夜中に突然こどもが泣き出すことに、毎晩対応し続けることに疲れを感じている方もいるでしょう。
夜泣きを無視していいのか、放置しても問題ないのかと悩む保護者は少なくありません。
海外では「泣かせておく」という育児法も存在しますが、日本では放っておくことへの罪悪感を抱く方が多いようです。
夜泣きは無視していいのか、それとも必ず対応すべきなのか、その判断基準と適切な対応方法について詳しく解説します。
この記事では、夜泣きへの向き合い方と、保護者自身の心身を守るための考え方もお伝えします。
夜泣きを無視していいの?
夜泣きを完全に無視して放置することは、こどもの心の発達を考えると避けるべきです。
こどもが夜泣きをするのは、何らかの不快感や不安を訴えているサインです。お腹が空いている、おむつが濡れている、暑い・寒いといった生理的な理由のほか、日中の刺激が強すぎた、寂しさを感じているなど、心理的な要因も考えられます。これらのサインを無視し続けると、こどもは「泣いても誰も来てくれない」という不安を抱き、情緒的な安定を損なう可能性があります。
特に生後6か月頃までの赤ちゃんは、泣くことでしか自分の要求を伝えられません。この時期の夜泣きは、空腹や不快感などの基本的な欲求を満たしてほしいという訴えです。まずは様子を見に行き、原因を確認することが大切です。おむつを替える、授乳する、抱っこして安心させるなど、基本的なケアを行うことで、多くの夜泣きは落ち着きます。
ただし「無視しない」ことと「すぐに抱き上げる」ことは別です。泣き声が聞こえたら、まず数分間様子を見るという対応も選択肢のひとつです。こどもが自分で再び眠りにつくこともあるからです。しかし、泣き続ける場合には放置せず、声をかけたり優しく背中をトントンしたりして、こどもに「ここにいるよ」という安心感を与えることが重要です。
夜泣きを放置してこどもの心に不安を残すことは、できる限り避けたい対応です。
次に、もし夜泣きを無視するとどのような影響があるのかを見ていきましょう。
夜泣きを無視するとどうなるの?
夜泣きを長期間無視して放置を続けると、こどもの愛着形成や情緒の安定に悪影響を及ぼす可能性があります。
発達への影響
乳幼児期は、愛着形成の最も重要な時期です。愛着とは、特定の養育者との間に築かれる情緒的な絆のことで、この時期に適切な応答を受けることで、こどもは安心感や信頼感を育みます。夜泣きに対して一貫して無視や放置を続けると、こどもは「自分の訴えは届かない」「誰も助けてくれない」と感じるようになり、不安定な愛着を形成する恐れがあります。
不安定な愛着は、将来の対人関係や情緒の安定に影響を及ぼすことがあります。他者を信頼することが難しくなったり、感情のコントロールに課題を抱えたりする可能性も指摘されています。特に0歳から2歳頃までは、脳の発達が著しい時期であり、安心できる環境と応答的な関わりが欠かせません。
また、泣いても応答がない状態が続くと、こどもは「学習性無力感」と呼ばれる状態に陥ることもあります。これは、何をしても状況が変わらないと学習してしまい、やがて泣くこと自体をやめてしまう現象です。一見すると「夜泣きが治った」ように見えますが、実際にはこどもが諦めてしまっただけという可能性もあるのです。
親子の信頼関係への影響
夜泣きへの対応は、親子の信頼関係を築く大切な機会でもあります。こどもが不安や不快を感じて泣いたとき、保護者が応えてくれることで「この人は自分を守ってくれる」という基本的信頼感が育ちます。この信頼感は、その後の親子関係の土台となるものです。
無視を続けることで、こどもは保護者との間に心理的な距離を感じるようになるかもしれません。泣いても来てくれない経験が積み重なると、保護者に対して不信感を抱いたり、感情を表現することを避けるようになったりすることもあります。逆に、過度に激しく泣くようになるケースもあり、いずれも親子の関わりに影響を与える可能性があります。
特に注意したいのは、無視することで一時的に夜泣きが減ったように見える場合です。これは本当に問題が解決したのか、それともこどもが訴えることを諦めてしまったのか、慎重に見極める必要があります。こどもの日中の様子や表情、保護者への関わり方などを総合的に観察することが大切です。
夜泣きへの無視や放置は、親子の信頼関係の土台を揺るがし、将来の対人関係にも影響を与えるリスクがあるのです。
とはいえ、適切に対応したいと思っても、具体的にどうすればよいか迷うこともあるでしょう。
夜泣きに効果的な対応方法
夜泣きには、放置でも過剰な介入でもない、こどもの状態を見極めた適切な関わり方が求められます。
まず大切なのは、夜泣きの原因を探ることです。おむつが濡れていないか、室温は適切か、お腹が空いていないかなど、基本的なチェックを行います。月齢が低い場合は授乳やミルクで落ち着くことも多いですが、1歳を過ぎている場合は、日中の刺激が強すぎたり、生活リズムが乱れていたりすることが原因のこともあります。
こどもが泣いたとき、すぐに抱き上げる前に、まず優しく声をかけてみましょう。「大丈夫だよ」「ここにいるよ」という言葉をかけるだけで安心して再び眠るこどももいます。それでも泣き続ける場合は、背中を優しくトントンしたり、額や体を撫でたりして、身体的な接触で安心感を与えます。
抱っこが必要な場合は、落ち着くまで抱いてあげましょう。ただし、毎回長時間抱っこしないと眠れないという習慣がついてしまうと、保護者の負担が大きくなります。徐々に抱っこの時間を短くしていく、布団に置いてからもしばらく背中をトントンするなど、段階的に自分で眠れるようサポートすることも大切です。
月齢・年齢別の対応のポイント
生後3か月頃までは、夜泣きというより空腹や不快感による泣きがほとんどです。授乳やおむつ替えなど、基本的なケアをこまめに行いましょう。
生後4か月から1歳頃は、いわゆる夜泣きのピーク期です。この時期は脳の発達により睡眠サイクルが変化する時期でもあり、夜中に目覚めやすくなります。日中の生活リズムを整えること、寝る前の刺激を減らすことなどが予防につながります。泣いたときは、まず様子を見て、必要に応じて優しく声をかけたり、トントンしたりして安心させます。
1歳から2歳頃になると、日中の経験が夢に現れることも増えます。怖い夢を見て泣いている場合は、抱きしめて「夢だよ、大丈夫」と繰り返し伝えてあげましょう。また、この時期は言葉の理解も進むため、「朝になったら遊ぼうね」など、見通しを伝えることも効果的です。
3歳以降も夜泣きが続く場合は、日中のストレスや不安が影響していることもあります。日中にしっかり話を聞く時間を作る、スキンシップを増やすなど、心の安定を図ることが大切です。
泣き止まないときの具体的な方法
あらゆる方法を試してもこどもが泣き止まないとき、保護者自身も疲れ果ててしまいます。そんなときは、以下の方法を試してみてください。
まず、環境を変えてみることです。別の部屋に移動する、窓を開けて外の空気を感じさせる、ベランダに出てみるなど、場面を切り替えることで気分が変わり、泣き止むことがあります。特に夜空を見せる、風の音を聞かせるなど、自然の刺激は心を落ち着かせる効果があります。
音や光の調整も有効です。真っ暗より豆電球をつける、静かすぎる場合は胎内音に似たホワイトノイズを流すなど、こどもが安心できる環境を探ってみましょう。一方、テレビやスマートフォンの画面を見せることは、脳を覚醒させるため逆効果です。
抱っこひもで抱っこして室内を歩く、車でドライブする、といった方法も昔から知られています。ただし、これらが習慣化すると毎回必要になる可能性もあるため、たまに使う程度にとどめておくとよいでしょう。
それでも泣き止まない場合は、こどもの安全を確認した上で、保護者自身が一旦その場を離れて深呼吸することも必要です。数分間であれば、こどもを布団に寝かせて、別室で気持ちを落ち着かせる時間を取っても構いません。
こどもの月齢や状況に応じて対応を変えながら、基本的には泣きを受け止める姿勢を持つことが、効果的な夜泣き対応の鍵となります。
しかし、現実には疲労が限界に達し、どうしても対応できない状況もあるでしょう。
夜泣きを無視せざるを得ないときの対処法
どんなに理想的な対応を心がけたいと思っていても、保護者の疲労が限界に達し、物理的・精神的に対応できなくなる状況は誰にでもあり得ます。
そのような状況では、無理をして対応しようとするより、自分の限界を認めることも大切です。イライラした状態で無理に対応すると、こどもに対して粗暴な扱いをしてしまったり、怒鳴ってしまったりする危険性があります。それよりも、こどもの安全を確保した上で、短時間その場を離れる方が、結果的に親子双方にとって良い場合もあるのです。
もし対応できない日があったとしても、それだけで親子関係が壊れるわけではありません。日中に十分なスキンシップを取る、笑顔で接する時間を増やすなど、他の時間で愛情を伝えることができれば、一晩の夜泣き対応ができなかったことを過度に責める必要はありません。
ただし、毎晩のように無視する状況が続いているなら、それは援助が必要なサインです。パートナーや家族に協力を求める、一時保育やファミリーサポートなどの支援サービスを利用する、保健師や育児相談窓口に相談するなど、周囲の助けを借りることを検討しましょう。夜泣きは一人で抱え込む問題ではありません。
また、夜泣き対応を交代制にすることも有効です。例えば月・水・金は自分、火・木・土はパートナーが対応する、週末は祖父母に預けて夫婦でゆっくり眠るなど、計画的に休息を取ることで、精神的な余裕が生まれます。一人で頑張り続けるのではなく、周囲と役割を分担することが、長期的には良い育児につながります。
やむを得ず対応できない日があっても、日中の関わりで十分にフォローすれば、一時的な対応不足がこどもに深刻な影響を与えることは少ないのです。
夜泣きへの対応で疲れ切ってしまったとき、保護者自身の心のケアも忘れてはいけません。
夜泣きで疲れ切ったときの心構え
保護者自身の心身の健康を守ることは、夜泣き対応において無視してはいけない重要な要素です。
毎晩続く夜泣き対応による睡眠不足は、保護者の判断力を低下させ、感情のコントロールを困難にします。些細なことでイライラしたり、涙が出てきたりするのは、決して保護者の性格や育児能力の問題ではなく、疲労が限界に達しているサインです。
まず知っておいてほしいのは、夜泣きは必ず終わるということです。永遠に続く夜泣きはありません。多くの場合、2歳頃までには自然と落ち着いていきます。今がどんなに辛くても、それは一時的な状態であり、いずれ必ず終わりが来ます。「今だけ」と思えることで、少し心が軽くなることもあるでしょう。
完璧を求めないことも大切です。毎晩完璧に対応しようとすると、それ自体がストレスになります。今日は抱っこで寝かせる、明日はトントンだけにしてみる、というように、その日の自分の体調や気持ちに合わせて対応を変えても構いません。こどもは一回一回の対応ではなく、日々の積み重ねの中で安心感を得ていくものです。
自分を責めないことも重要です。「夜泣きに対応できない自分はダメな親だ」と思う必要はありません。育児は24時間休みなく続く大仕事です。疲れるのは当然ですし、たまには対応できない日があっても、それはあなたが悪いのではありません。むしろ、限界まで頑張っている自分を認め、労ってあげてください。
日中に少しでも休む時間を作ることも意識しましょう。こどもが昼寝をしているときは、家事より自分の睡眠を優先する日があってもよいのです。また、誰かに預けて外出する、美容院に行く、友人と会うなど、育児から離れる時間を意識的に作ることで、気持ちがリフレッシュされます。
保健センターや自治体の育児相談窓口では、夜泣きの相談に応じています。話を聞いてもらうだけでも気持ちが楽になることがあります。同じ悩みを持つ保護者と話す機会も、孤独感を和らげてくれるでしょう。一人で抱え込まず、助けを求めることは恥ずかしいことではありません。
こどもの健やかな成長には、保護者が笑顔でいられることが何より必要です。完璧な対応を目指すのではなく、できる範囲で向き合い、辛いときは周囲に助けを求めながら、この時期を乗り越えていきましょう。夜泣きへの対応は基本的には無視せず応答することが大切ですが、保護者自身の心身の健康を守ることも同じくらい重要なのです。
監修

略歴
| 2017年 | 本田右志理事長より右脳記憶教育講座を指南、「JUNKK認定マスター講師」取得 |
|---|---|
| 2018年 | 幼児教室アップルキッズをリビングサロンとして開講 |
| 2020年 | 佐々木進学教室Tokiwaみらい内へ移転、「佐々木進学教室幼児部」として再スタート |
| 2025年 | 一般社団法人 日本右脳記憶教育協会(JUNKK)代表理事に就任 |



