4歳になっても夜中に泣き叫ぶことがあり、心配している保護者の方もいらっしゃるでしょう。
一般的には2歳頃までに落ち着く夜泣きが、この年齢で続いているのは珍しいケースです。
4歳での夜泣きには、睡眠障害や精神的ストレスなど、特別な原因が隠れていることが多いです。
その原因を特定し、医学的な介入が必要な場合もあります。
本記事では、年齢的に珍しいケースの理由と、適切な対応法を詳しく解説します。
4歳の夜泣きの主な原因は?
4歳の夜泣きは、夜驚症や悪夢障害などの睡眠障害、強い精神的ストレスが主な原因であり、専門家への相談を検討すべき状態です。
4歳という年齢は、通常であれば夜泣きはほぼ見られなくなっている時期です。睡眠リズムは完全に確立され、夜通し眠れるのが普通です。言葉も豊かになり、不安や恐怖を言葉で表現できるため、言葉にできない不安から泣くということも減ります。そのため、この年齢で夜泣きが頻繁にある場合は、何らかの特別な要因があると考えるべきです。
低年齢の夜泣きとの大きな違いは、生理的な理由ではなく、心理的または医学的な問題が背景にあることです。0歳から2歳頃の夜泣きは、脳の発達過程や睡眠リズムの確立過程で起こる自然な現象でした。しかし4歳では、睡眠のメカニズムは成熟しています。にもかかわらず夜泣きが続くということは、睡眠障害、強いストレス、トラウマ体験、発達上の特性などが関与している可能性が高いのです。
また、4歳の「夜泣き」は、本人が意識的に泣いている場合と、無意識の状態で泣いている場合があります。夜驚症のように、目は開いていても意識がない状態で叫んだり泣いたりする現象もあります。これは乳幼児期の夜泣きとは全く異なる性質のものです。
つまり、4歳での夜泣きは、単なる発達の一過程ではなく、何らかの介入や治療が必要なサインである可能性が高いということです。
では、具体的にどのような原因があるのか、詳しく見ていきましょう。
4歳で夜泣きが起こる原因を詳しく解説
4歳という年齢で夜泣きが起こる場合、心理的要因や睡眠障害が原因となることが多いです。
夜驚症(睡眠時驚愕症)
夜驚症は、4歳から8歳頃に多く見られる睡眠障害です。深いノンレム睡眠中に突然起こり、急に起き上がって叫んだり、激しく泣いたり、パニック状態になったりします。
最大の特徴は、目は開いていても意識がないことです。保護者の顔を認識できず、声をかけても反応しません。心拍数が上がり、呼吸が荒くなり、汗をかくこともあります。ベッドから飛び出そうとしたり、暴れたりすることもあり、怪我の危険もあります。数分から十数分で自然に落ち着き、再び眠りにつきます。翌朝は全く覚えていないことがほとんどです。
夜驚症は、睡眠の深い段階から覚醒する際に、脳の一部だけが目覚めてしまうことで起こります。遺伝的要素もあり、親が子どもの頃に経験していることも多いです。疲労が溜まっている時、ストレスが多い時、睡眠リズムが乱れている時に起こりやすくなります。成長とともに自然に治ることが多いですが、頻繁に起こる場合は専門家に相談が必要です。
悪夢障害
悪夢は誰でも見るものですが、悪夢障害は頻繁に悪夢を見て、それが日常生活に支障をきたす状態です。週に何度も悪夢を見る、悪夢のために眠るのを怖がる、日中も悪夢の内容を思い出して不安になるなどの症状があります。
4歳は想像力が豊かになる時期で、現実と空想の区別がまだ曖昧なこともあります。テレビで見た怖い映像、友達から聞いた怖い話、絵本の怖いシーンなどが、強烈に記憶に残ります。また、日中に経験した強いストレスやトラウマ体験が、悪夢という形で現れることもあります。
悪夢から目覚めた場合、こどもは意識がはっきりしており、保護者を認識できます。「怖い夢を見た」と説明でき、抱きしめられると安心します。ただし、再び眠ることを怖がったり、一人で寝室にいることを拒否したりすることもあります。
幼稚園・保育園での対人ストレス
4歳は、友達との関わりが深まる時期です。仲間意識が芽生える一方で、仲間外れの不安も強くなります。複雑な人間関係のトラブルが増え、それがストレスになります。
言葉の発達により、友達同士で言い合いをしたり、時には傷つく言葉を言われたりすることもあります。「一緒に遊ばない」と言われる、グループから外される、自分だけ誘われないなど、社会的な拒絶を経験することもあります。また、競争意識も芽生え、「できない」ことへの劣等感を感じやすくなります。
さらに、年中・年長になると、発表会や運動会などの行事で大きな役割を任されることもあります。期待に応えなければというプレッシャーが、ストレスになることもあります。これらの日中のストレスが解消されないと、夜間に不安として現れ、夜泣きにつながります。
生活環境の大きな変化
4歳頃には、引っ越し、転園、弟妹の誕生、祖父母との同居や別居、両親の離婚など、大きな環境変化を経験することがあります。これらの変化は、こどもにとって大きなストレスです。
特に、家族内のトラブルや不和は、こどもに大きな影響を与えます。両親の喧嘩を目撃したり、家庭内の緊張した雰囲気を感じ取ったりすると、不安が高まります。また、虐待やネグレクトなどの不適切な養育環境にいる場合、慢性的なストレスから睡眠障害が生じることもあります。
トラウマ体験も夜泣きの原因になります。事故、災害、暴力の目撃、ペットの死など、強い恐怖や悲しみを伴う体験をした後、しばらくの間夜泣きが増えることがあります。
睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に呼吸が繰り返し止まる状態です。4歳では、扁桃腺やアデノイドの肥大が主な原因です。気道が狭くなり、呼吸が妨げられます。
症状としては、いびきをかく、口を開けて寝る、睡眠中に呼吸が止まることがある、寝相が極端に悪い、寝汗をかく、日中も眠そうにしている、集中力がない、成長が遅いなどがあります。睡眠の質が著しく低下するため、夜中に何度も目が覚めたり、苦しくて泣いたりします。
この病気は、適切な治療をしないと、成長発達や学習に影響を及ぼすことがあります。耳鼻咽喉科での診察が必要で、場合によっては扁桃腺やアデノイドの摘出手術が検討されます。
このように、4歳の夜泣きには様々な原因があり、多くは専門的な対処が必要です。
では、これらの原因をどのように特定すればよいのでしょうか。
4歳の夜泣き原因を特定する方法
原因を正しく特定することで、適切な対処や治療につながります。
泣き方と意識状態の確認が最も重要です。夜驚症の場合、目は開いていても焦点が合わず、保護者の顔を認識しません。声をかけても反応が薄く、むしろ抵抗したり暴れたりします。一方、悪夢の場合は、意識がはっきりしており、「怖い夢を見た」と説明できます。保護者を認識し、抱きしめられると安心します。この違いを見極めることが大切です。
日中の行動や様子の観察も重要な手がかりです。園での様子を先生に聞きましょう。友達とのトラブル、活動への参加状況、機嫌の良し悪し、食欲、昼寝の様子などを確認します。家では、いつもより甘えん坊になっている、些細なことで泣く、イライラしている、特定の話題を避ける、園に行きたがらないなどの変化がないか観察します。
睡眠環境のチェックも必要です。寝室の温度、湿度、明るさ、音の環境が適切か確認します。暑すぎたり寒すぎたりしていないか、外の騒音が気になっていないかなどをチェックします。また、就寝時間と起床時間が規則正しいか、昼寝が長すぎないかなども見直します。
ストレス要因の把握も欠かせません。最近の生活の変化を振り返りましょう。引っ越し、転園、家族の病気や死、両親の不和など、大きな出来事がなかったか確認します。また、テレビやYouTubeで怖い映像を見ていないか、友達から怖い話を聞いていないかなども聞いてみます。
身体症状の有無も確認しましょう。いびき、口呼吸、日中の眠気、集中力の低下、成長の遅れなどがあれば、睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。また、発熱、耳の痛み、頭痛、腹痛など、身体の不調がないかもチェックします。
これらの観察を総合的に行うことで、原因の見当がつきやすくなります。
では、原因に応じてどのように対処すればよいのでしょうか。
4歳の夜泣き原因別の対処法と専門家への相談
原因に応じた対処と、必要に応じた専門家の助言が重要です。
夜驚症への対応
夜驚症が起こった場合、無理に起こそうとせず、安全を確保して見守ることが基本です。抱きしめたり声をかけたりしても効果がなく、かえって混乱させることがあります。ベッドから落ちないように支えたり、尖ったものから遠ざけたりして、怪我をしないように見守ります。数分で自然に落ち着き、再び眠りにつきます。
予防策としては、規則正しい生活リズムを保つことが大切です。十分な睡眠時間を確保し、疲れすぎないようにします。ストレスを減らし、寝る前はリラックスした時間を過ごします。頻繁に起こる場合は、睡眠専門医に相談しましょう。
悪夢への対応
悪夢で泣いている場合は、すぐに駆けつけて安心させます。抱きしめて「大丈夫だよ」「夢だから本当じゃないよ」と声をかけます。こどもが話したがる場合は、夢の内容を聞いてあげましょう。話すことで恐怖が軽減されます。
寝る前の2時間は、怖い映像や激しい遊びを避けます。テレビやタブレットの使用も控えめにし、穏やかな絵本を読んだり、優しい音楽を聴いたりします。日中に怖いと感じる対象について話し合い、「作り物だよ」「守ってあげるからね」と安心感を与えます。頻繁に悪夢を見る場合は、心理的なサポートが必要なこともあり、臨床心理士や児童精神科医への相談を検討します。
ストレスへの対応
園でのストレスが原因の場合、担任の先生と情報共有をします。園での様子を詳しく聞き、配慮してもらえることがないか相談します。家庭では、こどもの話をじっくり聞く時間を作ります。「今日は何があった?」と聞くだけでなく、「楽しかったこと」「嫌だったこと」の両方を話せる雰囲気を作ります。
家庭内のストレスが原因の場合は、家族全体で向き合う必要があります。両親の不和がある場合は、こどもの前での喧嘩を避けます。必要に応じて、家族カウンセリングなども検討します。
生活習慣の見直し
基本的な生活習慣を整えることも大切です。毎日同じ時間に起き、同じ時間に寝るリズムを作ります。日中は適度に身体を動かし、夕方以降は静かに過ごします。寝る前のルーティンを確立し、リラックスできる環境を整えます。
昼寝が長すぎる場合は調整します。4歳では、昼寝が不要な子も増えてきます。昼寝をする場合も、15時までには終わらせ、長くても1時間程度にとどめます。
このように、家庭でできる対処は多くありますが、改善しない場合は専門家への相談が必要です。
では、どのような病気や障害の可能性があるのでしょうか。
4歳の夜泣き原因として疑うべき病気や障害
4歳で頻繁に夜泣きがある場合、医学的な問題が隠れている可能性を考慮する必要があります。
睡眠時無呼吸症候群は、既に説明したように、扁桃腺やアデノイドの肥大が原因で起こります。診断には、睡眠ポリグラフ検査が必要なこともあります。治療は、軽度の場合は経過観察、中等度以上の場合は手術が検討されます。適切な治療により、睡眠の質が劇的に改善することが多いです。
夜驚症と悪夢障害も、医学的には睡眠障害に分類されます。夜驚症は、多くの場合成長とともに自然に治りますが、週に数回以上起こる、長時間続く、怪我の危険があるなどの場合は、睡眠専門医への相談が必要です。悪夢障害も、頻度が高く日常生活に支障がある場合は、心理療法が有効なことがあります。
発達障害との関連も考慮すべきです。自閉スペクトラム症やADHDなどの発達特性を持つこどもは、睡眠の問題を抱えやすいことが知られています。感覚過敏により、音や光に敏感に反応して眠りが浅くなることもあります。夜泣きに加えて、日中の行動や発達に気になる点がある場合は、発達相談を検討しましょう。
不安障害や愛着障害も、夜泣きの原因になることがあります。分離不安障害では、保護者と離れることへの強い不安が続きます。トラウマ体験後のPTSD(心的外傷後ストレス障害)では、悪夢や夜驚が症状の一つとして現れます。愛着障害では、不安定な愛着関係により、睡眠が妨げられます。これらは、児童精神科医や臨床心理士による専門的な治療が必要です。
その他の睡眠障害としては、むずむず脚症候群、周期性四肢運動障害などがあります。脚に不快感があって眠れない、睡眠中に脚が勝手に動くなどの症状があれば、これらの可能性もあります。
このように、様々な医学的な問題が考えられるため、適切な診断と治療が重要です。
では、どのように医療機関を受診すればよいのでしょうか。
4歳の夜泣き原因が特定できない場合の医療機関受診
改善しない場合や原因が特定できない場合は、積極的に医療機関を受診することが大切です。
小児科での相談では、睡眠日誌を持参すると有効です。2週間程度、就寝時間、起床時間、夜泣きの回数と時間、日中の様子などを記録します。また、いびきや呼吸の様子を動画で撮影して見せることも、診断の助けになります。小児科医が身体的な問題を確認し、必要に応じて専門医への紹介状を書いてくれます。
睡眠専門医への受診は、睡眠障害が疑われる場合に有効です。大学病院や専門クリニックに睡眠外来があります。受診のタイミングとしては、週に3回以上夜泣きがある、3ヶ月以上続いている、日中の生活に支障が出ている、いびきや無呼吸がある、などの場合です。
児童精神科は、心理的な問題が疑われる場合に受診します。悪夢障害、不安障害、トラウマ関連障害、発達障害などの診断と治療を行います。カウンセリングや遊戯療法などの心理療法も提供されます。
検査の種類と内容としては、睡眠ポリグラフ検査が代表的です。一晩入院して、睡眠中の脳波、呼吸、心拍、酸素飽和度などを測定します。睡眠の質や睡眠障害の有無を詳しく調べることができます。その他、血液検査、アレルギー検査、耳鼻科的検査なども、必要に応じて行われます。
幼稚園・保育園との連携も重要です。園での様子を先生と共有し、家庭と園で一貫した対応をすることが大切です。必要に応じて、園でも配慮してもらえることを相談します。
家族全体のケアも忘れてはいけません。4歳の夜泣きは、家族全員の睡眠を妨げ、生活の質を低下させます。保護者自身が疲弊してしまうと、適切な対応ができなくなります。パートナーと交代で対応する、時には祖父母に助けを求める、カウンセリングを受けるなど、保護者自身のケアも大切です。
4歳での夜泣きは、多くの場合、何らかの医学的または心理的な問題が背景にあります。「そのうち治る」と放置せず、早めに専門家に相談することで、こどもの苦しみを軽減し、家族全員の生活の質を改善することができます。焦らず、適切なサポートを得ながら、一つずつ原因を探り、対処していきましょう。
監修

略歴
| 2017年 | 本田右志理事長より右脳記憶教育講座を指南、「JUNKK認定マスター講師」取得 |
|---|---|
| 2018年 | 幼児教室アップルキッズをリビングサロンとして開講 |
| 2020年 | 佐々木進学教室Tokiwaみらい内へ移転、「佐々木進学教室幼児部」として再スタート |
| 2025年 | 一般社団法人 日本右脳記憶教育協会(JUNKK)代表理事に就任 |



