毎日続くこどものイヤイヤに、どう対応すればよいのか悩んでいる親御さんは多いのではないでしょうか。
適切な対応方法を知らないまま感情的になってしまったり、逆にすべてを受け入れてしまったりと、どちらが正解なのか分からずに困っている方もいらっしゃるでしょう。
イヤイヤ期には効果的な対応方法があり、適切な接し方を身につけることで親子双方のストレスを大幅に軽減できます。
この記事では、具体的な対応テクニックから避けるべき接し方まで、イヤイヤ期を上手に乗り切るための実践的な方法をお伝えします。
イヤイヤ期の正しい対応とは?基本的な接し方
イヤイヤ期の基本的な対応は、こどもの気持ちに共感し選択肢を提示しながら一貫した姿勢を保つことです。
まず最も重要なのは、こどもの気持ちに共感することです。「お風呂いや!」と言われた時に「そうだね、まだ遊びたかったね」「お風呂に入りたくない気持ち、分かるよ」と、まずはこどもの感情を受け止めてあげます。この共感の言葉があることで、こどもは「自分の気持ちを理解してもらえた」と安心し、次の話を聞く準備ができるのです。決して「わがまま言わないの!」「そんなこと言ったらダメ」といきなり否定してはいけません。
次に選択肢を提示することが効果的です。「アンパンマンのパジャマと、しまじろうのパジャマ、どちらを着る?」「歯磨きが先?お風呂が先?」といった具合に、こどもが自分で選べる選択肢を2~3個用意します。「やらない」という選択肢は含めず、「どの方法でやるか」を選ばせることがポイントです。自分で選んだという満足感により、素直に行動してくれることが多くなります。
時間に余裕を持った対応も大切です。急いでいる時ほどこどもはイヤイヤを始めるものですが、「あと5分で出かけるから急いで」と焦らせるのではなく、「ゆっくりで大丈夫だよ、一緒にやろうね」と声をかけながら手伝ってあげます。時には10分、15分かかることもありますが、親が焦る様子を見せると、こどもも不安になってさらにイヤイヤが激しくなってしまいます。
一貫した対応を保つことも重要な要素です。今日は疲れているからと要求を全て受け入れ、明日は厳しく叱るといった曖昧な対応では、こどもは混乱してしまいます。家族全員が同じルールで対応し、「お風呂の前におもちゃは片付ける」「食事中はテレビを見ない」といった約束事を一貫して守らせることで、こども自身も生活のルールを覚えていきます。
気を逸らす技術も覚えておくと便利です。「あ、窓の外に猫ちゃんがいるよ」「お母さんと競争してお風呂まで行こう!」「今日のお風呂には何の色のお湯を入れようか?」といった声かけで、こどもの注意を別のことに向けると、イヤイヤを忘れて楽しい気分に切り替わることがよくあります。
冷静さを保つことは何よりも大切です。こどもがどんなに激しく泣き叫んでも、親は落ち着いた声で対応することが必要です。親が感情的になると、こどもはさらに不安になり、イヤイヤがエスカレートしてしまいます。深呼吸をして「今は成長の大切な時期だ」と心の中で唱えながら、穏やかな気持ちで接するよう心がけましょう。
時には抱きしめることも効果的です。言葉で気持ちを表現しきれずにイヤイヤになっているこどもには、優しく抱きしめて「大丈夫だよ」「お母さんはあなたのことが大好きよ」と安心させてあげることで、気持ちが落ち着くことがあります。
このように、共感・選択肢・一貫性を基本とした対応を心がけることで、イヤイヤ期のこどもと上手にコミュニケーションを取ることができます。
しかし、実際の生活では様々な場面でイヤイヤが起こるため、場面別の対応方法も知っておくことが重要です。
場面別の効果的な対応テクニック
日常生活の様々な場面で起こるイヤイヤには、それぞれの状況に応じた効果的な対応テクニックがあります。
朝の着替え時のイヤイヤでは、前夜に一緒に服を選んでおくことが効果的です。「明日はどの服を着る?」と一緒に選び、枕元に準備しておくことで、朝のスムーズな着替えにつながります。それでも「この服いや!」と言い出した時は、「そうか、今日は気分じゃないんだね。じゃあ、青い服と赤い服どちらがいい?」と新たな選択肢を提示します。また、「お着替え競争しよう!お母さんと どっちが早いかな?」といったゲーム感覚にすることで、楽しく着替えができることも多いです。
食事時のイヤイヤには、無理強いをしないことが大切です。「これ食べたくない!」と言われた時は、「そうなんだね。じゃあ、まずはこっちから食べてみようか」と他の料理を勧めたり、「一口だけ食べてみる?」と量を減らして提案したりします。また、こどもが好きなキャラクターの食器を使ったり、「ニンジンさんがお口の中に入りたがってるよ」といったストーリー仕立てにしたりすることで、楽しい食事の時間にすることができます。
お風呂を嫌がる場合は、入浴前の準備から楽しくすることがポイントです。「今日のお風呂にはどのおもちゃを持って行く?」「お風呂のお湯の温度を一緒に確認してみよう」といった声かけで、お風呂への期待感を高めます。それでも「お風呂いや!」と言う時は、「分かった、じゃああと5分遊んでからお風呂に入ろうね」と時間を具体的に示したり、「お母さんと一緒に入ろう、一人で入るのは寂しいもんね」と寄り添う姿勢を見せたりします。
外出先でのイヤイヤは特に困りますが、事前の説明と準備が重要です。「今日はスーパーに行って、夜ご飯の材料を買いに行くよ。30分くらいで帰ってくるからね」と見通しを伝えておき、「お買い物が終わったら公園で遊ぼうね」といった楽しみも予告しておきます。それでも外出先で「帰りたくない!」となった時は、周囲の目を気にせず、まずはこどもを安全な場所に移動させて気持ちを受け止めることから始めます。
寝る時のイヤイヤには、就寝前のルーティンを確立することが効果的です。「お風呂→歯磨き→絵本→おやすみ」といった流れを決めて、毎日同じ順序で進めることで、こどもも次に何をするかが分かり、安心して眠りにつくことができます。「まだ寝たくない!」と言う時は、「そうだね、まだ遊びたいよね。でも体が疲れてるから休ませてあげようね。明日また楽しく遊ぼう」と説明し、「お気に入りのぬいぐるみと一緒に寝ようか」といった安心できる提案をします。
お買い物中の「あれ欲しい!これ欲しい!」というイヤイヤには、事前のルール決めが有効です。「今日は牛乳とパンを買いに来たから、お菓子は買わないよ。でも一緒にお手伝いしてくれる?」と役割を与えることで、買い物への参加意識を高めます。どうしても欲しがる時は、「今日は買わないけど、今度のお誕生日に買おうね」と将来の約束をしたり、「家に同じようなお菓子があったね」と代替案を示したりします。
公園から帰る時のイヤイヤには、予告と段階的な準備が大切です。「あと10分遊んだら帰るよ」「あと5分だよ」「最後に滑り台を1回滑ったら帰ろうね」といった具合に、段階的に帰る準備をさせます。また、「帰ったらおやつの時間だね」「お家でお気に入りの絵本を読もうか」といった帰宅後の楽しみも伝えておくと、切り替えがスムーズになります。
このように、各場面に応じた具体的な対応テクニックを使い分けることで、日常生活のイヤイヤを効果的に対処することができます。
しかし、対応方法には絶対に避けるべきものもあるため、注意が必要です。
イヤイヤ期対応でやってはいけないこと
イヤイヤ期の対応には、こどもの成長を阻害したり親子関係を悪化させたりする絶対にやってはいけない方法があります。
感情的になって怒鳴ることは最も避けるべき対応です。こどもがイヤイヤを始めると、親もイライラして「いい加減にしなさい!」「何回言ったら分かるの!」と大声で叱ってしまいがちですが、これはこどもをさらに不安にさせ、イヤイヤを激化させる原因となります。こどもは親の感情的な反応を見て「自分は悪い子なんだ」と思い込んでしまったり、大きな声を出せば要求が通ると学習してしまったりする危険性があります。どんなに疲れていても、深呼吸をして冷静さを保つことが重要です。
こどもの気持ちを無視や否定することも絶対にしてはいけません。「そんなのわがまま」「泣いても無駄よ」「お兄ちゃんなんだから我慢しなさい」といった言葉は、こどもの自尊心を傷つけ、感情を表現することへの恐怖心を植え付けてしまいます。イヤイヤは成長過程で必要な自己主張であり、まずはその気持ちを受け止めることから対応を始めるべきです。
すべての要求を受け入れてしまうことも問題です。「泣かれると困るから」「早く終わらせたいから」という理由で、こどもの言いなりになってしまうと、「泣けば何でも思い通りになる」と学習してしまいます。これは将来的にわがままな性格につながったり、社会でのルールを学ぶ機会を奪ったりしてしまう可能性があります。愛情と甘やかしは違うということを理解して対応することが大切です。
脅しや罰で抑え込もうとすることも避けるべきです。「言うことを聞かないと置いて行くよ」「そんな子は家から出て行きなさい」といった脅し文句や、「おもちゃを全部捨てるからね」「今日のおやつはなし」といった過度な罰は、こどもに恐怖心を与えるだけで根本的な解決にはなりません。むしろ、親への信頼関係を損ない、さらに問題行動が増えてしまう危険性があります。
他の子と比較することも絶対にやってはいけません。「○○ちゃんは良い子だけど、あなたは」「お兄ちゃんの時はこんなことなかったのに」といった比較は、こどもの自己肯定感を大きく傷つけてしまいます。それぞれのこどもには個性があり、発達のペースも違うということを理解し、その子なりの成長を認めてあげることが重要です。
長時間の説教や理屈で説得しようとすることも効果的ではありません。イヤイヤ期のこどもは感情が高ぶっている状態なので、長い説明や複雑な理屈は理解できません。「お風呂に入らないと汚いでしょ?汚いと病気になって…」といった長い説明よりも、「お風呂に入ってさっぱりしよう」「一緒に楽しく入ろう」といったシンプルで前向きな声かけの方が効果的です。
放置や無視をすることも問題です。「勝手に泣いていなさい」と放っておいたり、こどもの存在を無視したりすることは、見捨てられ不安を強めてしまいます。イヤイヤしているこどもは、実は親に気持ちを分かってもらいたくて必死にアピールしているのです。適切な距離を保ちながらも、見守っている姿勢を示すことが大切です。
兄弟姉妹の前で恥をかかせるような叱り方も避けるべきです。「お姉ちゃんの前で恥ずかしいでしょ」「弟はちゃんとできるのに」といった叱り方は、プライドを傷つけ、兄弟関係にも悪影響を与えてしまいます。
このように、感情的な対応・否定・甘やかし・比較などは絶対に避け、常にこどもの成長を支える姿勢を保つことが重要です。
しかし、正しい対応を理解していても、実践するのは簡単ではありません。
対応が難しい時の親のメンタル管理
イヤイヤ期の対応が難しく感じる時は、親自身のメンタル管理と周囲のサポートを活用することが重要です。
まず、自分の感情をコントロールする方法を身につけることが大切です。こどもがイヤイヤを始めた時に、まずは深呼吸を3回行い、心の中で「これは成長の証拠」「今は学習の時間」と唱えることで、冷静さを取り戻すことができます。また、イライラが頂点に達しそうになったら、「ちょっとトイレに行ってくるね」と一時的にその場を離れ、気持ちを整える時間を作ることも有効です。ほんの1〜2分でも、深呼吸をして気持ちをリセットすることで、穏やかな対応ができるようになります。
完璧な親でなくても良いという認識を持つことも重要です。「良い親なら感情的にならないはず」「他のお母さんはもっと上手にやっている」といった思い込みは、自分自身を追い詰めてしまいます。誰でもイライラすることはあり、時には失敗することもあるのが当然です。「今日は上手くいかなかったけど、明日また頑張ろう」という気持ちで、自分を責めすぎないことが大切です。
一人で抱え込まず、周囲のサポートを活用することも重要です。夫やパートナー、実家の両親、信頼できる友人などに、日頃の大変さを聞いてもらったり、時には預かってもらったりすることで、親自身の心の負担を軽減できます。「甘えているのでは」と遠慮せず、「今は助けが必要な時期」と割り切って、積極的にサポートを求めましょう。
地域の子育て支援サービスも積極的に利用しましょう。子育て支援センターでの相談、保育園の一時預かり、ファミリーサポートセンターでの預かりサービスなど、様々な支援が用意されています。月に1〜2回でも、こどもを預けて自分の時間を持つことで、精神的な余裕が生まれ、こどもに対してより穏やかに接することができるようになります。
ストレス発散方法を確立することも大切です。こどもが昼寝している間に好きな音楽を聴く、お風呂でアロマオイルを使ってリラックスする、週末に一人で散歩に出かけるなど、短時間でもできるストレス解消法を見つけておきましょう。また、同じようにイヤイヤ期を経験している親同士で集まって話をすることも、「自分だけじゃない」という安心感と励ましを得られます。
生活リズムを整えることも、親のメンタル管理には欠かせません。睡眠不足は判断力を鈍らせ、些細なことでもイライラしやすくなります。こどもと一緒に早寝早起きを心がけ、栄養バランスの良い食事を摂ることで、体調面からメンタルを支えることができます。
長期的な視点を持つことも重要です。「今は大変だけれど、この時期は必ず終わる」「今のイヤイヤも、将来振り返れば良い思い出になる」という気持ちを持つことで、日々の困難を乗り越える力になります。また、こどもの小さな成長や変化に目を向け、「昨日よりも上手に靴が履けるようになった」「泣いても以前より早く落ち着くようになった」といったポジティブな面を見つける習慣をつけることも大切です。
専門家に相談することも、時には必要です。あまりにもイヤイヤが激しく長期間続く場合や、親自身が精神的に追い詰められている場合は、小児科医や保健師、心理士などの専門家に相談することで、適切なアドバイスや支援を受けることができます。「相談するほどではない」と思わず、早めに専門家の意見を聞くことで、より良い解決策が見つかることもあります。
このように、親自身のメンタル管理を大切にし、一人で抱え込まずに様々なサポートを活用することで、イヤイヤ期の対応を継続することができるでしょう。
監修

略歴
2017年 | 本田右志理事長より右脳記憶教育講座を指南、「JUNKK認定マスター講師」取得 |
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2018年 | 幼児教室アップルキッズをリビングサロンとして開講 |
2020年 | 佐々木進学教室Tokiwaみらい内へ移転、「佐々木進学教室幼児部」として再スタート |
2025年 | 一般社団法人 日本右脳記憶教育協会(JUNKK)代表理事に就任 |