イヤイヤ期にイライラして怒ってしまう時の対処法と心構え

イヤイヤ期

イヤイヤ期のこどもの行動にイライラが募り、つい感情的に怒ってしまう自分に悩んでいる親御さんは多いものです。

冷静でいたいと思っているのに、こどもの癇癪や理不尽な要求が続くと、どうしてもイライラして声を荒げてしまった経験は誰にでもあるでしょう。

イヤイヤ期に怒ってしまうことは決して珍しいことではなく、適切な対処法を知ることで上手にコントロールできるようになります。

この記事では、怒りそうになった時の具体的な対処法から、怒ってしまった後のフォロー、予防策、長期的な心構えまで詳しく解説します。

イヤイヤ期にイライラして怒りそうになった時の対処法

イヤイヤ期にイライラして怒りそうになった時は、深呼吸と一時的な距離を取ることで冷静さを取り戻すことが重要です。

最も効果的なのは、その場でできる深呼吸です。怒りを感じた瞬間に、ゆっくりと鼻から息を吸い、口からゆっくりと吐き出すことを3回繰り返します。この間に「これは成長の過程」「今は感情的にならずに対応しよう」と心の中で唱えることで、冷静さを取り戻すことができます。例えば、こどもが食事をひっくり返した時に、「もう!何回言ったら…」と怒りそうになったら、まず深呼吸をして「あ、またやっちゃったね。一緒に片付けよう」と冷静な声で対応できるようになります。

一時的に離れる方法も非常に有効です。怒りがピークに達しそうになったら、「お母さん、ちょっとトイレに行ってくるね」「お水を飲んでくるから、ちょっと待っててね」と言って、1〜2分間その場を離れます。この短時間でも、感情をリセットするには十分です。ただし、こどもを完全に放置するのではなく、「すぐに戻ってくるから、ここで待っていてね」と安心させる言葉をかけることが大切です。

冷静になるためのテクニックとして、心の中でカウントダウンをする方法があります。10から1まで数える間に、怒りの感情は自然と和らいでいきます。また、「この子は今、一生懸命成長しようとしている」「私も完璧な親でなくても大丈夫」といったポジティブな自己暗示をかけることも効果的です。

物理的な距離だけでなく、心理的な距離を取ることも重要です。こどもの行動を「問題行動」ではなく「発達の一段階」として客観視することで、感情的にならずに対応できるようになります。例えば、「また癇癪を起こしている」ではなく「今、この子は感情の表現方法を学んでいるんだな」と考えることで、冷静な観察者の視点を保つことができます。

建設的な対応への切り替えも大切なスキルです。怒りが和らいだら、「どうすれば解決できるか」に焦点を移します。こどもがおもちゃを片付けない時に怒りそうになったら、深呼吸の後に「一緒に片付けよう」「お片付け競争しようか」「好きな音楽をかけながら片付けよう」といった建設的な提案に切り替えます。

声のトーンと表情をコントロールすることも重要なテクニックです。怒りを感じても、意識的に声を低く、ゆっくりと話すことで、こどもに威圧感を与えずに済みます。また、眉間にしわを寄せるのではなく、意識的に表情を柔らかく保つことで、こども自身も落ち着きやすくなります。

即効性のあるストレス解消法も覚えておくと便利です。肩をゆっくり回す、首を左右に動かす、手をぎゅっと握ってからパッと離すといった簡単な動作でも、緊張をほぐすことができます。これらは、こどもの前でも自然に行える動作なので、実践しやすい方法です。

パートナーや家族との合図を決めておくことも効果的です。「ちょっと疲れた」「お茶でも飲もうか」といった合言葉で、交代してもらったり、少し休憩を取ったりできるようにしておくと、感情が爆発する前に対処できます。

このように、怒りそうになった時は深呼吸・一時的な距離・客観視・建設的思考への切り替えを組み合わせることで、冷静な対応を保つことができます。

しかし、どんなに気をつけていても、怒ってしまうことは誰にでもあります。

怒ってしまった後の適切なフォロー方法

イヤイヤ期のわが子に対して怒ってしまった後は、自分を責めすぎず、こどもとの信頼関係を修復することに集中することが大切です。

まず重要なのは、自分を責めすぎないことです。イヤイヤ期の対応は誰にとっても困難で、感情的になってしまうのは人間として当然の反応です。「怒ってしまった自分はダメな親だ」と自己嫌悪に陥るのではなく、「疲れていたから仕方ない」「次はもっと上手にできる」と自分に寛容になることが大切です。完璧な親は存在せず、失敗から学ぶことが成長につながるということを理解しましょう。

こどもへの謝り方も重要なポイントです。感情的に怒ってしまった場合は、こどもの目線まで下がって「さっきは大きな声を出してごめんね」「お母さんも感情的になってしまった」と素直に謝ります。ただし、こどもの行動自体を肯定するのではなく、「○○は良くないことだけど、お母さんも怒りすぎたね」といった具合に、行動への指導は維持しつつ、自分の対応については謝るというバランスを保つことが大切です。

謝った後は、気持ちを伝え直すことも大切です。「お母さんは○○ちゃんのことが大好きだよ」「怒っても、愛してる気持ちは変わらないよ」といった愛情のメッセージを伝えることで、こどもの不安を和らげることができます。また、抱きしめたり、手を握ったりといったスキンシップも、関係修復に効果的です。

信頼関係の修復には時間をかけることが大切です。一度謝ったからといってすぐに関係が元通りになるわけではありません。その後の関わりで、優しい声かけや穏やかな対応を心がけることで、徐々に信頼関係を再構築していきます。例えば、怒ってしまった日の夜は、いつもより長めに絵本を読んであげたり、特別な時間を作ったりすることも効果的です。

次回への学びとして、なぜ怒ってしまったのかを振り返ることも重要です。疲れていたのか、時間に追われていたのか、体調が悪かったのか、といった要因を分析することで、同じ状況を避ける対策を立てることができます。例えば、朝の忙しい時間に怒ってしまいがちなら、前夜に準備を済ませておく、朝は30分早く起きるといった具体的な改善策を実行します。

こどもの反応に合わせたフォローも大切です。怒られた後に委縮してしまうこどもには、より多くのスキンシップと安心の言葉をかけてあげます。一方、怒られてもけろっとしているこどもには、「お母さんの気持ちも分かってくれた?」といった具合に、相手の気持ちを考える機会を作ってあげることも大切です。

パートナーや家族にも状況を共有することが重要です。「今日は感情的になってしまった」「疲れが溜まっているみたい」といった具合に現状を伝えることで、サポートを得やすくなります。また、第三者の視点から見た改善点を教えてもらうことも、成長につながります。

怒ってしまった日の夜は、自分なりのリセット方法を実践することも大切です。好きな音楽を聴く、温かいお風呂に入る、日記に気持ちを書き出すなど、ストレスを発散し、翌日に向けて気持ちを整える時間を作ります。

このように、怒ってしまった後は自己受容・適切な謝り・関係修復・学びの抽出を通じて、より良い親子関係を築いていくことができます。

そもそも怒ってしまう状況を減らすためには、日常的な予防策も重要です。

イヤイヤ期にイライラを予防する日常的な工夫

イライラして怒ってしまうのを予防するには、時間と心に余裕を持つ生活設計と、親自身のケアを優先することが効果的です。

時間に余裕を持つスケジュール作りが最も基本的で効果的な予防策です。イヤイヤ期のこどもには、大人の想像以上に時間がかかることを前提として、スケジュールを組みます。朝の支度には普段の1.5倍の時間を見込み、外出の30分前には準備を完了するようにします。例えば、9時に外出予定なら8時には支度を始め、8時30分には完了を目指します。この余裕があることで、こどもがぐずったり、着替えに手間取ったりしても、イライラせずに対応することができます。

親自身のストレス管理も重要な予防策です。睡眠不足、疲労、体調不良の時は、些細なことでもイライラしやすくなります。夜は早めに寝る、昼寝ができる時は少しでも休む、栄養バランスの良い食事を心がけるといった基本的な自己管理を徹底します。また、週に一度でも自分だけの時間を確保し、好きなことをする時間を作ることで、心の余裕を保つことができます。

期待値の調整も重要なポイントです。2〜3歳のこどもに大人のような理性的な行動を期待するのは無理があります。「今日はスムーズに着替えてくれるかな」ではなく「今日も着替えに時間がかかるかもしれないけど、ゆっくり付き合おう」という心構えでいることで、想定外の出来事にもイライラしにくくなります。また、「今日できなくても、明日はできるかもしれない」という長期的な視点を持つことも大切です。

環境を整えることも予防に効果的です。こどもがイライラしやすい環境では、親もストレスを感じやすくなります。室温を適切に保つ、騒音を減らす、整理整頓をして視覚的なストレスを減らすといった環境調整をすることで、親子ともに穏やかに過ごしやすくなります。

事前の説明と選択肢の提示も、イライラを予防する効果があります。「今日はこんなスケジュールだよ」と一日の流れを朝のうちに説明したり、「AとBどちらがいい?」という選択肢を用意したりすることで、こどものイヤイヤ自体を減らすことができ、結果的に親のイライラも軽減されます。

サポート体制の活用も不可欠です。パートナー、祖父母、友人、地域の子育て支援サービスなど、頼れる人やサービスを積極的に活用します。「今日は疲れているから、お風呂をお父さんにお願いしよう」「今週は一時預かりサービスを利用して、少し休もう」といった具合に、一人で全てを抱え込まない仕組みを作ります。

感情の言語化を習慣にすることも予防に役立ちます。「今、ちょっとイライラしてるな」「疲れてるから、今日は早めに休もう」といった具合に、自分の感情や状態を客観視する習慣をつけることで、感情がピークに達する前に対処できるようになります。

リフレッシュ方法を複数持っておくことも大切です。5分でできる方法(深呼吸、ストレッチ、好きな音楽を聴く)、30分でできる方法(散歩、入浴、読書)、半日でできる方法(友人と会う、趣味に没頭する)といった具合に、時間に応じたリフレッシュ方法を用意しておくことで、ストレスが蓄積する前に解消できます。

完璧主義を手放すことも重要な予防策です。「良い母親なら感情的にならないはず」「理想的な対応ができるはず」といった思い込みを手放し、「今日も一日お疲れさま」「頑張ってる自分を褒めよう」という自己肯定的な考え方を身につけることで、自分へのプレッシャーを軽減できます。

このように、時間的余裕・体調管理・環境整備・サポート活用・感情の客観視を組み合わせることで、イライラしにくい生活環境を整えることができます。

これらの対処法や予防策を実践していく中で、長期的な視点を持つことも重要です。

長期的な視点での心構えと成長

長期的な視点では、完璧な親でなくても良いと受け入れ、怒る経験も含めて親としての成長プロセスとして捉えることが大切です。

完璧な親でなくても良いという考え方を受け入れることが、最も重要な心構えです。メディアやSNSで見る「理想的な子育て」と自分を比較して落ち込むのではなく、「今の自分なりに一生懸命やっている」ことを認めてあげましょう。時には感情的になることも、人間らしさの表れであり、こどもにとっては「お母さんも人間なんだ」ということを学ぶ機会にもなります。完璧でない親の姿を見ることで、こども自身も「失敗しても大丈夫」「完璧でなくても愛される」ということを学んでいくのです。

怒る経験から学ぶことも多くあります。怒ってしまった時の自分の感情や行動パターンを観察することで、自己理解が深まります。「疲れている時に怒りやすい」「時間に追われると感情的になる」「体調が悪い時は余裕がなくなる」といった自分の傾向を知ることで、事前に対策を立てられるようになります。また、怒った後にこどもと向き合い、関係を修復する過程で、コミュニケーション能力や問題解決能力も向上していきます。

こどもへの影響についても、長期的に見ると必ずしもネガティブなものばかりではありません。親が感情的になった後に適切にフォローをすることで、こどもは「間違いを犯しても謝って修復できる」「人は完璧でなくても愛し合える」「感情をコントロールすることの大切さ」を学びます。また、親が自分の感情と向き合い、成長しようとする姿を見ることで、こども自身も感情との向き合い方を学んでいきます。

親としての成長プロセスを楽しむことも大切です。イヤイヤ期の対応を通して、忍耐力、共感力、問題解決能力、感情管理能力など、様々なスキルが向上します。「去年の今頃はもっと感情的だったけど、今は冷静に対応できることが増えた」「以前は怒った後に自己嫌悪に陥っていたけど、今は建設的に反省できるようになった」といった成長を実感できる機会も増えてきます。

こどもの成長への信頼を持つことも重要です。今は理解できないことでも、こどもは確実に成長しており、親の愛情や努力は必ず伝わっています。イヤイヤ期の困難な時期を親子で乗り越えることで、より深い絆が生まれ、将来的により良い関係を築くことができます。「今は大変だけど、いつか笑って思い出せる日が来る」という希望を持つことが、日々の困難を乗り越える力になります。

同じような経験をしている他の親との繋がりを持つことも、長期的な成長に役立ちます。子育て仲間との情報交換や愚痴の言い合いを通して、「みんな同じような苦労をしている」「自分だけが特別にダメな親ではない」ということを実感できます。また、先輩ママ・パパから「そんな時期もあったね」「今思えば貴重な経験だった」といった話を聞くことで、現在の困難も一時的なものだということを理解できます。

感謝の気持ちを育てることも、長期的な心の安定につながります。「今日は一日イライラしたけど、こどもの笑顔を見られてよかった」「大変だったけど、一緒にお風呂に入って楽しい時間もあった」といった具合に、困難な中にも小さな幸せや成長を見つける習慣をつけることで、ポジティブな気持ちを保ちやすくなります。

将来への期待を持つことも重要です。イヤイヤ期を通して培われた親子の絆、こどもの自立心、親の忍耐力や共感力は、将来必ず財産となります。「今の苦労が、将来のより良い関係につながっている」「この経験が、自分とこどもの成長に必要だった」と信じることで、現在の困難にも意味を見出すことができます。

このように、完璧でない自分を受け入れ、成長プロセスとして捉え、こどもとの絆を信じながら長期的な視点で子育てに向き合うことで、イライラや怒りと上手に付き合いながら、親子ともに成長していくことができるでしょう。

監修

代表理事
佐々木知香

略歴

2017年 本田右志理事長より右脳記憶教育講座を指南、「JUNKK認定マスター講師」取得
2018年 幼児教室アップルキッズをリビングサロンとして開講
2020年 佐々木進学教室Tokiwaみらい内へ移転、「佐々木進学教室幼児部」として再スタート
2025年 一般社団法人 日本右脳記憶教育協会(JUNKK)代表理事に就任
塾講師として中高生の学習指導に長年携わる中で、幼児期・小学校期の「学びの土台づくり」の重要性を痛感。
結婚を機に地方へ移住後、教育情報や環境の地域間格差を実感し、「地域に根差した実践の場をつくりたい」との想いから、幼児教室アップルキッズを開校。
発達障害や不登校の支援、放課後等デイサービスでの指導、子ども食堂での学習支援など、多様な子どもたちに寄り添う教育活動を展開中。