夜泣きへの対処法として、おしゃぶりの使用を考えている保護者の方もいらっしゃるでしょう。
実際に効果があったという話を聞いて、試してみたいと思っている方もいるかもしれません。
一方で、歯並びへの影響や依存の心配から、使用を迷っている方もいるのではないでしょうか。
夜泣き対策としてのおしゃぶりには、メリットもあれば注意すべきデメリットもあります。
本記事では、効果や正しい使い方について、詳しく解説します。
夜泣きにおしゃぶりは効果があるの?
夜泣きへのおしゃぶりの効果は個人差が大きく、万能ではありませんが、特に低月齢では有効なケースもあります。
まず、おしゃぶりが夜泣きに効く理由を理解することが大切です。赤ちゃんには吸啜反射という原始反射があり、何かを吸うことで本能的に落ち着きます。お腹の中にいた時から、指を吸っていた赤ちゃんもいます。吸うという行為そのものが、安心感をもたらすのです。おしゃぶりは、この吸啜反射を利用して、赤ちゃんを落ち着かせる道具です。
夜中に目が覚めた時、おしゃぶりがあることで、自分で再び眠りにつける場合があります。これは、セルフコンフォーティング(自己慰撫)と呼ばれる能力で、おしゃぶりがその助けになることがあります。保護者を呼ばずに、自分でおしゃぶりを吸って落ち着き、眠りに戻れるようになると、夜泣きの頻度が減ることがあります。
ただし、効果には大きな個人差があります。おしゃぶりを嫌がる赤ちゃんもいますし、最初は使っていても途中で興味を失う赤ちゃんもいます。また、おしゃぶりで落ち着く時期と、そうでない時期があることもあります。すべての赤ちゃんに効果があるわけではなく、試してみて合わなければ無理に使う必要はありません。
効果的な年齢としては、生後0〜6ヶ月頃が最も有効です。この時期は吸啜反射が強く、おしゃぶりで落ち着きやすい時期です。6ヶ月を過ぎると、徐々に吸啜反射が弱まり、他の方法で安心を得られるようになってきます。1歳を過ぎると、おしゃぶり以外の安心材料(ぬいぐるみ、毛布など)を好むようになることも多いです。
つまり、おしゃぶりは夜泣き対策の一つの選択肢であり、試してみる価値はありますが、絶対的な解決策ではないということです。
では、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。
夜泣き対策としてのおしゃぶりのメリット
おしゃぶりには、夜泣き対策として複数のメリットがあります。
吸啜反射による安心感は、最大のメリットです。生後数ヶ月の赤ちゃんにとって、吸うという行為は本能的に安心をもたらします。母乳やミルクを飲む時だけでなく、吸うこと自体が心を落ち着かせる効果があります。夜中に目が覚めて不安になった時、おしゃぶりがあることで、その不安を和らげることができます。
授乳やミルク以外で落ち着く方法を持つことは、育児の選択肢を広げます。泣くたびに授乳していると、授乳が睡眠の唯一の手段になってしまうことがあります。おしゃぶりという別の選択肢があることで、授乳以外の方法でも眠りにつけるようになります。これは、断乳や卒乳の際にも役立ちます。
セルフコンフォーティングの習得を促すことも重要なメリットです。おしゃぶりを使うことで、赤ちゃんは「自分で落ち着く」という経験を積みます。最初は保護者がおしゃぶりを口に入れてあげますが、徐々に自分で探して口に入れられるようになります。この過程で、自分で気持ちをコントロールする力が育っていきます。夜中に目が覚めても、自分でおしゃぶりを探して吸い、再び眠りにつけるようになると、夜泣きは大幅に減少します。
SIDS(乳幼児突然死症候群)予防効果も指摘されています。複数の研究で、おしゃぶりの使用がSIDSのリスクを低減することが示されています。メカニズムは完全には解明されていませんが、おしゃぶりが気道を確保する、覚醒しやすくなる、などの理由が考えられています。アメリカ小児科学会は、就寝時のおしゃぶり使用を推奨しています。ただし、母乳育児が確立するまでは使用を控えることも推奨されています。
保護者の負担軽減も見逃せないメリットです。夜泣きに毎回対応することは、保護者にとって大きな負担です。おしゃぶりで落ち着く場合、保護者が起きる回数が減り、睡眠を確保できます。保護者の睡眠不足が軽減されることで、日中の育児にも余裕が生まれます。心身の健康を保つことができれば、結果的にこどもにとっても良い影響があります。
このように、おしゃぶりには複数のメリットがあります。
しかし、デメリットや注意点も理解しておく必要があります。
夜泣き対策でおしゃぶりを使うデメリットと注意点
おしゃぶりには、いくつかのデメリットと注意すべき点があります。
歯並びへの影響は、最も心配されるデメリットです。長期間、特に2歳以降もおしゃぶりを使い続けると、歯並びや噛み合わせに影響が出る可能性があります。上の前歯が前に出る、開咬(上下の歯が噛み合わない)などの問題が起こることがあります。ただし、1歳半から2歳頃までにやめられれば、歯並びへの影響は少ないとされています。永久歯が生える前にやめることができれば、多くの場合、問題は自然に解消されます。
依存のリスクも考慮が必要です。おしゃぶりに頼りすぎると、それがないと眠れなくなってしまうことがあります。おしゃぶりが唯一の安心材料になると、外出時に忘れた時、卒業する時などに困難が生じます。依存を防ぐためには、おしゃぶり以外の安心材料も用意する、日中のスキンシップを十分に取るなどの工夫が必要です。
夜中に外れた時の問題も実際的な課題です。おしゃぶりをして眠りについても、夜中に口から外れてしまうことがあります。すると、赤ちゃんは目を覚まして泣き、保護者がおしゃぶりを探して口に入れる、という作業が発生します。かえって夜中に何度も起こされることになり、本末転倒になることもあります。この問題は、赤ちゃんが自分でおしゃぶりを探して口に入れられるようになるまで続きます。
卒業の難しさも考慮すべき点です。おしゃぶりは、いつかはやめなければなりません。しかし、長く使っていると、やめることに抵抗が大きくなります。卒業の際に、一時的に夜泣きが増えることもあります。「おしゃぶりがないと眠れない」という状態になってしまうと、卒業に苦労します。そのため、ある程度早い段階から、おしゃぶり以外の方法でも眠れるように導いていくことが大切です。
衛生面の管理も重要です。おしゃぶりは常に清潔に保つ必要があります。床に落ちたものをそのまま口に入れると、細菌やウイルスに感染するリスクがあります。定期的に消毒し、複数本を用意してローテーションで使用します。また、おしゃぶりには使用期限があり、定期的に新しいものに交換する必要があります。劣化したおしゃぶりは破損のリスクがあり危険です。
母乳育児への影響も指摘されることがあります。母乳育児が確立する前におしゃぶりを使うと、乳頭混乱を起こしたり、授乳回数が減って母乳の分泌が低下したりする可能性があります。母乳育児を希望する場合は、授乳が軌道に乗るまで(生後3〜4週間程度)は、おしゃぶりの使用を控えるのが安全です。
このように、デメリットも複数あるため、メリットとデメリットを天秤にかけて判断することが大切です。
では、使用する場合、どのように使えばよいのでしょうか。
夜泣きに効果的なおしゃぶりの使い方
月齢に応じた適切な使い方をすることで、メリットを最大限に活かし、デメリットを最小限に抑えられます。
月齢別の使用方法
生後0〜3ヶ月では、母乳育児が確立してから使い始めることが推奨されます。生後3〜4週間は授乳に専念し、その後、必要に応じておしゃぶりを導入します。この時期は吸啜反射が最も強いため、効果が出やすい時期です。ただし、一日中おしゃぶりをくわえさせるのではなく、夜泣きの際や寝かしつけの時など、必要な時だけ使用します。
生後4〜6ヶ月では、夜の寝かしつけと夜泣きの際に使用します。この時期は、セルフコンフォーティングを学ぶ良い時期です。おしゃぶりを自分で探して口に入れる練習もできます。ベッドの中に複数個おしゃぶりを置いておくと、自分で見つけやすくなります。ただし、日中はできるだけ他の遊びや活動に集中させ、おしゃぶりへの依存を防ぎます。
生後7ヶ月〜1歳では、徐々に使用を減らしていく時期です。夜の就寝時のみの使用に限定するなど、使用場面を絞っていきます。日中は使わない、外出時は持って行かないなど、ルールを決めていきます。この時期から、おしゃぶり以外の安心材料(ぬいぐるみ、毛布など)も導入し、選択肢を増やしていきます。
1歳以降は、できれば卒業を目指す時期です。遅くとも2歳までには卒業できるよう、計画的に減らしていきます。無理に取り上げるのではなく、段階的に減らしていくことが大切です。
使用時間帯とタイミング
おしゃぶりは、一日中使うものではなく、必要な時だけ使用することが基本です。
夜の寝かしつけの際に使用することは、最も一般的な使い方です。入眠儀式の一部として、お風呂、授乳、絵本の後におしゃぶりを与えて眠りにつかせます。入眠後、口から外れても問題ありません。無理に口に戻す必要はなく、自然に任せます。
夜中に目が覚めて泣いた時に使用することも効果的です。すぐに授乳するのではなく、まずおしゃぶりを試してみます。おしゃぶりで落ち着いて再び眠りにつければ、授乳の回数を減らすことができます。ただし、明らかに空腹で泣いている場合は、無理におしゃぶりで済ませず、授乳やミルクを与えましょう。
日中の使用は最小限にすることが推奨されます。泣くたびにおしゃぶりを与えるのではなく、抱っこや声かけなど、他の方法も試します。おしゃぶりに依存しないよう、様々な方法でこどもを落ち着かせることが大切です。
選び方のポイント
おしゃぶりを選ぶ際は、いくつかのポイントがあります。
月齢に合ったサイズを選ぶことが基本です。おしゃぶりは月齢別にサイズが分かれています。小さすぎると効果がなく、大きすぎると口に合いません。成長に応じて、適切なサイズに変更していきます。
形状も重要です。歯並びへの影響を考慮した歯科医推奨タイプを選ぶと良いでしょう。平らな形状のものは、歯並びへの影響が少ないとされています。
素材は、シリコン製が一般的です。柔らかく、煮沸消毒もできるため、衛生的に使用できます。ラテックス(天然ゴム)製もありますが、アレルギーのリスクがあるため注意が必要です。
安全性も確認します。日本の安全基準(STマークなど)に適合した製品を選びます。部品が外れにくい構造、通気孔があるものなどを選びましょう。
このように、適切な使い方をすることで、おしゃぶりのメリットを活かせます。
しかし、いつかはおしゃぶりを卒業する必要があります。
夜泣きが落ち着いた後のおしゃぶり卒業方法
夜泣き対策のおしゃぶりの卒業は、計画的に、無理なく進めることが大切です。
卒業の適切な時期は、1歳半から2歳頃が理想的です。この時期までにやめられれば、歯並びへの影響は少ないとされています。遅くとも3歳までには卒業することが推奨されます。ただし、こどもの発達や状況に応じて、柔軟に考えることも大切です。
段階的な減らし方が、最も成功率が高い方法です。いきなり取り上げるのではなく、少しずつ使用場面を減らしていきます。まず、日中の使用をやめます。次に、外出時は持って行かないようにします。最終的に、夜の就寝時のみの使用にします。さらに、入眠時だけ使い、眠ったら外すようにします。このように、段階を踏むことで、こどもも保護者も無理なく進められます。
代替の安心材料を用意することも効果的です。お気に入りのぬいぐるみ、毛布、タオルなど、おしゃぶりの代わりになる安心材料を見つけます。「おしゃぶりの代わりに、このクマさんと一緒に寝ようね」と提案します。新しい安心材料に慣れることで、おしゃぶりがなくても安心して眠れるようになります。
無理のない進め方としては、こどもの様子を見ながら進めることが大切です。卒業を急ぎすぎて、夜泣きが悪化したり、情緒が不安定になったりする場合は、一度戻って様子を見ます。大きな環境変化がある時期(保育園入園、引っ越し、弟妹の誕生など)は、卒業を延期することも検討します。
卒業の方法としては、「おしゃぶり卒業パーティー」を開く、「おしゃぶり妖精に返す」などのストーリーを作るなど、こどもが納得できる形を工夫します。3歳前後なら、こういった方法が効果的なこともあります。
卒業後は、たっぷり褒めてあげましょう。「おしゃぶりなしで眠れて偉いね」と認めることで、こどもは自信を持ちます。一時的に夜泣きが増えることもありますが、それは一過性のものです。根気よく対応していけば、必ず落ち着きます。
このように、計画的に卒業を進めることで、スムーズに移行できます。
そして、おしゃぶりだけに頼るのではなく、他の対策も併用することが重要です。
おしゃぶり以外の夜泣き対策との組み合わせ
おしゃぶりは一つの手段であり、他の対策と組み合わせることで、より効果的になります。
生活リズムの確立は、夜泣き対策の基本です。毎日同じ時間に起き、同じ時間に寝るリズムを作ります。朝は日光を浴びて体内時計をリセットし、夜は暗く静かな環境で眠ります。昼寝の時間も調整し、夜の睡眠を妨げないようにします。規則正しい生活リズムがあれば、おしゃぶりの効果もより発揮されます。
入眠儀式の確立も重要です。お風呂、授乳やミルク、絵本、子守唄、おしゃぶりという流れを毎晩繰り返すことで、「この流れの後は眠る時間」とこどもが学習します。おしゃぶりは入眠儀式の一部として位置づけ、他の要素も大切にします。
環境調整も欠かせません。寝室の温度、湿度、明るさ、音を適切に保ちます。快適な睡眠環境があってこそ、おしゃぶりの効果も活きます。暑すぎたり寒すぎたりする環境では、おしゃぶりがあっても眠れません。
スキンシップの重要性も忘れてはいけません。おしゃぶりに頼りすぎて、抱っこや触れ合いが減ってしまうのは本末転倒です。日中にたっぷりスキンシップを取り、愛着を形成することが、夜の安心感につながります。おしゃぶりは補助的な道具であり、保護者との関係が最も重要な安心材料です。
総合的なアプローチを取ることで、夜泣きは改善していきます。おしゃぶりだけで解決しようとせず、発達段階に応じた対応、生活習慣の改善、情緒面のケア、睡眠環境の整備など、多角的に取り組むことが大切です。
おしゃぶりは、夜泣き対策の一つの選択肢です。効果があれば使用し、合わなければ無理に使う必要はありません。大切なのは、こどもの個性や状況に応じて、柔軟に対応することです。
おしゃぶりのメリットとデメリットを理解し、適切に使用すれば、夜泣きの軽減に役立つことがあります。ただし、万能ではないことを理解し、他の方法も併用しながら、総合的に夜泣きに対応していきましょう。
監修

略歴
| 2017年 | 本田右志理事長より右脳記憶教育講座を指南、「JUNKK認定マスター講師」取得 |
|---|---|
| 2018年 | 幼児教室アップルキッズをリビングサロンとして開講 |
| 2020年 | 佐々木進学教室Tokiwaみらい内へ移転、「佐々木進学教室幼児部」として再スタート |
| 2025年 | 一般社団法人 日本右脳記憶教育協会(JUNKK)代表理事に就任 |



