こどもの将来を考えたとき、非認知能力の伸ばし方について関心を持つ保護者が増えています。
学力だけでなく、やり抜く力や協調性といった目に見えない力が、人生の成功に大きく影響することが研究で明らかになってきました。
しかし、認知能力の育成とは異なり、日々の関わり方や環境づくりが鍵となります。
年齢に応じた適切なアプローチを知ることで、家庭でも無理なくこの力を育てることができます。
この記事では、0歳から学童期まで、それぞれの発達段階に合わせた非認知能力の伸ばし方を具体的にお伝えします。
非認知能力を効果的に伸ばすには?
非認知能力を伸ばすには、安心できる環境づくり、適度な挑戦機会の提供、そしてプロセスを認める関わり方という3つの基本原則を押さえることが重要です。
非認知能力とは、忍耐力、自制心、協調性、好奇心、やり抜く力など、テストでは測れない心の力のことを指します。これらの能力は一朝一夕には身につかず、日々の生活の中での経験の積み重ねによって育まれていきます。
第一の原則は、安全基地となる大人の存在です。こどもは安心感があってこそ、新しいことに挑戦したり失敗を恐れずに取り組んだりできます。保護者が温かく見守り、必要なときには支えとなることで、こどもは自信を持って世界を探索できるのです。この安心感が非認知能力の土台となります。
第二の原則は、適度な挑戦と失敗の経験を重ねることです。簡単すぎる課題では成長の機会が得られず、難しすぎる課題では挫折してしまいます。こどもの現在の能力より少しだけ高い目標に取り組む中で、試行錯誤しながら問題を解決していく経験が非認知能力を育てます。失敗は学びのチャンスであり、そこから立ち直る経験こそが忍耐力や粘り強さを培います。
第三の原則は、結果ではなくプロセスを認めることです。「できた・できない」だけでなく、「頑張った」「工夫した」「諦めなかった」といった過程に注目して声をかけることで、こどもは努力することの価値を学びます。この姿勢が、困難に立ち向かう力や粘り強さといった非認知能力の土台となります。
つまり、非認知能力を効果的に伸ばすためには、安心できる環境の中で適度な挑戦を重ね、その過程を認めていくという3つの原則が欠かせません。
これらの基本原則を踏まえて、0〜2歳の乳幼児期における具体的な実践方法を見ていきましょう。
【0〜2歳】乳幼児期の非認知能力の伸ばし方
0〜2歳の乳幼児期は、愛着形成を通じた応答的な関わりと、遊びを通じた感情体験の積み重ねによって非認知能力の基礎を築きます。
この時期のこどもは、まだ言葉で自分の気持ちを表現することが十分にできません。そのため、泣いたり笑ったり、身体全体で感情を表現します。保護者がこどもの発するサインに敏感に反応し、適切に応えることで、こどもの中に「自分は大切にされている」という感覚が育まれます。この感覚こそが、非認知能力の土台となる自己肯定感の源です。
愛着形成を基盤とした関わり方
愛着形成とは、特定の養育者との間に築かれる情緒的な絆のことです。この絆が安定していると、こどもは安心して周囲の世界を探索できるようになります。
具体的には、こどもが泣いたときにすぐに駆けつける、笑顔を見せたら笑顔で返す、話しかけたら優しく応答するといった、一貫性のある応答的な関わりが重要です。この繰り返しによって、こどもは「困ったときには助けてもらえる」という基本的信頼感を獲得します。この信頼感が、後の自己コントロール能力や共感性といった非認知能力の発達を支えます。
また、スキンシップも愛着形成には欠かせません。抱っこする、頬を寄せる、優しく撫でるといった身体的な触れ合いは、こどもに安心感を与え、情緒の安定につながります。この安定した情緒が、感情をコントロールする力の基盤となります。
遊びを通じた感情のコントロール
乳幼児期の遊びは、非認知能力を育てる格好の機会です。特に、いないいないばあのような繰り返し遊びは、期待と驚きの感情を体験させ、感情の調整力を育てます。
また、積み木を積んでは崩すという遊びを通じて、こどもは試行錯誤する経験を積みます。何度崩れても再び積み上げようとする姿勢は、忍耐力ややり抜く力の芽生えです。このとき、保護者が「もう一回やってみようね」「上手に積めたね」と声をかけることで、こどもの挑戦する意欲が高まります。
2歳に近づくと、こどもは「自分でやりたい」という欲求が強くなります。スプーンを使って食べる、靴を履こうとするなど、自分でできることが増えてきます。この時期は時間がかかっても見守り、できたときには具体的に褒めることが大切です。小さな成功体験の積み重ねが、自信と自己効力感を育てます。
このように、乳幼児期は愛着関係を基盤とした応答的な関わりと、日々の遊びを通じた感情体験によって、非認知能力の土台を形成する時期なのです。
乳幼児期に築かれた愛着と基本的信頼感を基盤として、3〜6歳の幼児期にはより社会性を伴う非認知能力が発達していきます。
【3〜6歳】幼児期の非認知能力の伸ばし方
幼児期は、ごっこ遊びを中心とした遊びの中で社会性や自制心を育て、失敗体験を通じて問題解決能力を伸ばす時期です。
3歳を過ぎると、こどもは他者の存在を意識し始め、友だちと一緒に遊ぶことに興味を持つようになります。この時期の遊びは、非認知能力を伸ばす最高の学びの場となります。特にごっこ遊びは、想像力だけでなく、協調性や感情のコントロール、問題解決能力など、多様な非認知能力を育てます。
ごっこ遊びで育む社会性と自制心
ごっこ遊びでは、こどもは様々な役割を演じます。お母さん役になったり、お店屋さんになったり、医者になったりすることで、他者の視点に立って考える力が育ちます。これは共感性や協調性といった社会性の基礎となります。
また、ごっこ遊びでは一定のルールに従う必要があります。「お客さん役の人は順番を待つ」「お店屋さん役の人は商品を渡す」といった役割に応じた行動をとることで、自分の衝動を抑えて状況に応じた行動をとる自制心が育ちます。
保護者や他のこどもと一緒にごっこ遊びをする際は、こどもの想像力を尊重しながら、時には新しいアイデアを提案してみましょう。「お客さんが困っているみたいだけど、どうする?」といった問いかけは、こどもに考えさせ、問題解決能力を育てる機会となります。
失敗体験から学ぶ力の育て方
幼児期には、挑戦と失敗を繰り返す経験が非常に重要です。パズルがうまく完成しない、絵がうまく描けない、跳び箱が跳べないなど、様々な「できない」経験をします。
このとき、保護者の関わり方が非認知能力の発達を大きく左右します。すぐに手を貸すのではなく、「どうしたらいいと思う?」と考えるきっかけを与えたり、「難しいね、でもあきらめないで頑張ってるね」とプロセスを認めたりすることが大切です。
また、失敗したときこそ学びのチャンスです。「うまくいかなかったね。何が原因だったかな?」「次はどうしてみる?」といった問いかけを通じて、失敗を分析し、次の行動を考える習慣を育てます。この経験が、困難に直面したときに諦めずに工夫する力、いわゆるレジリエンスを育てます。
さらに、この時期には「待つ」「順番を守る」といった自己コントロールも少しずつできるようになります。マシュマロテストで知られるように、目の前の欲求を我慢する力は、将来の成功と関連があることが研究で示されています。日常生活の中で、「おやつは夕飯の後ね」「もう少し待ってね」といった小さな我慢の経験を重ねることが、自制心を育てます。
幼児期は、遊びという楽しい活動の中で社会性や自制心を育て、失敗を通じて問題解決能力を伸ばすことができる重要な時期です。
幼児期に培った社会性や自制心は、7歳以降の学童期においてより高度な形で発揮されるようになります。
【7歳以降】学童期の非認知能力の伸ばし方
学童期は、学校生活や習い事を通じて自己管理能力を育て、複雑な人間関係の中で協調性や問題解決能力を高める時期です。
小学校に入学すると、こどもは家庭とは異なる社会的なルールや期待に直面します。宿題を期限までに終わらせる、係活動に責任を持つ、チームで協力して何かを成し遂げるなど、より高度な自己管理能力や協調性が求められるようになります。
この時期の非認知能力の伸ばし方として効果的なのは、こども自身に目標を設定させ、それに向けて計画を立てて実行する経験を積ませることです。例えば、「夏休みの宿題をいつまでにどのように終わらせるか」を自分で考えさせ、実行させます。うまくいかなかったときには、一緒に振り返り、次はどうするかを考える時間を持つことで、計画性や自己調整能力が育ちます。
習い事も非認知能力を伸ばす良い機会です。スポーツや音楽、芸術活動などを通じて、努力すること、失敗を乗り越えること、仲間と協力することを学びます。ただし、習い事を選ぶ際には、こども本人の興味や関心を尊重することが重要です。強制的に続けさせても、非認知能力は育ちません。むしろ、自分で選んだことに対して責任を持ち、困難があっても続けようとする姿勢が、やり抜く力を育てます。
また、学童期には友人関係が複雑になり、時にはトラブルも起こります。喧嘩をしたり、仲間外れにされたり、意見が合わなかったりといった経験は、辛いものですが、社会性を育てる重要な機会でもあります。保護者はすぐに介入するのではなく、こどもの話をよく聞き、自分で解決策を考えられるようサポートすることが大切です。「どうしたらいいと思う?」「相手はどう思っているかな?」といった問いかけを通じて、問題解決能力や他者理解力を育てます。
さらに、家庭での役割や責任を持たせることも効果的です。洗濯物をたたむ、食器を片付ける、下の兄弟の世話を手伝うなど、家族の一員としての役割を果たす経験は、責任感や自己効力感を育てます。
学童期は、学校や習い事という社会の中で自己管理能力を高め、複雑な対人関係を通じて協調性や問題解決能力を発達させる時期なのです。
学童期の発達を支えるためには、日々の生活を送る家庭環境が重要な役割を果たします。
非認知能力を伸ばす家庭環境のつくり方
非認知能力を伸ばす家庭環境とは、失敗を恐れず挑戦できる雰囲気があり、努力やプロセスを認める声かけがあり、家族のコミュニケーションが豊かな環境のことです。
家庭環境とは、物理的な環境だけでなく、家族の関わり方やコミュニケーションのあり方、価値観なども含まれます。非認知能力の発達を支える家庭環境には、いくつかの共通する特徴があります。
まず、失敗を恐れずに挑戦できる雰囲気づくりが重要です。「失敗しても大丈夫」「やってみることに価値がある」というメッセージを、日々の言葉がけや態度で伝えていきます。こどもが新しいことに挑戦しようとしたとき、「無理じゃない?」「やめておいたら?」ではなく、「やってみたいんだね」「どうやってやるの?」と興味を示すことで、こどもの挑戦意欲を支えます。
次に、こどもの努力やプロセスを認める声かけを心がけましょう。テストの点数や結果だけでなく、「毎日コツコツ勉強したね」「難しい問題に挑戦したね」「工夫して考えたね」といった過程に注目します。結果が出なかったときも、「残念だったね。でも頑張ってたよね」と努力を認めることで、こどもは結果に関わらず努力することの価値を学びます。
また、家族でのコミュニケーションの時間を大切にすることも重要です。食事の時間に今日あった出来事を話し合ったり、週末に一緒に過ごす時間を作ったりすることで、こどもは自分の考えや感情を言葉にする練習ができます。また、保護者の話を聞くことで、大人がどのように問題に対処しているか、困難にどう向き合っているかを学ぶこともできます。
さらに、家庭内でのルールや約束を一緒に決め、守る経験も非認知能力を育てます。「ゲームは1日30分まで」「宿題が終わってから遊ぶ」といったルールを、こどもと話し合って決めることで、自己管理能力や責任感が育ちます。
保護者自身が非認知能力を大切にする姿勢を見せることも効果的です。新しいことに挑戦する姿、失敗しても諦めない姿、他者と協力する姿を見せることで、こどもは自然とその価値観を吸収していきます。
つまり、挑戦を応援し、プロセスを認め、豊かなコミュニケーションがある家庭環境こそが、非認知能力を伸ばす最良の場となるのです。
このように、非認知能力を伸ばすには、年齢に応じた適切な関わり方と、こどもが安心して挑戦できる環境づくりが鍵となります。認知能力と違い、非認知能力は日々の生活の中での経験の積み重ねによって育まれます。
焦らず、こどものペースを尊重しながら、長い目で見守っていくことが大切です。結果だけでなくプロセスを認め、失敗を学びの機会と捉える家庭環境の中で、こどもは自己肯定感を持ち、困難に立ち向かう力を身につけていきます。
監修

略歴
| 2017年 | 本田右志理事長より右脳記憶教育講座を指南、「JUNKK認定マスター講師」取得 |
|---|---|
| 2018年 | 幼児教室アップルキッズをリビングサロンとして開講 |
| 2020年 | 佐々木進学教室Tokiwaみらい内へ移転、「佐々木進学教室幼児部」として再スタート |
| 2025年 | 一般社団法人 日本右脳記憶教育協会(JUNKK)代表理事に就任 |



