イヤイヤ期になると、これまでスムーズに眠っていたこどもが急に「寝たくない!」と激しく拒否するようになることがよくあります。
寝かしつけに何時間もかかったり、夜中に何度も起きたりして、親も睡眠不足でヘトヘトになってしまう経験をお持ちの方も多いでしょう。
イヤイヤ期の寝ない行動には明確な理由があり、適切な対処法と工夫を知ることで改善することができます。
この記事では、なかなか寝ない時の具体的な対処法から、原因の理解、安眠を促すアイデア、長期的な改善方法まで詳しく解説します。
イヤイヤ期に寝ない時の効果的な対処法
イヤイヤ期に寝ない時は、生活リズムを整え安心できる環境を作ることで、こどもの自然な眠りを促すことが重要です。
寝かしつけの基本姿勢として最も大切なのは、無理に寝かせようとしないことです。「早く寝なさい」「もう遅いから寝る時間よ」と強制的に布団に押し込んだり、電気を消して暗闇にしたりすると、かえって不安や恐怖心を与えてしまい、眠りから遠ざかってしまいます。代わりに、「お布団でゆっくりしようね」「一緒に横になろうか」といった穏やかな声かけで、まずはリラックスできる状態を作ることから始めます。眠くなるまで無理をせず、静かに過ごす時間として捉えることが大切です。
安心できる環境の整備も重要なポイントです。室温を適切に保つ(夏は26〜28度、冬は20〜22度程度)、湿度を調整する、外からの騒音を遮断するといった物理的な環境を整えます。また、お気に入りのぬいぐるみやタオルケットなど、こどもが安心できるアイテムを側に置くことで、心理的な安心感を与えることができます。さらに、間接照明やナイトライトを使って、完全な暗闇ではなく、ほんのり明るい状態を保つことで、恐怖心を軽減できます。
タイミングと方法の調整も効果的な対処法です。こどもが本当に眠くなる時間を観察し、その自然なリズムに合わせて寝かしつけを始めます。眠気のサイン(目をこする、あくびをする、ぐずり始める)が現れたタイミングで、速やかに就寝の準備に入ることで、スムーズに眠りにつきやすくなります。また、寝かしつけの方法も、そのこどもに合ったものを見つけることが大切です。背中をトントンする、手を握る、子守歌を歌う、絵本を読むなど、様々な方法を試して、最も効果的なものを見つけます。
無理強いしない段階的アプローチも重要です。いきなり一人で寝ることを求めるのではなく、「まずは布団の中で一緒に過ごす」「横になって絵本を読む」「電気を少し暗くして静かに話をする」といった段階を踏むことで、徐々に眠りの世界に誘導していきます。また、寝る前の活動も段階的に静かなものに変えていき、興奮状態から リラックス状態へと自然に移行できるよう配慮します。
親の気持ちの安定も重要な要素です。親がイライラしていたり、焦っていたりすると、その緊張感がこどもにも伝わり、かえって眠りにくくなってしまいます。「今日は寝なくても大丈夫」「明日早めに寝かせよう」という気持ちの余裕を持つことで、親子ともにリラックスした状態で就寝時間を過ごすことができます。
一貫したルールの設定も大切です。「歯磨きをしたら寝室に行く」「絵本を2冊読んだら電気を消す」といった明確で一貫したルールを作ることで、こども自身も次に何をするかが予測でき、安心して眠りの準備ができるようになります。ただし、ルールは柔軟性も持たせ、その日の状況に応じて調整することも大切です。
日中の過ごし方を見直すことも効果的な対処法です。昼間に十分に体を動かして適度に疲れることで、夜の眠りにつきやすくなります。また、昼寝の時間や長さを調整し、夜の睡眠に影響しないよう配慮します。一般的に、2歳頃であれば1〜2時間程度の昼寝が適切で、15時以降の昼寝は夜の睡眠に影響するため避けた方が良いとされています。
このように、無理強いしない姿勢・安心できる環境・適切なタイミング・段階的なアプローチ・一貫したルール・日中の過ごし方の見直しを組み合わせることで、寝ない時も適切に対処することができます。
しかし、効果的な対処をするためには、なぜ寝なくなるのかその原因を理解することも重要です。
なぜ寝なくなるのか?原因と背景
イヤイヤ期に寝なくなるのは、自立欲求の高まりと外部刺激への興味、不安や恐怖心が主な原因となるためです。
自立欲求と睡眠の関係が最も大きな要因の一つです。イヤイヤ期のこどもは「自分で決めたい」という気持ちが強くなるため、「寝る時間だから寝なさい」と言われることに対して反発を感じやすくなります。眠ることは意識を手放すことでもあり、コントロールを失うことへの不安から、眠りを拒否することがあります。また、「まだ遊びたい」「まだ起きていたい」という自分の意志を通したいという気持ちから、睡眠を後回しにしようとします。さらに、一人で寝ることへの抵抗感も強くなり、「お母さんと一緒じゃないと寝たくない」という依存的な行動と、「一人で寝る」という自立的な行動の間で葛藤を感じることもあります。
興味や刺激への反応の高まりも重要な原因です。イヤイヤ期のこどもは好奇心が非常に旺盛で、周囲のあらゆることに興味を示します。寝る時間になっても、「外で車の音がする」「電気の光が気になる」「今日あった出来事を思い出して興奮する」といった具合に、様々な刺激に反応して眠りから遠ざかってしまいます。また、日中に体験した楽しい出来事や新しい発見が頭の中でぐるぐると回り、興奮状態が続いて眠れないこともよくあります。テレビやスマートフォンなどのデジタル機器の光も、脳を覚醒させる要因となります。
不安や恐怖心の影響も見逃せません。暗闇への恐怖、一人になることへの不安、悪夢を見るかもしれないという心配など、様々な恐怖心が睡眠を妨げることがあります。特に、想像力が豊かになるこの時期は、「お化けが出るかも」「怖い夢を見るかも」といった非現実的な不安も強くなりがちです。また、日中に怖い体験をした(大きな音にびっくりした、迷子になりそうになったなど)記憶が、夜になって不安として蘇ることもあります。さらに、親と離れることへの分離不安も、睡眠を拒否する原因となることがあります。
生活リズムの乱れと体内時計の影響も重要な要因です。昼寝の時間が長すぎたり遅すぎたりすると、夜の睡眠リズムが崩れてしまいます。また、就寝時間や起床時間が不規則だと、体内時計が混乱し、自然な眠気が生じにくくなります。さらに、夕方以降の激しい運動や興奮する遊び、遅い時間の入浴なども、体を覚醒状態にしてしまい、眠りにつきにくくします。
環境の変化による影響もあります。引っ越し、保育園の入園、家族構成の変化、季節の変わり目などがあると、ストレスから睡眠パターンが乱れることがあります。いつもと違う場所で寝る(旅行、親戚の家など)場合も、環境に慣れずに眠れないことがよくあります。
身体的な要因も関係しています。風邪の引き始め、歯の生え変わり、成長痛、便秘などの身体的不調により、眠りにくくなることがあります。また、食事の時間や内容も睡眠に影響し、夕食が遅すぎたり重すぎたりすると、消化のために体が活発になり、眠りにつきにくくなります。
親の態度や家庭の雰囲気も影響を与えます。親が忙しくて十分にスキンシップが取れない日、家庭内に緊張感がある時、両親の関係がぎくしゃくしている時などは、こどもも不安を感じて眠りにくくなることがあります。また、寝かしつけの時間に親がスマートフォンを見ていたり、急いでいる様子を見せたりすると、こども自身も落ち着けなくなります。
発達段階による自然な変化もあります。2〜3歳頃は脳の発達が著しく、日中に学習したことや体験したことを脳が整理する時間が必要になります。そのため、以前よりも寝つきが悪くなったり、夜中に起きやすくなったりすることがあります。これは成長に伴う自然な現象でもあります。
睡眠への認識の変化も要因の一つです。赤ちゃんの頃は眠気を感じたら自然に眠っていましたが、自我が芽生えることで「眠る」ということを意識的な行為として捉えるようになり、それに対して抵抗を感じることがあります。
このように、イヤイヤ期の寝ない行動は、自立欲求・興味の分散・不安や恐怖・生活リズムの乱れ・環境変化・身体的要因など複数の原因が複合的に作用して起こる現象なのです。
こうした原因を踏まえて、より良い睡眠環境を作るための工夫も重要です。
安眠を促すアイデアと工夫
安眠を促すには、規則正しいルーティンとリラックス効果のある環境作り、親子のコミュニケーションを大切にすることが効果的です。
就寝前のルーティン作りが最も重要な工夫です。毎日同じ順序で同じことを行うことで、こども自身が「次は眠る時間だ」と自然に理解できるようになります。例えば、「夕食→お風呂→歯磨き→パジャマに着替え→絵本→電気を暗く→就寝」といった具体的な流れを決めて、毎日一貫して実行します。このルーティンは30分〜1時間程度で完了できる現実的な内容にし、こどもにとっても親にとっても負担にならないよう配慮します。また、ルーティンの各段階で「次は歯磨きだね」「お布団の時間だね」と声をかけることで、こどもの心の準備を促します。
リラックス効果のある方法を取り入れることも効果的です。就寝前の30分〜1時間は、興奮するような活動を避け、静かで穏やかな時間にします。温かいお風呂にゆっくりとつかる、優しいマッサージをする、穏やかな音楽を流す、アロマオイル(ラベンダーなど)を使うといった方法で、心身をリラックス状態に導きます。また、深呼吸の練習を一緒にしたり、「今日楽しかったこと」を静かに話したりすることで、心を落ち着かせることができます。
寝室環境の工夫も安眠には欠かせません。室温と湿度を適切に保ち、外部の騒音を遮断し、光の調整をすることで、眠りやすい物理的環境を整えます。カーテンは遮光性の高いものを選び、朝日で自然に目覚められるよう、起床時間には光が入るよう調整します。また、寝具も重要で、こどもの体に合った枕やマットレス、季節に応じた布団を用意し、肌触りの良いパジャマを着せることで、快適な睡眠環境を作ります。空気清浄機や加湿器を使って、空気の質を整えることも効果的です。
親子のコミュニケーション術も安眠促進に大きく役立ちます。就寝前の時間を親子の特別なコミュニケーションタイムとして位置づけ、一日の出来事を振り返ったり、明日の楽しみについて話したりします。絵本の読み聞かせは定番ですが、こどもが興奮しすぎない、穏やかな内容のものを選ぶことが大切です。また、「今日頑張ったね」「明日も楽しい一日にしようね」といった愛情のメッセージを伝えることで、安心感を与え、心地よく眠りにつけるよう促します。
音楽や音の活用も効果的な工夫です。クラシック音楽、自然の音(雨音、波の音など)、子守歌、ホワイトノイズなど、リラックス効果のある音を小さな音量で流すことで、安眠を促すことができます。また、親が鼻歌を歌ったり、穏やかな声で話しかけたりすることも、こどもにとって安心できる音となります。ただし、音楽は眠りにつく前に止めるか、タイマー機能を使って一定時間で止まるよう設定することが大切です。
光の演出も重要な要素です。就寝時間の1時間前から段階的に照明を暗くしていき、体内時計に「夜だ」というシグナルを送ります。間接照明やナイトライトを使って、完全な暗闇ではなく、ほんのり明るい状態を作ることで、恐怖心を軽減しながらも眠りやすい環境にします。また、朝は自然光を取り入れて、体内時計をリセットします。
香りの効果も活用できます。ラベンダー、カモミール、オレンジなどのリラックス効果のある香りを、アロマディフューザーやポプリなどで寝室に取り入れることで、自然に眠気を誘うことができます。ただし、こどもの肌に直接触れないよう注意し、アレルギーがないことを確認してから使用します。
温度感覚を利用した工夫も効果的です。人間は体温が下がる時に眠気を感じるため、就寝前に少し体を温めてから寝室に向かうことで、自然な眠気を促すことができます。温かいお風呂の後、少し涼しい寝室に移ることで、この温度変化を利用できます。
安心グッズの活用も多くのこどもに効果があります。お気に入りのぬいぐるみ、タオルケット、毛布など、こどもが安心できるアイテムを眠る時に側に置くことで、心理的な安心感を与えます。これらのアイテムは「移行対象」と呼ばれ、親から離れて眠る時の不安を和らげる重要な役割を果たします。
段階的な暗さの調整も工夫の一つです。いきなり真っ暗にするのではなく、最初は普通の明るさ、次に間接照明、最後にナイトライトのみといった段階的な調整により、こどもが暗闇に慣れていけるよう配慮します。
このように、ルーティンの確立・リラックス方法・環境整備・コミュニケーション・音楽・光・香り・温度・安心グッズ・段階的調整を組み合わせることで、安眠を効果的に促すことができます。
これらの工夫を一時的なものに終わらせず、長期的な睡眠習慣の改善につなげることも重要です。
睡眠習慣を改善する長期的なアプローチ
睡眠習慣の改善には、規則正しい生活リズムの確立と睡眠環境の継続的な改善、成長段階に応じた調整が重要です。
規則正しい生活リズムの確立が最も基本的で重要な改善策です。毎日同じ時間に起床し、同じ時間に就寝することで、体内時計が整い、自然な眠気と目覚めのリズムが身につきます。例えば、朝7時起床、夜8時就寝といった具体的な時間を決めて、週末も含めて一貫して守るようにします。最初は難しくても、2〜3週間続けることで体内リズムが確立され、自然と眠くなる時間、目覚める時間が身についてきます。また、食事の時間も一定にすることで、体全体のリズムが整いやすくなります。
昼間の活動量と睡眠の関係を理解して調整することも重要です。日中に十分な運動や遊びをすることで、適度な疲労感が生まれ、夜の自然な眠りにつながります。屋外での活動は特に効果的で、太陽光を浴びることで体内時計の調整にも役立ちます。一方で、昼寝の時間と長さを適切に管理し、夜の睡眠に影響しないよう配慮します。2〜3歳であれば、昼寝は13時〜15時頃までに1〜2時間程度が目安とされています。
睡眠の質を高める環境作りを継続的に行うことも大切です。寝室の温度、湿度、照明、騒音レベルを常に最適な状態に保ち、季節の変化に応じて調整します。また、寝具の定期的なメンテナンス(シーツの交換、枕の高さ調整、マットレスの状態確認など)により、常に快適な睡眠環境を維持します。空気の質にも注意を払い、定期的な換気や空気清浄機の使用により、清潔で新鮮な空気の中で眠れるよう配慮します。
成長段階に応じた睡眠時間の調整も重要なアプローチです。2歳頃は11〜14時間(昼寝含む)、3歳頃は10〜13時間、4歳頃は10〜12時間程度の睡眠が必要とされていますが、個人差もあるため、そのこどもに適した睡眠時間を見つけることが大切です。成長とともに必要な睡眠時間は減少していくため、年齢に応じて就寝時間や昼寝の長さを調整していきます。
家族全体での睡眠習慣の見直しも効果的です。親の生活リズムが不規則だと、こどもにも影響するため、家族全員で早寝早起きの習慣を作ることが理想的です。また、夜遅くまでテレビを見る、スマートフォンを使うといった習慣も見直し、家庭全体で睡眠を大切にする雰囲気を作ります。
睡眠記録をつけることも長期的な改善に役立ちます。就寝時間、起床時間、夜中に起きた回数、昼寝の時間などを記録することで、そのこどもの睡眠パターンを把握し、問題点や改善点を見つけることができます。また、体調や行動との関連性も見えてくるため、より効果的なアプローチを計画できます。
専門家との連携も時には必要です。睡眠障害の専門医、小児科医、保健師などに相談することで、医学的な観点からのアドバイスを受けることができます。特に、極端に睡眠時間が短い、頻繁な夜泣きが続く、日中の活動に支障をきたすほど眠いといった症状がある場合は、早めに専門家に相談することが重要です。
環境要因の継続的な管理も大切です。季節の変化、転居、家族構成の変化などがあった時は、それに応じて睡眠環境や習慣を調整し、新しい環境に適応できるようサポートします。また、旅行や外泊の際も、できる限り普段の睡眠習慣を維持できるよう工夫します。
段階的な自立の促進も長期的な目標の一つです。最初は親と一緒に寝ていても、徐々に一人で眠れるよう段階的に自立を促します。まずは同じ部屋で別々のベッド、次に隣の部屋、最後に一人の部屋といった段階を踏むことで、無理なく自立した睡眠習慣を身につけることができます。
他の生活習慣との統合も重要です。食事、運動、入浴、遊びなど、他の生活習慣とのバランスを考慮して、睡眠習慣を生活全体の中に統合します。例えば、夕食後すぐに入浴し、その後は静かな活動に移行するといった一連の流れを作ることで、自然と眠りにつながる生活リズムを確立できます。
将来を見据えた習慣作りも大切です。小学校入学後の生活リズムを考慮して、就寝時間や起床時間を調整していきます。また、「早寝早起きは健康に良い」「十分な睡眠は成長に大切」といった睡眠の重要性について、年齢に応じて教えていくことで、こども自身が睡眠を大切にする意識を育てることができます。
定期的な見直しと調整も必要です。成長に伴って体力や生活パターンが変化するため、3〜6ヶ月ごとに睡眠習慣を見直し、必要に応じて調整します。また、季節の変化、保育園や幼稚園の入園など、環境の変化があった時も、それに応じて睡眠習慣を微調整していきます。
このように、規則正しいリズムの確立・活動量の調整・環境の継続的改善・成長に応じた調整・家族での取り組み・記録による把握・専門家連携・段階的自立・生活習慣の統合・将来を見据えた習慣作りを組み合わせることで、イヤイヤ期の睡眠問題を長期的に改善し、健全な睡眠習慣を確立することができるでしょう。
監修

略歴
2017年 | 本田右志理事長より右脳記憶教育講座を指南、「JUNKK認定マスター講師」取得 |
---|---|
2018年 | 幼児教室アップルキッズをリビングサロンとして開講 |
2020年 | 佐々木進学教室Tokiwaみらい内へ移転、「佐々木進学教室幼児部」として再スタート |
2025年 | 一般社団法人 日本右脳記憶教育協会(JUNKK)代表理事に就任 |