イヤイヤ期がひどい時の乗り切り方!激しい癇癪の対処法について

イヤイヤ期

イヤイヤ期が想像以上にひどく、毎日が戦いのような状況に疲れ果てている親御さんは少なくありません。

1日に何度も激しい癇癪を起こし、どんな対応をしても収まらず、周囲からは「しつけができていない」と言われるような状況では、親自身も限界を感じてしまうものです。

しかし、イヤイヤ期がひどい場合でも、適切な理解と対処法があれば必ず乗り越えることができます。

この記事では、特に激しいイヤイヤ期を乗り切るための効果的な方法から、原因の理解、具体的な軽減策、専門家相談のタイミングまで詳しく解説します。

イヤイヤ期がひどい時の乗り切る効果的な方法

イヤイヤ期がひどい時は、冷静さを保ち段階的に対応することで、激しい時期も乗り越えることができます。

激しい癇癪への基本対応として最も重要なのは、親自身の安全と冷静さを確保することです。こどもが物を投げる、叩く、噛みつくといった激しい行動を取る場合は、まず自分とこどもの安全を最優先に考えます。危険な場所から離れる、周囲の危険物を除去する、必要に応じて距離を取るといった対応を冷静に行います。この時、感情的になって怒鳴ったり、力で押さえつけたりするのは逆効果です。深呼吸をして「これは一時的なもの」「必ず終わる」と心の中で唱えながら、落ち着いた態度を維持します。

安全確保と環境調整も重要なポイントです。激しい癇癪が起こりやすい環境を事前に整備し、怪我のリスクを最小限に抑えます。角の尖った家具にクッション材を付ける、割れやすいものは手の届かない場所に置く、床にカーペットやマットを敷いて転倒時の衝撃を和らげるといった物理的な安全対策を講じます。また、癇癪が起こった時に移動できる安全なスペース(リビングの一角、こども部屋など)を確保しておくことで、周囲への影響も最小限に抑えることができます。

親の感情管理テクニックも欠かせないスキルです。激しい癇癪を目の前にすると、親も感情的になりがちですが、大人が冷静さを失うとさらに状況が悪化してしまいます。「4-7-8呼吸法」(4秒で吸い、7秒止め、8秒で吐く)を実践する、心の中で10まで数える、「今だけ、ここだけ、この子だけ」と集中する対象を絞る、といった具体的な感情コントロール法を身につけておきます。また、事前に「今日も大変だろうけど、頑張ろう」という心の準備をしておくことで、実際に激しい癇癪が起こった時も動揺しにくくなります。

段階的な改善アプローチを取ることも重要です。いきなり完璧な対応を目指すのではなく、「今週は安全確保を最優先」「来週は癇癪の時間を短くすることを目標」「今月は予防策を強化」といった具合に、段階的な目標設定をします。また、癇癪の強度や頻度を記録し、少しずつでも改善していることを客観的に把握することで、希望を持って取り組み続けることができます。

タイムアウトの適切な活用も効果的な方法です。こどもが興奮状態にある時は、刺激の少ない静かな場所で気持ちを落ち着かせる時間を作ります。ただし、罰として隔離するのではなく、「気持ちを整理する時間」として捉え、親も一緒にその場にいて見守ることが大切です。「今はちょっと休憩しようね」「気持ちが落ち着いたら一緒に遊ぼう」といった声かけで、ポジティブな意味づけをします。

柔軟性を持った対応も必要です。教科書通りの方法が通用しない場合も多いため、そのこどもに合った独自の対応方法を見つけることが大切です。音楽を聞かせると落ち着く、特定のぬいぐるみを渡すと安心する、外の空気を吸わせると気分転換になる、といった個別の効果的な方法を見つけて活用します。

周囲のサポートを積極的に求めることも重要です。パートナー、両親、信頼できる友人、地域の子育て支援サービスなど、利用できるサポートは遠慮なく活用します。一人で抱え込むと親自身が疲弊し、適切な対応ができなくなってしまうため、「今日は限界だから助けてほしい」と素直に声を上げることも大切な判断です。

このように、安全確保・冷静な対応・感情管理・段階的改善・柔軟性・サポート活用を組み合わせることで、ひどいイヤイヤ期も効果的に乗り切ることができます。

しかし、なぜこんなにひどくなるのか、その背景を理解することも重要です。

なぜこんなにひどくなるのか?原因と背景

イヤイヤ期がひどくなるのは、脳の発達段階と個人の気質、環境要因が複合的に作用するためです。

脳の発達段階と感情爆発の関係が最も根本的な原因です。2〜3歳頃の脳では、感情を生み出す扁桃体は既に活発に働いているのに対し、感情をコントロールする前頭前野はまだ発達途中です。そのため、強い感情が湧き上がった時に、それを適切にコントロールすることができず、爆発的な癇癪として現れてしまいます。特に、感受性の強いこどもや、神経系が敏感なこどもは、小さな刺激でも強い感情反応を示しやすく、それが激しい癇癪につながります。また、言語能力がまだ十分でないため、複雑な気持ちを「いや」「だめ」以外の方法で表現できず、フラストレーションが蓄積して爆発することもあります。

個人の気質と環境要因も大きく影響します。生まれつき「反応の強さ」「活動レベル」「規則性」「適応性」といった気質特性が異なり、これがイヤイヤ期の現れ方に大きく影響します。例えば、反応が強く活動レベルの高い気質のこどもは、感情表現も激しくなりがちで、癇癪も大きくなる傾向があります。また、新しい環境への適応が苦手な気質の場合、変化に対してより強いストレス反応を示し、それがひどい癇癪として現れることがあります。環境面では、騒音、人混み、強い光、温度変化などの刺激が多い環境では、敏感なこどもほど疲労やストレスが蓄積しやすくなります。

ストレスや疲労の蓄積も激しさに拍車をかけます。睡眠不足、体調不良、生活リズムの乱れ、環境の変化(引っ越し、保育園入園、家族構成の変化など)があると、こどもの心身のバランスが崩れ、普段なら我慢できることでも激しい癇癪の引き金となってしまいます。また、親のストレスや不安もこどもに伝わりやすく、家庭内に緊張感があると、こども自身も不安定になり、癇癪がひどくなることがあります。さらに、過度な刺激(テレビの見すぎ、騒がしい環境、スケジュールの詰め込みすぎなど)も、神経系に負担をかけて癇癪を激化させる要因となります。

コミュニケーション能力の限界も重要な背景です。イヤイヤ期のこどもは、自分の気持ちや要求を言葉で正確に伝える能力がまだ発達途中です。「お腹が空いているけど、この食べ物は嫌」「眠いけど、まだ遊びたい」「不安だけど、甘えるのは恥ずかしい」といった複雑で矛盾した気持ちを抱えていても、それを適切に表現できません。この歯がゆさが蓄積し、「理解してもらえない」「伝わらない」という絶望感から、激しい癇癪として爆発してしまうのです。

発達の個人差も影響します。言語発達が早い子は比較的癇癪が軽く済むことが多い一方、言語発達がゆっくりな子は、気持ちを言葉で表現できない期間が長くなるため、癇癪に頼る傾向が強くなります。また、運動発達との関係もあり、体を動かすことでストレス発散ができる子は癇癪が軽くなりがちですが、運動が苦手だったり機会が少なかったりする子は、エネルギーが内向して激しい癇癪として現れることがあります。

親子の相性や関係性も要因の一つです。親の性格や対応スタイルと、こどもの気質との相性が合わない場合、お互いにストレスを感じやすくなり、それが癇癪の激化につながることがあります。例えば、せっかちな親と慎重な気質のこども、几帳面な親と自由奔放な気質のこどもといった組み合わせでは、日常的な摩擦が生じやすく、それが積み重なって激しい癇癪として現れることがあります。

医学的な要因が隠れている場合もあります。発達障害(ADHD、自閉スペクトラム症など)、感覚統合の問題、聴覚過敏、視覚過敏などがある場合、一般的な刺激でも過剰に反応してしまい、それが激しい癇癪として現れることがあります。また、アレルギーや食物不耐症により体調が優れない場合も、イライラしやすくなり癇癪が激化することがあります。

社会的なプレッシャーも間接的に影響します。「良い子に育てなければ」「周囲に迷惑をかけてはいけない」といった親のプレッシャーが、過度に厳しい対応や感情的な反応を生み出し、それがこどもの不安や反発を強めて、さらに激しい癇癪を引き起こすという悪循環に陥ることがあります。

このように、ひどいイヤイヤ期は脳の発達・気質・環境・ストレス・コミュニケーション能力・個人差・親子関係・医学的要因・社会的プレッシャーなど複数の要因が重なって起こる複雑な現象なのです。

こうした原因を踏まえて、激しい癇癪を軽減するための具体的な工夫が必要です。

激しい癇癪を軽減する具体的な工夫

激しい癇癪の軽減には、予防的な環境作りと適切な対応テクニック、事後のフォローを組み合わせることが効果的です。

予防的な環境作りが最も重要な工夫です。癇癪が起こりやすい状況やタイミングを事前に把握し、それを避けたり軽減したりする対策を講じます。例えば、疲れている時間帯(夕方、昼寝前など)には刺激の強い活動を避ける、人混みや騒がしい場所への外出は短時間にする、食事や睡眠の時間を一定に保って生活リズムを整える、といった配慮をします。また、こどもが安心できる「逃げ場所」を家の中に作っておくことも効果的です。クッションを置いた静かな一角、お気に入りのぬいぐるみがある場所など、気持ちが高ぶった時に自分から移動できる安全な空間を用意しておきます。

感覚的な配慮も重要な予防策です。音に敏感な子には騒音を軽減する、光に敏感な子には照明を調整する、触覚に敏感な子には肌触りの良い衣服を選ぶといった個別の配慮をします。また、感覚統合を促す活動(ブランコ、トランポリン、粘土遊び、水遊びなど)を日常に取り入れることで、感覚的なストレスを軽減し、癇癪の予防につながります。

癇癪中の対応テクニックも具体的に習得しておくことが大切です。激しい癇癪が始まったら、まず安全を確保した上で、こどもの視界に入る位置で静かに見守ります。この時、「大丈夫だよ」「お母さんはここにいるからね」といった安心の声かけは続けますが、説得や説教は避けます。癇癪がピークの時は、脳が興奮状態にあるため、論理的な話は全く聞こえていません。代わりに、深い声でゆっくりと話す、同じ言葉を繰り返す、体を優しく支えるといった非言語的なコミュニケーションを重視します。

気を逸らすテクニックも効果的です。ただし、タイミングが重要で、癇癪が少し落ち着いてきた時に実行します。窓の外の景色を一緒に見る、好きな音楽をかける、水を飲ませる、好きなおもちゃを見せるといった方法で、注意を別のことに向けることで、癇癪から抜け出すきっかけを作ります。また、「抱っこする?」「お水飲む?」といった簡単な選択肢を提示することで、こども自身にコントロール感を与えることも効果的です。

事後のフォローと関係修復も軽減には欠かせません。癇癪が収まった後は、まずこどもの気持ちを受け止めます。「大変だったね」「疲れちゃったね」といった共感の言葉をかけ、「でも落ち着けたね」「頑張ったね」と癇癪が終わったことを認めます。この時、癇癪の内容について詳しく話し合う必要はありませんが、「次回は違う方法で伝えてみようね」といった建設的な提案を簡潔に伝えることは効果的です。また、スキンシップ(抱っこ、手を握る、背中をさするなど)により、親子の絆を確認し、安心感を与えます。

日常生活での配慮点も重要です。癇癪を起こしやすいこどもには、余裕のあるスケジュールを組み、急かさないよう配慮します。また、成功体験を積み重ねることで自己肯定感を育て、癇癪以外の方法で気持ちを表現する自信をつけてもらいます。「今日は優しく『いや』って言えたね」「困った時に手を挙げて教えてくれたね」といった小さな成長を見つけて具体的に褒めることで、適切な感情表現を促進します。

親のセルフケアも癇癪軽減には欠かせません。親が疲労やストレスを抱えていると、こどもにも緊張感が伝わり、癇癪が起こりやすくなります。定期的な休息、趣味の時間、友人との会話、専門家への相談など、親自身のメンタルヘルスを保つことが、結果的にこどもの癇癪軽減にもつながります。

記録をつけることも効果的な工夫です。癇癪が起こった時間、場所、きっかけ、対応方法、収束までの時間などを記録することで、パターンを把握し、より効果的な予防策や対応策を見つけることができます。また、改善している部分を客観的に確認できるため、親の励みにもなります。

このように、予防的環境作り・感覚的配慮・癇癪中の適切な対応・事後フォロー・日常的配慮・親のセルフケア・記録による分析を組み合わせることで、激しい癇癪を段階的に軽減することができます。

しかし、これらの工夫を続けても改善が見られない場合は、長期的な視点での対応や専門家への相談も必要になります。

長期的な改善と専門家への相談タイミング

長期的な改善には、段階的な計画と家族全体のサポート体制を整え、適切なタイミングで専門家の助けを求めることが重要です。

段階的な改善計画を立てることが効果的なアプローチです。3ヶ月から6ヶ月程度の期間を設定し、具体的で達成可能な目標を段階的に設定します。例えば、「1ヶ月目:癇癪の安全確保と親の冷静な対応を確立」「2ヶ月目:癇癪の持続時間を平均で10分短縮」「3ヶ月目:癇癪の頻度を週に2回減少」といった具合に、測定可能な目標を設定します。また、改善が見られた場合の報酬システム(家族でのお出かけ、特別な時間など)も設定し、家族全員でモチベーションを保ちます。

家族全体でのサポート体制を整備することも重要です。パートナー、祖父母、兄弟姉妹など、関わる人全員が同じ理解と対応方針を共有することで、こどもにとって安定した環境を作ります。また、役割分担を明確にし、一人に負担が集中しないよう配慮します。例えば、平日はお母さんが主担当、週末はお父さんが主担当、緊急時は祖父母にサポートを依頼するといった体制を作ります。さらに、定期的な家族会議を開き、対応方法の見直しや情報共有を行います。

専門家相談の判断基準を明確にしておくことも大切です。以下のような状況が見られる場合は、専門家への相談を検討すべきタイミングです:癇癪が1日に5回以上、週に数日続く;癇癪が1時間以上続くことが頻繁にある;自分や他人を傷つける行動が見られる;日常生活(食事、睡眠、外出など)に大きな支障をきたしている;4歳を過ぎても激しい癇癪が続いている;親が精神的・身体的に限界を感じている;他の発達面でも気になることがある;保育園や幼稚園から相談を受けた。これらの状況が複数当てはまる場合や、3ヶ月以上改善が見られない場合は、早めに専門家に相談することを強く推奨します。

相談できる専門家の種類も把握しておくことが重要です。小児科医は身体的な要因の有無を確認し、必要に応じて他の専門家を紹介してくれます。臨床心理士や公認心理師は、行動療法や認知行動療法などの専門的なアプローチを提供します。作業療法士は感覚統合の問題がある場合に有効です。言語聴覚士は言語発達の遅れが癇癪の原因となっている場合に相談できます。保健師は地域の資源について情報提供してくれます。また、児童発達支援センターや療育センターでは、総合的な評価と支援を受けることができます。

将来への希望と見通しを持つことも長期的改善には不可欠です。ひどいイヤイヤ期は永続的なものではなく、適切な理解と対応があれば必ず改善します。多くの場合、4〜5歳頃には言語能力の向上とともに癇癪は大幅に減少し、より適切なコミュニケーション方法を身につけていきます。また、この困難な時期を乗り越えることで、親子の絆はより深くなり、こども自身も感情調整能力や問題解決能力が向上します。「今は大変だけれど、この経験が将来の成長につながる」という長期的な視点を持つことで、日々の困難にも希望を持って向き合うことができます。

環境の継続的な見直しも重要です。こどもの成長とともに、効果的だった方法が通用しなくなったり、新しい課題が生まれたりすることがあります。3〜6ヶ月ごとに対応方法を見直し、必要に応じて調整していくことで、常に最適なサポートを提供できます。

他の家族との情報共有も効果的です。同じような経験をした家族との交流を通じて、実践的なアドバイスを得たり、孤独感を軽減したりすることができます。地域の親の会、子育てサークル、オンラインコミュニティなどを活用し、支え合いのネットワークを築くことが重要です。

成功事例の蓄積も励みになります。小さな改善でも記録に残し、「以前はもっと大変だった」「少しずつだけど良くなっている」という実感を得ることで、継続的な取り組みのモチベーションを保つことができます。

教育機関との連携も重要な要素です。保育園や幼稚園の先生と情報共有し、家庭と園で一貫した対応を取ることで、こどもにとってより安定した環境を作ることができます。また、将来の小学校入学に向けて、集団生活でのサポート方法についても早めに相談しておくことが大切です。

このように、段階的計画・家族サポート・専門家連携・将来への希望・継続的見直し・情報共有・成功事例の蓄積・教育機関との連携を組み合わせることで、ひどいイヤイヤ期も長期的に改善し、こどもと家族の幸せな成長を実現することができるでしょう。

監修

代表理事
佐々木知香

略歴

2017年 本田右志理事長より右脳記憶教育講座を指南、「JUNKK認定マスター講師」取得
2018年 幼児教室アップルキッズをリビングサロンとして開講
2020年 佐々木進学教室Tokiwaみらい内へ移転、「佐々木進学教室幼児部」として再スタート
2025年 一般社団法人 日本右脳記憶教育協会(JUNKK)代表理事に就任
塾講師として中高生の学習指導に長年携わる中で、幼児期・小学校期の「学びの土台づくり」の重要性を痛感。
結婚を機に地方へ移住後、教育情報や環境の地域間格差を実感し、「地域に根差した実践の場をつくりたい」との想いから、幼児教室アップルキッズを開校。
発達障害や不登校の支援、放課後等デイサービスでの指導、子ども食堂での学習支援など、多様な子どもたちに寄り添う教育活動を展開中。