夜泣きで暴れるのはなぜ?原因と適切な対処法・年齢による違いについて

夜泣き

夜中にこどもが突然泣き出し、さらに激しく暴れることがあって驚いた経験はありませんか。

通常の夜泣きとは異なり、手足をバタバタさせたり、布団から飛び出そうとしたりする様子は心配になるものです。

この夜泣きで暴れる現象に、不安を感じている保護者の方もいらっしゃるでしょう。

年齢や発達段階によっても、理由は大きく異なることがあります。

本記事では、原因を詳しく解説し、適切な対処法をお伝えします。

夜泣きで暴れる原因とは?

夜泣きで暴れる主な原因は、夜驚症という睡眠障害、またはパニック状態や強い恐怖であり、意識がない状態で起こることが多いです。

まず、暴れる夜泣きの特徴を理解することが重要です。通常の夜泣きでは、こどもは泣きながらも比較的落ち着いており、抱っこすれば安心します。しかし、暴れる夜泣きでは、激しく手足を動かす、布団を蹴る、ベッドから飛び出そうとする、保護者を押しのける、叫ぶなどの行動が見られます。目は開いていても、保護者の顔を認識できないことも多いです。

通常の夜泣きとの最も大きな違いは、意識状態です。暴れる夜泣きの多くは、こどもの意識がない、または半覚醒の状態で起こります。保護者が声をかけても反応しない、抱きしめようとすると抵抗する、周囲の状況を認識していない様子が見られます。これは、脳が完全には目覚めていない状態で身体が動いているためです。

もう一つの重要な違いは、記憶の有無です。通常の夜泣きでは、翌朝にある程度覚えていることがありますが、暴れる夜泣きでは、ほとんどの場合、翌朝は全く覚えていません。本人にとっては、何も起こらなかった夜と同じなのです。

暴れる夜泣きは、単なる夜泣きの激しいバージョンではなく、脳の睡眠と覚醒のメカニズムに関わる特別な現象だということです。

では、年齢によってどのような違いがあるのでしょうか。

年齢別にみる夜泣きで暴れる原因

年齢により、暴れる原因や症状の現れ方が大きく異なります。

0〜1歳で暴れる場合

0歳から1歳で激しく手足を動かす場合、多くは身体的な不快感が原因です。真の夜驚症は2歳以降に多く、1歳以下では稀です。

この年齢で暴れるように見える場合、お腹が痛い、耳が痛い、熱がある、かゆいなど、身体の不調があることが多いです。痛みや不快感を言葉で伝えられないため、泣きながら激しく動くことで訴えています。中耳炎、便秘、アレルギー症状などが隠れている可能性があります。

また、寝ぼけた状態で身体を動かすこともあります。睡眠サイクルの移行期に、半分目覚めた状態で手足を動かし、それが暴れているように見えることもあります。しかし、真の夜驚症のような激しさはありません。

この年齢で激しく泣いて暴れる場合は、まず身体的な不調を疑い、小児科を受診することが重要です。

2〜3歳で暴れる場合

2歳から3歳は、夜驚症が現れ始める年齢です。ただし、まだ頻度は低く、3歳後半から4歳以降に増えていきます。

この年齢では、悪夢による恐怖で暴れることもあります。想像力が発達し、怖い夢を見るようになります。夢の中で追いかけられている感覚や、怖いものから逃げようとする動きが、暴れる行動として現れることがあります。悪夢の場合は、目を覚ました後に意識がはっきりしており、「怖かった」と訴えることができます。

また、イヤイヤ期の情緒不安定さが、睡眠中にも影響することがあります。日中に抑えていた感情が、夜間に爆発するように現れ、泣きながら暴れることがあります。

この年齢では、夜驚症か悪夢か、それとも情緒的な問題かを見極めることが大切です。

4歳以降で暴れる場合

4歳以降は、夜驚症の好発年齢です。4歳から8歳頃が最も多く、この時期に暴れる夜泣きがある場合、夜驚症である可能性が非常に高いです。

深い睡眠中に突然起き上がり、叫んだり、激しく暴れたりします。目は見開いていますが、焦点が合わず、保護者を認識できません。心拍数が上がり、呼吸が荒く、汗をかきます。ベッドから飛び出そうとしたり、部屋中を走り回ったりすることもあります。

この年齢では、学校や園でのストレス、友達との関係、学習のプレッシャーなども影響します。日中のストレスが高い時期に、夜驚症が起こりやすくなります。

また、睡眠時無呼吸症候群などの他の睡眠障害が隠れていることもあります。いびきや無呼吸がある場合は、その可能性を疑います。

このように、年齢によって原因は様々ですが、4歳以降では夜驚症が最も疑われます。

では、夜驚症について詳しく見ていきましょう。

夜泣きで暴れる最大の原因「夜驚症」とは

夜驚症は、暴れる夜泣きの最も一般的な原因であり、睡眠障害の一種です。

夜驚症の症状と特徴は、非常に特徴的です。入眠後1〜3時間頃、深いノンレム睡眠中に突然起こります。急に起き上がって叫ぶ、泣く、パニック状態になるなどが見られます。目は大きく開いていますが、焦点が合わず、周囲を認識していません。保護者が声をかけても反応せず、むしろ抵抗したり、暴れたりします。心拍数の上昇、発汗、呼吸が荒くなるなどの自律神経症状も伴います。数分から十数分で自然に落ち着き、再び眠りにつきます。翌朝は全く覚えていません。

悪夢との違いは明確です。悪夢は、レム睡眠中に見る怖い夢で、明け方に多く起こります。目が覚めた時、意識がはっきりしており、保護者を認識できます。夢の内容を説明でき、「怖い夢を見た」と訴えます。抱きしめられると安心し、比較的早く落ち着きます。翌朝、夢の内容を覚えています。一方、夜驚症は、入眠後早い時間に起こり、意識がなく、翌朝は覚えていないという違いがあります。

発生メカニズムとしては、深い睡眠から覚醒する過程で、脳の一部だけが目覚めてしまうことで起こります。身体を動かす部分や感情を司る部分は活性化しますが、意識や記憶を司る部分は眠ったままです。このアンバランスな状態が、意識のないパニック状態を引き起こします。

好発年齢は4歳から8歳頃で、10歳以降は徐々に減少します。思春期までにはほとんどが自然に治ります。遺伝的要素があり、親が子どもの頃に経験していることも多いです。疲労、ストレス、睡眠不足、発熱などが引き金になりやすいです。

頻度は、週に1回程度から月に1回程度まで様々です。毎晩起こることは稀で、不規則に起こります。成長とともに自然に治ることがほとんどですが、頻繁に起こる場合や怪我のリスクがある場合は、専門家への相談が必要です。

このように、夜驚症は特徴的な症状を持つ睡眠障害です。

では、これを正しく見極めるにはどうすればよいのでしょうか。

夜泣きで暴れる原因を見極める方法

原因を正しく見極めることで、適切な対処ができます。

意識状態の確認が最も重要です。こどもの目を見て、焦点が合っているか確認します。名前を呼んで、反応があるか観察します。夜驚症の場合、目は開いていても焦点が合わず、名前を呼んでも反応しません。悪夢の場合は、目が覚めると保護者を認識し、「ママ」「パパ」と呼びかけに応答します。

暴れ方の特徴も手がかりになります。夜驚症では、目的のない動きが見られます。ベッドから飛び出そうとする、部屋中を走り回る、何かから逃げるような動きをするなどです。一方、悪夢で怖がって動いている場合は、保護者に抱きつこうとする、布団にもぐり込もうとするなど、安全を求める動きが見られます。

時間帯とタイミングも重要な判断材料です。夜驚症は、入眠後1〜3時間頃、深い睡眠中に起こります。だいたい21時に寝た場合、22時から24時頃に起こることが多いです。一方、悪夢は明け方、レム睡眠が多い時間帯に起こりやすいです。4時から6時頃に多く見られます。

翌朝の記憶の有無を確認することも大切です。朝起きた時に、「昨日の夜、覚えてる?」と聞いてみます。夜驚症の場合、全く覚えていません。「何もなかったよ」と答えます。悪夢の場合は、「怖い夢を見た」と覚えており、内容を説明できることもあります。

身体症状の確認も必要です。発熱、いびき、無呼吸、日中の眠気、耳の痛み、お腹の痛みなど、身体的な不調がないか観察します。身体的な問題がある場合は、それが暴れる原因になっている可能性があります。

これらを総合的に判断することで、原因が見えてきます。

では、実際に暴れている時、どのように対処すればよいのでしょうか。

夜泣きで暴れる時の適切な対処法

安全確保が最優先であり、原因に応じた適切な対応が必要です。

夜驚症の場合の対応

夜驚症が起こった時は、無理に起こそうとせず、見守ることが基本です。声をかけたり、抱きしめたりしても効果がなく、かえって混乱させることがあります。触れられることを嫌がり、激しく抵抗することもあります。

最も大切なのは、安全を確保することです。ベッドから落ちないように近くで支える、尖ったものや危険なものを遠ざける、階段やドアに近づかないように見守るなどします。怪我をしないように、静かに見守ります。

無理に止めようとせず、自然に落ち着くのを待ちます。数分から十数分で、自然にパニックが収まり、再び眠りにつきます。この時、優しく布団に誘導することはできますが、強制しないようにします。

予防策としては、規則正しい生活リズムを保つことが大切です。十分な睡眠時間を確保し、疲れすぎないようにします。ストレスを減らし、寝る前はリラックスした時間を過ごします。疲労が溜まっている時や、生活リズムが乱れている時に起こりやすいため、これらを避けることが予防になります。

悪夢の場合の対応

悪夢で暴れている場合は、すぐに駆けつけて安心させます。優しく名前を呼び、目を覚まさせます。抱きしめて「大丈夫だよ」「ここにいるよ」「夢だから本当じゃないよ」と声をかけます。

こどもが話したがる場合は、夢の内容を聞いてあげます。話すことで恐怖が軽減されます。ただし、詳しく思い出させる必要はありません。「怖かったね」と共感し、安心感を与えることが大切です。

再び眠ることを怖がる場合は、一緒にいることを伝えます。「隣にいるからね」「大丈夫だよ」と安心させます。電気を少しつけておく、ドアを開けておくなど、こどもが安心できる環境を作ります。

予防策としては、寝る前の過ごし方を工夫します。怖い映像や激しい遊びを避け、穏やかな絵本を読んだり、優しい音楽を聴いたりします。日中に怖い体験をした場合は、寝る前に優しく話を聞き、安心感を与えます。

安全確保の方法

暴れている時の安全確保は、夜驚症でも悪夢でも共通して重要です。

寝室の環境を整えることが基本です。ベッドは低めにする、または布団を床に敷く、ベッドの周りに柔らかいマットを敷く、尖った家具を遠ざける、窓に鍵をかけるなど、怪我のリスクを減らします。

暴れている最中は、無理に抑えようとせず、怪我をしないように見守ります。抱きしめようとすると、こどもがパニックになり、保護者も怪我をすることがあります。安全な距離から見守り、危険な行動をしそうな時だけ、優しく制止します。

兄弟姉妹がいる場合は、別の部屋で寝かせることも検討します。暴れているこどもに巻き込まれて怪我をする可能性があるためです。

予防策

暴れる夜泣きを予防するためには、生活習慣の見直しが効果的です。

規則正しい睡眠リズムを保つことが基本です。毎日同じ時間に起き、同じ時間に寝ます。十分な睡眠時間を確保し、睡眠不足を避けます。4歳以降なら、昼寝は不要か、短時間にとどめます。

日中の活動とリラックスのバランスを取ることも大切です。適度に身体を動かして疲れさせますが、疲れすぎないように注意します。夕方以降は、興奮する遊びを避け、静かに過ごします。

寝る前のルーティンを確立します。お風呂、絵本、子守唄など、毎晩同じ流れを繰り返します。リラックスできる雰囲気を作り、安心して眠りにつけるようにします。

ストレスを減らすことも重要です。園や学校での様子を聞き、悩みがあれば話を聞きます。家庭内でも、穏やかな雰囲気を保つようにします。

このように、適切な対処と予防により、暴れる夜泣きは改善できることが多いです。

しかし、場合によっては病気や障害が隠れていることもあります。

夜泣きで暴れる原因が病気や障害の可能性

頻繁に暴れる夜泣きがある場合、医学的な問題を考慮する必要があります。

睡眠障害としては、夜驚症以外にも様々なものがあります。睡眠時無呼吸症候群では、呼吸が妨げられて苦しくなり、暴れるように動くことがあります。むずむず脚症候群では、脚に不快感があって、じっとしていられず動き回ります。これらは専門的な検査と治療が必要です。

発達障害との関連も考慮すべきです。自閉スペクトラム症やADHDのこどもは、睡眠の問題を抱えやすいことが知られています。感覚過敏により、些細な刺激で目が覚めたり、パニックになったりすることがあります。日中の行動や発達に気になる点がある場合は、発達相談を検討します。

てんかん発作の可能性も、稀ですが考慮が必要です。夜間に起こるてんかん発作では、意識を失って暴れるような動きをすることがあります。夜驚症と似ていますが、発作の持続時間、頻度、動きのパターンなどに違いがあります。疑わしい場合は、小児神経科での検査が必要です。

トラウマ関連障害も原因になります。虐待、事故、災害などのトラウマ体験がある場合、PTSD(心的外傷後ストレス障害)の症状として、悪夢や夜驚が現れることがあります。フラッシュバックにより、パニック状態で暴れることもあります。児童精神科医や臨床心理士による専門的な治療が必要です。

専門医への相談タイミングとしては、週に数回以上暴れる、3ヶ月以上続いている、怪我のリスクが高い、日中の生活に支障が出ている、他の症状(いびき、無呼吸、日中の眠気など)がある、などの場合です。小児科で相談し、必要に応じて睡眠専門医、小児神経科医、児童精神科医などへの紹介を受けます。

睡眠ポリグラフ検査により、睡眠の質や睡眠障害の有無を詳しく調べることができます。脳波検査により、てんかんの有無を確認できます。これらの検査により、正確な診断と適切な治療が可能になります。

暴れる夜泣きは、見ている保護者にとっても非常につらいものです。しかし、多くの場合、夜驚症という成長過程で起こる一時的な現象です。適切な対処と安全確保により、こどもも家族も安心して過ごせるようになります。頻繁に起こる場合や、他の症状がある場合は、躊躇せず専門家に相談しましょう。早期の診断と対処により、こどもの苦しみを軽減し、家族全員の生活の質を改善することができます。

監修

代表理事
佐々木知香

略歴

2017年 本田右志理事長より右脳記憶教育講座を指南、「JUNKK認定マスター講師」取得
2018年 幼児教室アップルキッズをリビングサロンとして開講
2020年 佐々木進学教室Tokiwaみらい内へ移転、「佐々木進学教室幼児部」として再スタート
2025年 一般社団法人 日本右脳記憶教育協会(JUNKK)代表理事に就任
塾講師として中高生の学習指導に長年携わる中で、幼児期・小学校期の「学びの土台づくり」の重要性を痛感。
結婚を機に地方へ移住後、教育情報や環境の地域間格差を実感し、「地域に根差した実践の場をつくりたい」との想いから、幼児教室アップルキッズを開校。
発達障害や不登校の支援、放課後等デイサービスでの指導、子ども食堂での学習支援など、多様な子どもたちに寄り添う教育活動を展開中。