築いていくことができるでしょう。

監修

代表理事
佐々木知香

略歴

2017年 本田右志理事長より右脳記憶教育講座を指南、「JUNKK認定マスター講師」取得
2018年 幼児教室アップルキッズをリビングサロンとして開講
2020年 佐々木進学教室Tokiwaみらい内へ移転、「佐々木進学教室幼児部」として再スタート
2025年 一般社団法人 日本右脳記憶教育協会(JUNKK)代表理事に就任
塾講師として中高生の学習指導に長年携わる中で、幼児期・小学校期の「学びの土台づくり」の重要性を痛感。
結婚を機に地方へ移住後、教育情報や環境の地域間格差を実感し、「地域に根差した実践の場をつくりたい」との想いから、幼児教室アップルキッズを開校。
発達障害や不登校の支援、放課後等デイサービスでの指導、子ども食堂での学習支援など、多様な子どもたちに寄り添う教育活動を展開中。