夜中に突然始まるこどもの夜泣きに、どう対応すればよいのか悩んでいる保護者は多いでしょう。
おむつも替えた、お腹も空いていないはず、室温も適切なのに、なぜ泣き続けるのか理由が分からず途方に暮れることもあります。
これには様々な理由があり、月齢によってもその原因は大きく異なります。
理由を理解することで、適切な対応ができるようになり、保護者自身の不安も軽減されます。
この記事では、夜泣きが起こる理由を詳しく解説し、月齢別の特徴や効果的な対処法についてお伝えします。
夜泣きが起こる理由とは?
夜泣きの理由は、大きく分けて生理的な理由と心理的な理由の2つに分類できます。
夜泣きは単なる「泣き癖」ではなく、こどもが何かを訴えているサインです。言葉でコミュニケーションが取れない乳幼児にとって、泣くことは唯一の意思表示手段といえます。夜泣きが起こるのは、こどもの脳や体が急速に成長している証でもあり、決して異常なことではありません。
多くの保護者が経験する夜泣きですが、その理由を正しく理解している方は意外と少ないかもしれません。「お腹が空いているから」「甘えているだけ」といった単純な理由だけでなく、実は複雑な要因が絡み合って夜泣きは起こります。こどもの発達段階によって理由は変わり、同じこどもでも時期によって夜泣きの原因が異なることもあります。
生理的な理由
生理的な理由による夜泣きは、体の不快感や基本的な欲求が満たされていないことから起こります。
最も分かりやすいのは空腹です。特に新生児期や乳児期前半は、胃が小さく一度に多くのミルクや母乳を飲めないため、夜中にお腹が空いて目を覚まします。授乳間隔が短い時期は、夜間も2〜3時間おきに空腹で泣くことは自然なことです。
おむつの不快感も大きな理由のひとつです。おしっこやうんちで濡れたおむつは、こどもにとって非常に不快で、それが原因で目を覚まして泣くことがあります。特に敏感肌のこどもや、長時間おむつを替えていなかった場合は、不快感が強くなります。
室温や衣服による暑さ・寒さも夜泣きの原因になります。大人が快適と感じる温度でも、こどもには暑すぎたり寒すぎたりすることがあります。特に寝入りばなは体温が上がりやすく、厚着させすぎると暑くて目が覚めることがあります。逆に明け方は室温が下がり、寒さで目を覚ますこともあります。
体調不良も見逃せない理由です。発熱、鼻づまり、咳、お腹の張り、便秘、歯の生え始めの痛みなど、様々な身体的不快感が夜泣きを引き起こします。特に歯が生える時期は、歯茎がむずがゆく痛みを感じるため、夜泣きが増えることがあります。
睡眠サイクルの未熟さも生理的な理由に含まれます。乳幼児は大人と比べて睡眠が浅く、レム睡眠とノンレム睡眠の切り替えが頻繁に起こります。その切り替わりのタイミングで目を覚ましやすく、一度目が覚めると再び眠りにつくのが難しいため、泣いてしまうのです。
心理的な理由
心理的な理由による夜泣きは、こどもの情緒的な発達と深く関係しています。
最も一般的なのは、不安や寂しさです。夜中に目を覚ましたとき、暗闇の中で一人でいることに不安を感じ、保護者の存在を確認したくて泣くことがあります。特に生後6か月頃から始まる人見知りや後追いの時期には、保護者と離れることへの不安が強くなり、夜泣きが増える傾向があります。
日中の刺激が強すぎた場合も、夜泣きの理由になります。初めての場所に行った、たくさんの人に会った、激しく遊んだなど、こどもにとって刺激的な一日を過ごした後は、脳が興奮状態のまま眠りについてしまい、夜中に目を覚まして泣くことがあります。こどもの脳はまだ情報処理能力が未熟なため、刺激を整理しきれずに眠りが浅くなるのです。
悪夢や怖い夢も夜泣きの理由です。1歳半頃から想像力が発達し始めると、夢を見るようになります。怖い夢や不安な夢を見て目を覚まし、その恐怖から泣き続けることがあります。日中に見た怖い映像や、叱られた経験などが夢に現れることもあります。
環境の変化によるストレスも心理的な夜泣きを引き起こします。引っ越し、入園、弟や妹の誕生、保護者の仕事復帰など、生活環境の変化はこどもにとって大きなストレスです。こうした変化に適応しようとする過程で、不安が高まり、夜泣きとして現れることがあります。
愛着形成の過程も関係しています。特定の保護者への愛着が深まる時期には、その人がそばにいないことへの不安が強くなります。夜中に目覚めたとき、愛着対象の保護者がいないことで不安になり、泣いて呼ぶのです。これは健全な発達の証であり、決して悪いことではありません。
生理的な理由と心理的な理由は、夜泣きにおいてしばしば複合的に絡み合います。
次に、月齢によって夜泣きの理由がどのように変わるのかを詳しく見ていきましょう。
月齢別に見る夜泣きの理由
こどもの月齢によって、夜泣きの理由は大きく異なります。
夜泣きは発達段階に応じて現れる自然な現象です。新生児期の夜泣きと2歳児の夜泣きでは、その背景にある理由がまったく違います。月齢ごとの特徴を理解することで、我が子の夜泣きの理由を推測しやすくなり、適切な対応につながります。
新生児期から生後3か月頃
この時期の夜泣きは、厳密には「夜泣き」ではなく、基本的な欲求を訴える泣きです。
新生児は昼夜の区別がまだついておらず、2〜3時間おきに目を覚ましては泣くことを繰り返します。この時期の泣きの理由のほとんどは空腹です。胃が小さく一度に多く飲めないため、頻繁にお腹が空きます。授乳やミルクを与えれば、ほとんどの場合すぐに落ち着きます。
おむつの不快感も大きな理由です。この時期は排泄回数が多く、おむつがすぐに濡れてしまいます。濡れたおむつの不快感で目を覚まし、泣いて知らせます。おむつを替えるだけで泣き止むことも多いでしょう。
げっぷが出ずに苦しい、お腹にガスが溜まっているといった消化器系の不快感も泣きの理由になります。授乳後にげっぷをさせても、時間が経ってから苦しくなることがあります。お腹がパンパンに張っているときは、優しくマッサージしてあげると楽になります。
暑さや寒さ、抱っこしてほしい、音や光が気になるなど、環境的な要因も理由です。この時期のこどもは、自分で体温調節ができないため、大人が適切に調整してあげる必要があります。
生後3か月頃までの夜泣きは、基本的な生理的欲求が満たされれば落ち着くことがほとんどです。
生後4か月から1歳頃
この時期がいわゆる「夜泣き」のピークで、理由が複雑になります。
生後4か月頃になると、睡眠リズムが変化し始めます。レム睡眠とノンレム睡眠のサイクルが確立され始める時期ですが、まだ未熟なため、睡眠の切り替わりのタイミングで目を覚ましやすくなります。目が覚めたときに、自分で再び眠りにつく方法が分からず、泣いてしまうのです。
脳の発達が急速に進むこの時期は、日中に得た情報を睡眠中に整理しています。寝返り、お座り、ハイハイなど、新しい運動能力を獲得する時期でもあり、脳が活発に働いているため、睡眠が浅くなりがちです。
生後6か月頃から始まる人見知りや後追いも、夜泣きの大きな理由です。特定の保護者への愛着が深まる時期で、その人がそばにいないことへの不安が強くなります。夜中に目を覚ましたとき、暗闇の中で一人でいることが怖くて泣くのです。
歯が生え始める時期でもあり、歯茎の痛みやむずがゆさも夜泣きの理由になります。日中は気が紛れていても、夜になると痛みが気になって目が覚めることがあります。
離乳食が始まると、消化の変化や新しい食材への反応で、お腹の調子が変わることがあります。お腹が張る、便秘気味になるなどの不快感も夜泣きにつながります。
この時期の夜泣きは、生理的理由と心理的理由が複合的に絡み合っており、一筋縄ではいかないことが多いのです。
1歳から2歳頃
この時期の夜泣きは、心理的な理由の比重が大きくなります。
運動能力が大きく発達し、歩けるようになり、行動範囲が広がる時期です。日中の活動量が増え、刺激も多くなるため、脳が興奮状態のまま眠りについてしまうことがあります。特に楽しいことがあった日や、初めての経験をした日の夜は、夜泣きが起こりやすくなります。
言葉の理解が進む一方で、まだ自分の気持ちを十分に言葉で表現できないもどかしさも、ストレスの原因になります。日中に言いたいことが言えなかった、やりたいことができなかったといった欲求不満が、夜泣きとして現れることがあります。
イヤイヤ期が始まるのもこの時期です。自我が芽生え、自己主張が強くなる一方で、まだ感情のコントロールができません。日中の葛藤やストレスが、夜泣きという形で表出することがあります。
想像力が発達し、夢を見るようになるのもこの時期の特徴です。怖い夢を見て目を覚まし、その恐怖から泣き続けることがあります。「怖い」「お母さんがいない」といった不安が、夢の中で増幅されるのです。
環境の変化への敏感さも増します。保育園への入園、弟や妹の誕生、引っ越しなど、生活の変化がストレスとなり、夜泣きが増えることがあります。日中は元気に見えても、心の中では不安を抱えていることもあるのです。
この時期の夜泣きは、こどもの心の成長と深く関係しています。
3歳以降
3歳を過ぎても夜泣きが続く場合は、心理的な理由が中心です。
この年齢になると、夜泣きというよりは「夜中に目を覚まして泣く」という状態に近くなります。悪夢や怖い夢を見ることが主な理由で、夢の内容を言葉で説明できるようになるため、「怖い夢を見た」と訴えることもあります。
日中のストレスや不安が、夜泣きとして現れやすい時期でもあります。幼稚園や保育園での人間関係、習い事のプレッシャー、家庭内の変化など、こどもなりに様々なストレスを抱えています。こうした不安が解消されないまま眠りにつくと、夜中に目を覚まして泣くことがあります。
分離不安が強いこどもは、保護者と離れることへの不安から夜泣きすることもあります。「お母さんがいなくなったらどうしよう」といった漠然とした不安が、夢の中で具体化されることもあるのです。
まれに、睡眠障害の可能性も考慮する必要があります。夜驚症や悪夢障害など、専門的な対応が必要な場合もあるため、頻繁に激しい夜泣きが続く場合は、小児科や睡眠外来への相談も検討しましょう。
月齢ごとの理由を理解すると、我が子の夜泣きの背景が見えてきます。
しかし、どんなに理由を探っても分からない夜泣きもあります。
理由が分からない夜泣きへの対応
あらゆる理由を考えても、なぜ泣いているのか分からない夜泣きは確かに存在します。
おむつも替えた、授乳もした、暑くも寒くもない、体調も問題ない、それでも泣き続ける。こうした状況は、保護者を大きな不安とストレスに陥れます。「自分の対応が悪いのではないか」「何か見落としているのではないか」と自分を責めてしまうこともあるでしょう。
しかし、理由が分からない夜泣きがあることは、決して珍しいことではありません。こどもの脳や体は急速に発達しており、その過程で様々な変化が起こっています。大人には理解できない不快感や違和感を、こども自身が感じていることもあるのです。
理由が分からないからといって、対応しないわけにはいきません。まずは、こどもの安全を確保し、そばにいることで安心感を与えることが大切です。抱っこして優しく揺らす、背中をトントンする、子守唄を歌うなど、こどもが落ち着く方法を試してみましょう。
環境を変えてみることも効果的です。別の部屋に移動する、窓を開けて外の空気を感じさせる、ベランダに出て夜空を見せるなど、場面を変えることで気分が切り替わり、泣き止むことがあります。
理由が分からない夜泣きに対しては、「泣き止ませよう」と焦るのではなく、「そばにいて見守る」という姿勢が重要です。こどもは泣くことで何かを訴えているわけですが、その「何か」が保護者に理解できる言葉や行動で表現できないだけなのです。
どうしても泣き止まず、保護者自身が疲れ果ててしまったときは、こどもの安全を確認した上で、短時間その場を離れることも選択肢です。深呼吸して気持ちを落ち着かせ、再び対応する方が、イライラした状態で無理に対応するよりも良い場合もあります。
理由が分からない夜泣きが長期間続く場合や、日中の様子にも変化がある場合は、小児科や保健センターに相談することも検討しましょう。
とはいえ、多くの夜泣きには何らかの理由があり、それを見極めることで適切な対応ができます。
夜泣きの理由を見極めるポイント
夜泣きの理由を見極めるには、観察と記録が有効です。
まず、こどもの様子を細かく観察してみましょう。泣き方に違いはあるか、体のどこかを触ると嫌がるか、特定の姿勢で泣き止むか、時間帯に規則性はあるかなど、細部に注意を払います。空腹の泣き方とおむつの不快感での泣き方は微妙に異なることが多く、慣れてくると区別できるようになります。
泣き始める時間帯も重要な手がかりです。入眠後1〜2時間で泣く場合は、まだ深い睡眠に入れていない可能性があります。明け方に泣く場合は、寒さや空腹が理由かもしれません。毎晩同じような時間に泣く場合は、体内リズムと関係している可能性もあります。
日中の過ごし方と夜泣きの関連を見てみることも大切です。たくさん遊んだ日の夜は泣くのか、逆に運動量が少ない日に泣くのか、新しい場所に行った日はどうか、といった記録をつけると、パターンが見えてくることがあります。
体調の変化も見逃せません。鼻水が出ている、咳をしている、便の状態がいつもと違う、機嫌が悪い、食欲がないなど、日中の様子と夜泣きを合わせて観察することで、体調不良が理由だと気づくことがあります。
こどもの発達段階も考慮しましょう。寝返りやハイハイを始めた時期、歯が生える時期、人見知りが始まった時期など、発達の節目には夜泣きが増えることがよくあります。成長のステップと夜泣きの関係を意識すると、理由が推測しやすくなります。
夜泣きの記録をつけることもおすすめです。日付、時間、泣いた長さ、考えられる理由、どのように対応したか、何で泣き止んだかなどを簡単にメモしておくと、パターンが見えてきます。スマートフォンのメモ機能や育児アプリを使えば、手軽に記録できます。
環境面のチェックも忘れずに行いましょう。室温は適切か、湿度はどうか、布団が重すぎないか、パジャマのタグが肌に当たっていないかなど、細かな点も確認します。大人が気づかない些細なことが、こどもにとっては大きな不快感になることもあるのです。
理由を見極める努力をすることで、夜泣きへの対応がより的確になります。
理由が分かれば、それに合わせた対処法を選ぶことができます。
夜泣きの理由に合わせた対処法
夜泣きの理由が分かれば、それぞれに適した対処法があります。
空腹が理由の場合は、授乳やミルクで対応します。新生児期や乳児期前半は、夜間の授乳は必要なものです。成長とともに夜間の授乳間隔は自然と延びていくため、焦らず対応しましょう。1歳を過ぎても夜間に授乳している場合は、徐々に回数を減らしていくことも検討できます。
おむつの不快感が理由なら、すぐに交換します。寝ている間におむつを替えるのは大変ですが、不快なまま放置すると肌トラブルの原因にもなります。おむつ替えの際は、明るすぎる照明は避け、薄暗い中で手早く行うことで、こどもを完全に覚醒させずに済みます。
暑さや寒さが理由の場合は、室温や衣服を調整します。理想的な室温は20〜22度程度です。こどもの背中やお腹を触って、汗をかいていないか、冷たくないかを確認しましょう。布団のかけすぎや厚着にも注意が必要です。
体調不良が疑われる場合は、熱を測る、鼻水を吸引する、加湿器をつけるなど、症状に応じた対応をします。歯が生える時期の痛みには、冷たいタオルで歯茎を冷やす、歯固めを使うなどの方法があります。症状が重い場合や心配な場合は、翌日に小児科を受診しましょう。
不安や寂しさが理由の場合は、こどもに安心感を与えることが最優先です。抱っこして体温を感じさせる、優しく声をかける、子守唄を歌うなど、保護者の存在をしっかり伝えます。添い寝をする、手を握る、背中をさするといった身体的な接触も効果的です。
日中の刺激が強すぎた場合は、翌日以降の過ごし方を見直します。刺激的な一日の後は、就寝前にゆったりとした時間を作る、絵本を読むなど、リラックスできる活動を増やしましょう。また、日中の活動内容を少し調整することも検討します。
悪夢が理由の場合は、「夢だよ、大丈夫」と繰り返し伝え、安心させます。こどもを抱きしめて、「お母さん(お父さん)がここにいるよ」と声をかけることで、恐怖が和らぎます。明かりをつけて、現実に戻れるようサポートすることも有効です。
環境変化によるストレスが理由の場合は、日中にたくさんスキンシップを取る、こどもの話をよく聞くなど、心の安定を図ります。変化に慣れるまでは時間がかかるため、焦らず見守る姿勢が大切です。
睡眠サイクルの切り替わりで目覚める場合は、自分で再び眠りにつく力を育てることも視野に入れます。泣いたらすぐに抱き上げるのではなく、まず数分様子を見る、布団の中で背中をトントンするなど、段階的に対応を変えていく方法もあります。ただし、こどもの月齢や個性に合わせて無理なく進めることが重要です。
生活リズムを整えることも、すべての理由に共通する基本的な対処法です。毎日同じ時間に起き、同じ時間に寝る、日中は適度に体を動かす、就寝前はリラックスする時間を作るなど、規則正しい生活が夜泣きの軽減につながります。
複数の理由が重なっている場合もあるため、ひとつの対処法だけでなく、いくつかの方法を組み合わせて試すことも必要です。また、今日効果があった方法が、明日も効果があるとは限りません。柔軟に対応を変えながら、我が子に合った方法を見つけていくことが大切です。
夜泣きの理由は多岐にわたり、時には複合的に絡み合っています。月齢による発達の特徴を理解し、こどもの様子を丁寧に観察することで、理由を推測しやすくなります。理由に応じた適切な対処を行うことで、こどもは安心し、保護者自身の不安も軽減されるでしょう。夜泣きは一時的なものであり、こどもの成長とともに必ず落ち着いていきます。焦らず、できる範囲で向き合いながら、この時期を乗り越えていきましょう。
監修

略歴
| 2017年 | 本田右志理事長より右脳記憶教育講座を指南、「JUNKK認定マスター講師」取得 |
|---|---|
| 2018年 | 幼児教室アップルキッズをリビングサロンとして開講 |
| 2020年 | 佐々木進学教室Tokiwaみらい内へ移転、「佐々木進学教室幼児部」として再スタート |
| 2025年 | 一般社団法人 日本右脳記憶教育協会(JUNKK)代表理事に就任 |



