赤ちゃんが指しゃぶりを始めると、お腹が空いているのではないかと思う親御さんは多いのではないでしょうか。
授乳したばかりなのに指を吸い始めたり、逆に授乳時間が近づくと指しゃぶりが増えたりする様子を見て、空腹との関係が気になります。
指しゃぶりが本当に空腹のサインなのか、それとも他の理由があるのかを見分けられると、育児がよりスムーズになります。
この記事では、指しゃぶりと空腹の関係から、空腹時の特徴的なサイン、空腹以外の理由、そして正しい見分け方まで詳しく解説します。
指しゃぶりは空腹のサインなのか
指しゃぶりは空腹のサインの一つではありますが、指しゃぶり=空腹とは限らず、他の理由でも起こる行動です。
新生児期の指しゃぶりと空腹の関係として、生まれたばかりの赤ちゃんにとって、指しゃぶりは確かに空腹と関連することがあります。新生児は吸啜反射という原始反射を持っており、口に何かが触れると反射的に吸います。この反射は授乳のために備わっているものであり、お腹が空いている時には特に強く現れます。
空腹時には、赤ちゃんの体は「食べ物を探す」モードに入ります。この時、口を動かす、舌を出す、手を口に持っていくといった探索行動が活発になります。偶然手が口に触れると吸啜反射が働き、指しゃぶりが始まります。この意味では、新生児期の指しゃぶりは空腹のサインの一部と言えます。
しかし、新生児期でも、空腹以外の理由で指しゃぶりをすることがあります。授乳直後にも指を吸うことがあり、これは吸啜欲求がまだ満たされていない、あるいは単に吸うことが心地良いという理由です。また、眠い時、不安な時にも指しゃぶりをすることがあります。
月齢による違いも理解が必要です。生後0〜2ヶ月頃は、指しゃぶりと空腹の関連が比較的強い時期です。この時期の赤ちゃんはまだ手の動きを完全にコントロールできないため、偶然口に触れた指を吸うことが多く、空腹時に探索行動が活発になることで指しゃぶりが増えます。
生後3〜4ヶ月頃になると、指しゃぶりの意味が変化し始めます。手を意図的に口に持っていけるようになり、空腹以外の理由でも積極的に指を吸うようになります。この時期からは、指しゃぶり=空腹という単純な関係ではなくなってきます。口で物を探索する時期でもあり、手に取ったものを何でも口に入れる行動が始まります。
生後5〜6ヶ月以降になると、指しゃぶりは習慣として定着し、空腹とは関係なく行われることが多くなります。安心するため、眠い時、退屈な時など、様々な状況で指を吸うようになり、空腹のサインとしての意味は薄れていきます。
他のサインとの組み合わせで判断することが重要です。指しゃぶりだけで空腹を判断するのは難しく、他のサインと合わせて総合的に判断する必要があります。空腹時には、泣く(特に激しく泣く)、口を大きく開けて何かを探すような動きをする(ルーティング反射)、手をグーパーする、落ち着きがない、といった行動が同時に見られます。
指しゃぶりだけが見られ、他の空腹のサインがない場合は、空腹以外の理由で指を吸っている可能性が高いと言えます。逆に、指しゃぶりに加えて激しく泣いている、口を探すような動きをしているといった場合は、空腹の可能性が高くなります。
吸啜反射との関係も理解が必要です。吸啜反射は生後4〜6ヶ月頃まで強く残る反射です。この反射は、口に何かが触れると自動的に吸うという無意識の動きであり、空腹時に特に強く現れます。しかし、空腹でなくても、口に指が触れれば吸ってしまうため、反射による指しゃぶりが必ずしも空腹を意味するわけではありません。
また、満腹時でも吸啜欲求が残っている場合があります。授乳時間が短かった、哺乳瓶の乳首の穴が大きくてすぐに飲み終わってしまったといった場合、お腹は満たされていても吸いたい欲求が残り、指しゃぶりをすることがあります。これは空腹ではなく、吸啜欲求を満たすための指しゃぶりです。
授乳間隔との関係も考慮が必要です。授乳から時間が経っている場合(例えば、新生児で3時間以上、生後3ヶ月以降で4時間以上)、指しゃぶりが空腹のサインである可能性は高くなります。逆に、授乳直後やまだ時間が経っていない場合の指しゃぶりは、空腹以外の理由である可能性が高いと言えます。
このように、指しゃぶりは空腹のサインの一つではありますが、それだけで判断することはできず、月齢や他のサイン、授乳間隔などを総合的に見る必要があります。
では、空腹による指しゃぶりには、どのような特徴があるのでしょうか。
空腹による指しゃぶりの特徴
空腹による指しゃぶりは、激しく吸う、他の空腹サインを伴う、授乳で止まるといった特徴があります。
空腹時の指しゃぶりの見分け方として、まず吸い方の激しさに注目します。空腹時の指しゃぶりは、通常よりも激しく、強く吸う傾向があります。まるで本当に何か飲もうとしているかのように、一生懸命に吸います。音が大きい、唾液が多く出る、吸う動きが速いといった特徴も見られます。
一方、空腹以外の理由での指しゃぶりは、比較的ゆっくりと、穏やかに吸うことが多いです。リラックスしているような、ぼんやりと吸っている様子が見られます。この違いは、赤ちゃんをよく観察していると気づくようになります。
表情と全体的な様子も重要な手がかりです。空腹時の赤ちゃんは、表情が険しい、眉間にしわが寄る、目を見開いて何かを探すような動きをする、全体的に落ち着きがないといった様子を見せます。指しゃぶりをしていても、それで満足せず、すぐに指を離してまた口を動かす、頭を左右に振るといった動きが見られることもあります。
泣き声との関連も特徴的です。空腹時は、指しゃぶりをしながらも泣き声を出す、指を離すと激しく泣くといった様子が見られます。指しゃぶりで一時的に落ち着いても、すぐにまた泣き始めることが多く、根本的には満足していないことが分かります。
他の理由での指しゃぶりとの違いとして、安心や眠気による指しゃぶりは、穏やかでリラックスした様子を伴います。表情が柔らかい、目がとろんとしている、体全体の力が抜けているといった特徴があり、空腹時の緊張感とは明らかに異なります。
退屈による指しゃぶりは、周囲をキョロキョロ見回しながら吸う、他に刺激があると指を離すといった特徴があります。指しゃぶりに集中しているというよりも、何となく吸っているという印象です。
授乳前後の変化も重要な判断材料です。空腹による指しゃぶりの最も確実な特徴は、授乳することで完全に止まることです。授乳を始めると指しゃぶりをやめ、授乳に集中します。そして授乳後は満足した様子で落ち着き、しばらく指しゃぶりをしないか、あるいはリラックスした穏やかな指しゃぶりに変わります。
逆に、授乳しても指しゃぶりが変わらない、授乳を拒否して指を吸い続けるといった場合は、空腹以外の理由である可能性が高いと言えます。また、授乳直後にすぐ指しゃぶりを再開する場合は、吸啜欲求が満たされていない可能性があります。
時間帯による傾向も観察できます。空腹による指しゃぶりは、授乳間隔が開いた時に増える傾向があります。例えば、普段3時間おきに授乳している場合、最後の授乳から2時間半〜3時間経った頃に指しゃぶりが増えてきたら、空腹のサインである可能性が高いです。
また、夜間の長い睡眠後の朝一番、昼寝から起きた直後など、長時間授乳していない後の指しゃぶりは、空腹と関連している可能性が高くなります。一方、授乳直後や授乳から30分程度しか経っていない時の指しゃぶりは、空腹以外の理由である可能性が高いです。
成長期の変化も考慮が必要です。成長スパートの時期(急激に成長する時期)には、普段より多くのカロリーが必要になり、空腹を感じやすくなります。生後2〜3週間、6週間頃、3ヶ月頃、6ヶ月頃などは成長スパートが起こりやすい時期とされており、この時期は指しゃぶりが増えることがあります。
季節や気温も影響することがあります。暑い時期には、喉が渇いて授乳を求めることが増え、それに伴い指しゃぶりも増えることがあります。この場合は空腹というより水分補給が必要なサインですが、指しゃぶりという形で現れることがあります。
このように、空腹による指しゃぶりには特徴的なサインがあり、これらを総合的に観察することで見分けることができます。
しかし、指しゃぶりは空腹以外の理由でも頻繁に起こります。
空腹以外で指しゃぶりをする理由
指しゃぶりは空腹以外にも、安心感を求める時、眠い時、退屈な時など、様々な理由で行われる行動です。
安心感を求める時の指しゃぶりは、最も一般的な理由の一つです。赤ちゃんにとって、指しゃぶりは最も確実な自己鎮静方法です。不安な時、怖い時、寂しい時に指を吸うことで、心を落ち着かせようとします。この時の指しゃぶりは、穏やかで持続的であることが特徴です。
見知らぬ人が近づいた時、大きな音がした時、ママが離れた時など、赤ちゃんが不安を感じる状況で指しゃぶりが増えます。また、予防接種の後、病院から帰った後など、ストレスフルな出来事の後にも指しゃぶりが増えることがあります。この場合の指しゃぶりは、ストレスや不安への対処であり、空腹とは無関係です。
見分け方として、抱っこしたり、優しく声をかけたりすると落ち着く、環境が安定すると指しゃぶりが減る、授乳しても指しゃぶりが変わらないといった特徴があります。安心のための指しゃぶりは、物理的な満足(食事)ではなく、心理的な安心が必要なのです。
眠い時の指しゃぶりも非常に多く見られます。眠りに入る時の指しゃぶりは、最も習慣化しやすいパターンです。指を吸うことで心が落ち着き、リラックスして眠りに入りやすくなります。この時の指しゃぶりは、入眠儀式の一部として機能しています。
見分け方として、あくびをする、目をこする、機嫌が悪くなる(ぐずる)といった眠気のサインと一緒に現れる、指しゃぶりをしながら目がとろんとしてくる、横にすると指を吸いながら眠りに入るといった特徴があります。授乳しても指しゃぶりが続き、そのまま眠ってしまうこともあります。
この場合、必要なのは授乳ではなく睡眠です。無理に授乳しようとしても嫌がることがあり、静かな環境で寝かせることが最適な対応となります。
退屈な時の指しゃぶりもよく見られます。特に生後3〜4ヶ月以降、周囲への関心が高まる時期になると、刺激が少ない環境では退屈を感じ、その時間を埋めるために指しゃぶりをすることがあります。この時の指しゃぶりは、何となく無意識に行われていることが多く、本人も特に理由なく吸っています。
見分け方として、周囲をキョロキョロ見回している、新しいおもちゃや音に反応するとすぐに指を離す、他に興味を引くものがあると指しゃぶりをやめるといった特徴があります。この場合、赤ちゃんと遊んであげる、新しい刺激を提供することで、指しゃぶりは自然に止まります。
口腔探索の一環としての指しゃぶりもあります。生後4〜6ヶ月頃は、口で物を探索する「口唇期」です。この時期の赤ちゃんは、手に取ったものを何でも口に入れて、形や質感を確認しようとします。指しゃぶりもこの探索行動の一部であり、自分の指がどんな感じか、吸うとどんな感覚かを学習しているのです。
見分け方として、他のものも口に入れようとする、指を噛んだりなめたりする、いろいろな指を試すように吸うといった特徴があります。この場合は空腹や不安ではなく、好奇心や学習のための行動です。
歯の生え始めによる指しゃぶりもあります。生後6ヶ月頃から歯が生え始めると、歯茎がムズムズして不快感があります。この不快感を和らげるために、指を吸ったり噛んだりします。この時期の指しゃぶりは、歯茎への刺激を求めるものであり、空腹とは関係ありません。
見分け方として、よだれが増える、機嫌が悪い、歯茎が赤く腫れている、指を噛むような動きをする、冷たいものを好むといった特徴があります。この場合、歯固めなどの適切なアイテムを提供することで、指しゃぶりの必要性が減ります。
習慣としての指しゃぶりもあります。生後6ヶ月以降になると、指しゃぶりは完全に習慣として定着していることが多く、特に理由なく、無意識に行われるようになります。テレビを見ながら、ぼんやりしている時など、何となく指を吸っているという状態です。
この場合、空腹でも、不安でも、眠いわけでもなく、単に習慣として指を吸っているだけです。見分け方として、特に他のサインがない、他の活動に集中している時もしている、本人も気づいていない様子といった特徴があります。
それぞれの見分け方をまとめると、空腹:激しく吸う、泣く、授乳で止まる、時間が経っている。安心:穏やか、不安な状況、抱っこで落ち着く。眠気:あくび、目をこする、横にすると眠る。退屈:周囲を見回す、刺激で止まる。探索:他のものも口に入れる、いろいろな指を試す。歯の生え始め:よだれ増加、歯茎の腫れ、噛む動き。習慣:特にサインなし、無意識的。
このように、指しゃぶりには様々な理由があり、状況や他のサインを合わせて判断する必要があります。
では、赤ちゃんの空腹を正確に見分けるには、どうすればよいのでしょうか。
赤ちゃんの空腹サインの正しい見分け方
赤ちゃんの空腹を正確に見分けるには、指しゃぶりだけでなく、複数のサインを総合的に観察することが重要です。
空腹の確実なサインとして、最も分かりやすいのは泣き声です。空腹時の泣き方は特徴的で、短く区切れた泣き方から始まり、徐々に激しくなり、最終的には連続した激しい泣きになります。「エーン、エーン」という泣き方から、「ギャー!」という叫ぶような泣き方に変化していきます。
ルーティング反射も確実なサインです。頬に何かが触れると、その方向に顔を向けて口を開ける反射をルーティング反射と言います。赤ちゃんの頬に指を当てると、その方向に顔を向けて口を大きく開ける場合、空腹の可能性が非常に高いです。この反射は授乳を探す本能的な動きであり、空腹時に特に強く現れます。
口を動かす様子も重要なサインです。空腹時の赤ちゃんは、舌を出したり引っ込めたり、唇をペロペロする、口を開閉する、吸う動きをするといった行動を頻繁に見せます。これは「何か食べるものを探している」サインであり、指しゃぶりと合わせて見られることが多いです。
手を口に持っていく動作も空腹のサインですが、これは指しゃぶりと重なります。ただし、空腹時は特に執拗に手を口に持っていこうとし、何度引き離しても繰り返すという特徴があります。
落ち着きのなさも見られます。空腹時の赤ちゃんは、体をモゾモゾ動かす、頭を左右に振る、足をバタバタさせるといった落ち着きのない動きを見せます。何をしても機嫌が直らない、抱っこしても落ち着かないといった場合、空腹の可能性が高いです。
指しゃぶり以外の注目ポイントとして、授乳間隔が最も重要な判断材料です。最後の授乳からどれくらい時間が経っているかを確認します。新生児(生後0〜1ヶ月)は通常2〜3時間ごと、生後1〜3ヶ月は3〜4時間ごと、生後4〜6ヶ月は4〜5時間ごとが目安です。この間隔が過ぎている場合、空腹の可能性が高くなります。
前回の授乳量も考慮が必要です。前回の授乳が短かった、途中で寝てしまった、あまり飲まなかったといった場合は、通常より早く空腹になることがあります。逆に、しっかり飲んだ後すぐの指しゃぶりは、空腹以外の理由である可能性が高いです。
赤ちゃんの全体的な様子も重要です。機嫌が悪い、不満そうな表情、何をしても泣き止まないといった様子がある場合、身体的な欲求(空腹、眠気、おむつの不快など)が満たされていない可能性があります。一つずつチェックして、何が必要かを見極めます。
授乳タイミングの判断として、早期の空腹サイン(軽度の空腹)を見逃さないことが大切です。口を動かす、手を口に持っていく、落ち着きがなくなるといった初期のサインの段階で授乳を始めると、赤ちゃんも落ち着いて飲みやすく、親も楽です。
激しく泣き出してからの授乳は、赤ちゃんが興奮状態になっているため、うまく飲めないことがあります。まず落ち着かせてから授乳する必要があり、時間もかかります。早期のサインに気づくことで、スムーズな授乳ができます。
月齢別の授乳間隔の目安として、新生児期(0〜1ヶ月)は約2〜3時間ごと、1日8〜12回程度です。この時期は授乳間隔が不規則で、個人差も大きいため、赤ちゃんのサインに合わせた授乳が基本です。生後1〜3ヶ月は約3〜4時間ごと、1日6〜8回程度になります。徐々にリズムが整い始めますが、まだ個人差は大きい時期です。
生後4〜6ヶ月は約4〜5時間ごと、1日5〜7回程度です。夜間の授乳が減り始め、日中のリズムが確立してきます。生後6ヶ月以降は離乳食が始まるため、授乳回数は徐々に減少します。ただし、離乳食初期はまだ授乳が主な栄養源です。
個人差への配慮も重要です。上記はあくまで目安であり、個人差が非常に大きいことを理解する必要があります。よく飲む子、少量ずつ頻繁に飲む子など、赤ちゃんによって授乳パターンは様々です。他の赤ちゃんと比較するのではなく、その子のパターンを理解することが大切です。
成長曲線のチェックも有効です。定期的に体重を測り、成長曲線に沿って成長しているかを確認します。順調に成長していれば、授乳量や間隔は適切であると判断できます。体重増加が不十分な場合は、授乳回数や量を見直す必要があります。
母乳の場合の特別な配慮として、母乳は消化が早いため、ミルクより授乳間隔が短くなる傾向があります。また、母乳の出方や量も日によって変動するため、赤ちゃんの満足度に差が出ることがあります。授乳後すぐの指しゃぶりが続く場合、母乳の量が足りているか確認することも大切です。
記録をつけることの有効性として、授乳時間と間隔を記録することで、赤ちゃんのパターンが見えてきます。「いつも3時間後に空腹サインが出る」「夕方は間隔が短くなる」といった傾向が分かれば、先回りして対応できます。また、指しゃぶりがどんな状況で起こるかも記録すると、空腹との関連が見えてきます。
このように、赤ちゃんの空腹を正確に見分けるには、指しゃぶりだけでなく、複数のサインを総合的に観察し、授乳間隔や赤ちゃんの個別パターンを理解することが重要なのです。そして、早期のサインに気づいて対応することで、親子ともにストレスの少ない授乳時間を過ごすことができます。
監修

略歴
2017年 | 本田右志理事長より右脳記憶教育講座を指南、「JUNKK認定マスター講師」取得 |
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2018年 | 幼児教室アップルキッズをリビングサロンとして開講 |
2020年 | 佐々木進学教室Tokiwaみらい内へ移転、「佐々木進学教室幼児部」として再スタート |
2025年 | 一般社団法人 日本右脳記憶教育協会(JUNKK)代表理事に就任 |