非認知能力を育てる習い事の選び方は?効果的な7つをご紹介!

非認知能力

こどもの習い事を選ぶとき、非認知能力を育てることを意識している保護者が増えています。

ピアノやサッカー、絵画教室など、様々なものがありますが、どれが効果的なのか迷うこともあるでしょう。

実は、種類よりも、それ通じてどんな経験ができるかが、重要なポイントになります。

やり抜く力、協調性、自己管理能力といった目に見えない力は、適切な習い事を通じて効果的に伸ばすことができます。

この記事では、非認知能力を育てる習い事の選び方と、具体的にどのような習い事が効果的なのかを詳しく解説します。

非認知能力を育てる習い事の条件とは?

非認知能力を育てる習い事には、挑戦と達成の経験ができること、他者との関わりがあること、そして継続的な努力が必要であることという3つの共通条件があります。

習い事を選ぶとき、多くの保護者は「将来役に立つスキルが身につくか」「受験に有利か」といった観点で判断しがちです。もちろん、これらも大切な視点ですが、非認知能力を育てるという観点で見ると、別の基準が重要になってきます。どのような習い事が非認知能力の発達に効果的なのか、その条件を理解しておくことが、最適な選択につながります。

第一の条件は、挑戦と達成の経験ができることです。非認知能力は、「できなかったことができるようになる」という経験を通じて育ちます。習い事の中で、少し難しい目標に挑戦し、試行錯誤しながら徐々に上達していくプロセスが、やり抜く力や忍耐力を育てます。逆に、簡単すぎて挑戦がない習い事や、すぐに結果が出てしまう習い事では、非認知能力は十分に育ちません。適度な難易度があり、段階的に目標を達成できる習い事が理想的です。

第二の条件は、他者との関わりがあることです。非認知能力の多くは、人との関係性の中で育まれます。チームで協力する、お互いに教え合う、他者の演奏や作品から刺激を受ける、競い合いながら高め合うといった経験が、協調性や共感性、コミュニケーション能力を育てます。一人で黙々と取り組むだけの習い事よりも、他のこどもや指導者との交流がある習い事の方が、社会性を伴う非認知能力を育てやすいと言えます。

第三の条件は、継続的な努力が必要であることです。非認知能力は短期間では身につきません。週に一度でも、数ヶ月、数年と続けることで、コツコツ努力する習慣や、困難に直面しても諦めない粘り強さが育ちます。また、長く続ける中で、スランプを経験したり、モチベーションが下がったりすることもあります。それでも続けることで、自己管理能力やレジリエンスといった非認知能力が鍛えられます。

つまり、非認知能力を育てる習い事とは、適度な挑戦があり、人との関わりの中で学び、継続的な努力を要するものなのです。

では、具体的にどのような習い事が非認知能力を育てるのか、まずスポーツ系の習い事から見ていきましょう。

【スポーツ系】非認知能力を育てる習い事

スポーツ系の習い事は、身体を動かしながら協調性、やり抜く力、自己管理能力を総合的に育てることができます。

運動が得意かどうかに関わらず、スポーツ系の習い事は非認知能力を育てる上で非常に効果的です。身体を使った活動は、脳の発達にも良い影響を与えることが研究で示されています。また、スポーツ特有の「できなかったことができるようになる」という明確な成長実感が、自己効力感を高めます。さらに、勝敗や記録という分かりやすい目標があることで、努力の方向性を定めやすいという利点もあります。

チームスポーツで協調性とやり抜く力を育てる

サッカー、野球、バスケットボール、バレーボールといったチームスポーツは、協調性を育てる最適な習い事です。チームスポーツでは、自分だけでなく仲間のことも考えながらプレーする必要があります。パスを回す、役割分担をする、チームの勝利のために自分のポジションで最善を尽くすといった経験が、協調性や責任感を育てます。

また、試合に負けたり、思うようなプレーができなかったりする挫折経験も、チームスポーツの重要な学びです。仲間と共に悔しさを味わい、次はどうすればいいか話し合い、また練習に励むというサイクルが、レジリエンスとやり抜く力を育てます。チームメイトと励まし合い、支え合う経験は、人間関係を築く力や共感性も養います。

さらに、チームスポーツでは自分の感情をコントロールすることも求められます。思い通りにいかないときにイライラしたり、審判の判定に不満を持ったりすることもありますが、それを表に出さず、冷静にプレーを続ける自制心が必要です。この感情調整能力は、社会生活の様々な場面で役立ちます。

個人スポーツで自己管理能力を高める

水泳、体操、テニス、陸上、武道といった個人スポーツは、自己管理能力を育てるのに適しています。個人スポーツでは、自分自身と向き合い、自分の記録や技術を高めることが目標となります。他人と比較するのではなく、昨日の自分を超えることを目指す姿勢が、内発的な動機づけを育てます。

水泳は特に忍耐力を育てる習い事として知られています。泳ぎは地道な練習の積み重ねが必要で、一朝一夕には上達しません。何度も何度も同じ動作を繰り返し、少しずつフォームを改善していく過程で、コツコツ努力する習慣が身につきます。また、自己ベストを更新したときの達成感は、自己効力感を大きく高めます。

武道(柔道、剣道、空手など)は、礼儀や精神性も重視する点で、非認知能力を総合的に育てます。稽古の始まりと終わりの礼、目上の人への敬意、道場での行動規範といったことを通じて、自己規律や社会性が育まれます。また、試合で負けても相手を尊重し、自分の未熟さを認めて次の稽古に励む姿勢が、謙虚さや向上心を養います。

体操やダンスは、身体の柔軟性だけでなく、心の柔軟性も育てます。新しい技に挑戦し、失敗を繰り返しながら徐々に習得していく過程は、まさに非認知能力を鍛える経験です。また、発表会や競技会で人前で演技をする経験は、緊張をコントロールする力や、失敗を恐れずに挑戦する勇気を育てます。

このように、スポーツ系の習い事は、チームスポーツであれ個人スポーツであれ、身体を動かしながら協調性、やり抜く力、自己管理能力を総合的に伸ばせるのです。

スポーツ以外にも、非認知能力を育てる効果的な習い事があります。次は芸術系の習い事について見ていきましょう。

【芸術系】非認知能力を育てる習い事

芸術系の習い事は、創造性や表現力を育てながら、忍耐力、集中力、自己肯定感といった非認知能力を総合的に高めます。

音楽や美術といった芸術系の習い事は、一見すると感性や才能が重視されるように思えますが、実は非認知能力を育てる上で非常に効果的です。芸術活動には正解がなく、自分なりの表現を追求する過程で、試行錯誤する力や粘り強さが育ちます。また、作品を作り上げたり、演奏を完成させたりする達成感が、自己効力感を高めます。さらに、芸術を通じて感情を表現することは、情緒の安定や自己理解にもつながります。

音楽で忍耐力と表現力を育てる

ピアノ、バイオリン、ギターといった楽器の習い事は、忍耐力を育てる代表的な習い事です。楽器の上達には地道な練習が不可欠で、毎日コツコツと練習を積み重ねることで初めて上達します。この継続的な努力の経験が、やり抜く力を育てます。

特にピアノは、右手と左手で別々の動きをする、楽譜を読みながら演奏する、強弱やテンポをコントロールするなど、高度な集中力と協調性(この場合は脳と身体の協調)が求められます。最初はうまくできなくても、練習を重ねることで徐々にできるようになる過程が、自己効力感を育てます。また、発表会で人前で演奏する経験は、緊張に打ち克つ力や、失敗を恐れずに挑戦する勇気を養います。

合唱や吹奏楽といった集団での音楽活動は、協調性を育てます。他の人の音を聴きながら自分のパートを演奏する、ハーモニーを作り上げる、指揮者の指示に従うといった経験を通じて、他者と協力する力や、全体の中での自分の役割を理解する力が育ちます。一人では出せない音楽を仲間と一緒に作り上げる喜びは、協働することの価値を実感させてくれます。

また、音楽は感情を表現する手段でもあります。楽しい曲、悲しい曲、力強い曲など、様々な曲を演奏することで、自分の感情を音楽で表現する力が育ちます。この表現力は、言葉以外のコミュニケーション能力として、人生の様々な場面で役立ちます。

美術や工作で創造性と集中力を養う

絵画、工作、陶芸、書道といった美術系の習い事は、創造性を育てます。何もないところから自分のイメージを形にする経験は、想像力と問題解決能力を養います。「どうすれば思い通りの色が出せるか」「この材料をどう使えば表現できるか」といった試行錯誤の過程が、柔軟な思考力を育てます。

絵画教室では、一つの作品を完成させるまでに時間がかかります。下書きをし、色を重ね、細部を描き込んでいく過程で、集中力と忍耐力が育ちます。すぐに結果が出ないことに耐え、最後まで丁寧に仕上げる経験は、粘り強さを養います。

また、美術活動は正解がないため、自分なりの表現を認められる経験ができます。「上手・下手」ではなく、「自分らしい表現ができているか」が評価される環境は、自己肯定感を育てます。他の人の作品を見て刺激を受けたり、自分の作品を見てもらって感想をもらったりする経験は、多様性を認める心や、フィードバックを受け入れる柔軟性も育てます。

書道は、集中力と自己規律を育てるのに適しています。静かな環境で筆を持ち、一画一画丁寧に書く経験は、心を落ち着かせ、集中する訓練になります。また、お手本を見ながら繰り返し練習することで、観察力や粘り強さが育ちます。失敗しても、また新しい紙に向かって書き直す経験は、失敗を恐れない心を養います。

このように、芸術系の習い事は、創造性や表現力を育てながら、同時に忍耐力、集中力、自己肯定感といった多様な非認知能力を伸ばすことができるのです。

スポーツや芸術以外にも、非認知能力を育てる習い事があります。次にその他の効果的な習い事を紹介しましょう。

【その他】非認知能力を育てる習い事

思考力を養う習い事や自然体験活動も、問題解決能力、創造性、協調性といった非認知能力を効果的に育てます。

スポーツや芸術以外にも、近年注目されている習い事があります。特に、論理的思考力を育てる習い事や、自然の中での体験活動は、従来の習い事とは異なるアプローチで非認知能力を育てます。これらは比較的新しいジャンルの習い事ですが、変化の激しい現代社会で求められる力を育てる上で、非常に効果的です。

プログラミング教室は、問題解決能力と論理的思考力を育てます。プログラムを作る過程では、「どうすれば目的の動きをさせられるか」を考え、試行錯誤しながら正解を見つけていきます。エラーが出たときに原因を探り、修正するというデバッグの経験は、失敗から学ぶ力や粘り強さを育てます。また、自分の作品が動いたときの達成感は、自己効力感を高めます。さらに、チームでプログラムを作る活動では、役割分担や協力が必要となり、協調性も育ちます。

将棋や囲碁といった伝統的なボードゲームも、非認知能力を育てる習い事として見直されています。将棋では、数手先を読む力、相手の立場に立って考える力、負けたときに原因を分析する力が育ちます。また、礼儀作法も重視されるため、社会性も養われます。長い対局の中で集中力を保つ訓練にもなり、自制心が鍛えられます。負けることも多い習い事ですが、そこから学び、次に生かす経験が、レジリエンスを育てます。

英会話教室は、コミュニケーション能力を育てます。言語学習そのものは認知能力ですが、英語を使って他者と交流する経験は、社会性や自信を育てます。間違いを恐れずに話してみる勇気、相手の言葉を理解しようとする姿勢、通じたときの喜びといった経験が、コミュニケーションへの積極性を高めます。

自然体験活動や野外活動(キャンプ、登山、農業体験など)は、近年注目されている非認知能力育成の場です。自然の中での活動は予測不可能な要素が多く、臨機応変に対応する力が育ちます。テントを張る、火をおこす、野菜を育てるといった活動は、試行錯誤しながら課題を解決する経験となります。また、仲間と協力して活動する中で、協調性やリーダーシップが育ちます。自然の中で過ごす経験は、忍耐力や自己管理能力も養います。

演劇やミュージカルの習い事は、表現力と協調性を総合的に育てます。台本を覚え、役になりきり、他の出演者と息を合わせて舞台を作り上げる過程は、記憶力、共感性、協調性、自己表現力など、多様な能力を必要とします。人前で演じる経験は、自信を育て、緊張に対処する力も養います。

このように、思考力を養う習い事や体験活動も、それぞれ異なる側面から非認知能力を効果的に伸ばすことができるのです。

習い事の種類を理解したところで、実際に非認知能力を伸ばすために保護者が気をつけるべきポイントを見ていきましょう。

習い事で非認知能力を伸ばすために保護者が気をつけること

習い事を通じて非認知能力を伸ばすには、こどもの意思を尊重し、結果よりもプロセスを認め、適度な距離感で見守ることが重要です。

どんなに優れた習い事を選んでも、保護者の関わり方次第で、非認知能力が育つかどうかが大きく変わります。むしろ、習い事の種類よりも、その習い事にどう取り組むか、保護者がどう関わるかの方が重要だと言えるかもしれません。非認知能力を育てるためには、保護者がいくつかのポイントを意識することが必要です。

最も重要なのは、こども自身の意思を尊重することです。保護者が「この習い事をさせたい」と思って始めても、こども本人が興味を持っていなければ、非認知能力は育ちません。やらされている感覚では、主体性や内発的動機づけは生まれません。習い事を選ぶときは、こどもと一緒に体験レッスンに行き、「やってみたい」という気持ちを確認することが大切です。また、始めてから「やっぱり違った」と感じることもあります。そのときは、「なぜ続けたくないのか」を対話し、場合によっては辞める選択も尊重しましょう。

次に大切なのは、結果よりもプロセスを認めることです。試合に勝ったか負けたか、発表会で上手にできたかどうかだけに注目するのではなく、「毎日練習を頑張ったね」「難しい技に挑戦したね」「失敗しても諦めなかったね」といった過程を認める声かけをしましょう。結果だけを評価すると、こどもは失敗を恐れて挑戦しなくなったり、結果が出ないと自信を失ったりします。プロセスを認めることで、努力することの価値を学び、失敗を恐れずに挑戦する姿勢が育ちます。

また、過度な期待やプレッシャーをかけないことも重要です。「もっと上手になってほしい」「レギュラーになってほしい」という保護者の期待は、こどもにとって重荷になることがあります。習い事の目的が、非認知能力を育てることであれば、上達のスピードや他の子との比較は二の次です。こども自身が楽しみながら、自分のペースで成長していくことを見守る姿勢が大切です。

さらに、習い事の数や頻度にも配慮が必要です。たくさんの習い事をさせれば良いというものではありません。習い事で毎日が埋まってしまうと、自由に遊ぶ時間や家族と過ごす時間がなくなり、かえってストレスになります。非認知能力は習い事だけで育つものではなく、日常生活の中での経験も重要です。習い事は週に1〜2回程度に留め、こどもが消化できる範囲にすることが望ましいでしょう。

継続することの大切さを伝えることも重要ですが、それは強制とは異なります。「少し嫌なことがあったから」「今日は気分が乗らないから」という理由ですぐに辞めてしまうのは避けたいですが、本当に合わない、興味を失った、他にやりたいことができたといった場合は、対話の上で方向転換することも必要です。大切なのは、一定期間は続けてみる経験と、自分で決めたことに責任を持つ姿勢を育てることです。

このように、習い事で非認知能力を伸ばすには、こどもの主体性を尊重し、プロセスを認め、適度な距離感で温かく見守る保護者の姿勢が不可欠なのです。

非認知能力を育てる習い事には様々な種類がありますが、共通するのは挑戦の経験、他者との関わり、継続的な努力という3つの条件です。スポーツ系の習い事は協調性ややり抜く力を、芸術系の習い事は創造性や表現力を、思考系や体験活動は問題解決能力を育てます。

ただし、どんなに良い習い事を選んでも、こどもの意思を尊重し、プロセスを認める保護者の関わり方がなければ、非認知能力は十分に育ちません。習い事は非認知能力を育てる一つの手段であり、それ自体が目的ではないことを忘れずに、こどもが楽しみながら成長できる環境を整えることが大切です。

監修

代表理事
佐々木知香

略歴

2017年 本田右志理事長より右脳記憶教育講座を指南、「JUNKK認定マスター講師」取得
2018年 幼児教室アップルキッズをリビングサロンとして開講
2020年 佐々木進学教室Tokiwaみらい内へ移転、「佐々木進学教室幼児部」として再スタート
2025年 一般社団法人 日本右脳記憶教育協会(JUNKK)代表理事に就任
塾講師として中高生の学習指導に長年携わる中で、幼児期・小学校期の「学びの土台づくり」の重要性を痛感。
結婚を機に地方へ移住後、教育情報や環境の地域間格差を実感し、「地域に根差した実践の場をつくりたい」との想いから、幼児教室アップルキッズを開校。
発達障害や不登校の支援、放課後等デイサービスでの指導、子ども食堂での学習支援など、多様な子どもたちに寄り添う教育活動を展開中。