非認知能力と年収の関係は?将来の収入を左右する力について!

非認知能力

非認知能力が年収に影響するという研究結果が、近年注目を集めています。

学歴や知能だけでなく、やり抜く力や自制心といった心の力が、将来の経済的成功を左右することが分かってきました。

幼少期に育まれた非認知能力が、数十年後の年収にまで影響を与えるという事実は、子育ての重要性を改めて示しています。

では、なぜこれらの能力が収入に関係するのでしょうか。

この記事では、研究データをもとに両者の関係を解説し、こどもの将来のために今できることを紹介します。

非認知能力が年収に影響する理由とは?

非認知能力が年収に影響する理由は、やり抜く力が仕事の成果を高め、自制心が長期的なキャリア形成を可能にし、協調性が職場での信頼と昇進につながるからです。

学歴や知能が高ければ年収も高くなると考えられがちですが、実際にはそれだけでは説明できない部分が多くあります。同じ学歴でも年収に大きな差が出るのはなぜでしょうか。その答えの一つが、非認知能力です。

やり抜く力は、仕事の成果に直結します。困難なプロジェクトでも諦めずに取り組む、失敗しても改善して再挑戦する、長期的な目標に向けて努力を続けるといった姿勢は、職場で高く評価されます。すぐに結果が出なくても粘り強く取り組める人は、最終的に大きな成果を上げ、それが昇進や昇給につながります。

自制心は、キャリア形成において重要な役割を果たします。目の前の誘惑に負けず、将来のために今努力できる人は、スキルアップのための勉強、資格取得、計画的な貯蓄や投資ができます。また、職場でも感情的にならず、冷静に判断できるため、重要な仕事を任されやすくなります。

協調性は、チームでの成果と昇進に関わります。多くの仕事はチームで行われます。他者と協力できる、コミュニケーションがうまい、対立を解決できるといった能力は、チーム全体の成果を高めます。また、上司や同僚からの信頼を得やすく、リーダーシップを発揮する機会も増えます。

問題解決能力は、職場での価値を高めます。予想外の問題に直面したとき、柔軟に対応できる人は重宝されます。創造的な解決策を考え出し、実行できる人は、組織にとって不可欠な存在となり、それに見合った報酬を得られます。

レジリエンスは、長期的なキャリアを支えます。仕事には必ず挫折があります。プロジェクトの失敗、昇進の見送り、人間関係のトラブルなど、様々な困難に直面します。そこから立ち直り、学びを得て成長できる人は、長期的にキャリアを築けます。

また、非認知能力は転職や起業にも影響します。新しい環境に適応する力、リスクを取って挑戦する力、失敗から学ぶ力は、キャリアの転換点で重要です。非認知能力が高い人は、より良い機会をつかみ、年収を上げていく傾向があります。

このように、非認知能力は仕事の成果、昇進、キャリア形成を通じて年収に影響を与えるのです。

では、この関係を示す具体的な研究結果を見ていきましょう。

非認知能力と年収の関係を示す研究

非認知能力と年収の関係を示す研究として、ペリー就学前計画では40歳時点で年収が高く、ダニーデン研究では自制心が32歳時点の経済状況を予測し、グリット研究では学歴をコントロールしても収入との相関が見られました。

非認知能力と年収の関係は、複数の大規模な縦断研究によって科学的に証明されています。主要な研究結果を見ていきましょう。

最も有名なのは、ペリー就学前計画です。1960年代にアメリカのミシガン州で行われたこの研究では、低所得家庭の3〜4歳児に質の高い幼児教育を提供し、その後40年以上にわたって追跡調査を行いました。この教育プログラムは、認知能力よりも非認知能力の育成に重点を置いていました。

結果は驚くべきものでした。プログラムを受けた子どもたちは、40歳時点で、受けなかった子どもたちと比べて、年収が有意に高かったのです。月収2000ドル以上の人の割合は、プログラム参加者で29%、非参加者で7%でした。また、持ち家率も高く、生活保護受給率は低くなっていました。

この研究を分析したノーベル経済学賞受賞者のジェームズ・ヘックマン教授は、プログラムの効果は主にIQの向上ではなく、非認知能力の向上によるものだと結論づけました。やり抜く力、自制心、社会性といった能力が、長期的な経済的成功をもたらしたのです。

ニュージーランドで行われたダニーデン研究も重要な知見を提供しています。1000人以上の子どもを出生から40年近く追跡したこの研究では、3歳から11歳の間に測定された自制心が、32歳時点の経済状況を予測することが分かりました。

具体的には、子ども時代に自制心が低かった人は、大人になってから、収入が低く、貯蓄が少なく、クレジット問題を抱えやすく、経済的に困難な状況に陥りやすいという結果でした。この関係は、知能や社会経済的背景を統計的にコントロールしても維持されました。

アンジェラ・ダックワース博士のグリット研究も注目に値します。グリット(やり抜く力)と収入の関係を調べた研究では、グリットが高い人ほど収入が高い傾向が見られました。この関係は、教育年数をコントロールしても維持されました。つまり、同じ学歴でも、グリットが高い人の方が年収が高いのです。

イギリスの大規模調査でも、非認知能力と収入の関係が示されています。自己効力感、内的統制(自分の人生は自分でコントロールできるという信念)が高い人は、そうでない人と比べて、収入が高いことが分かりました。

また、企業の採用や評価においても、非認知能力が重視されるようになっています。Googleなどの大企業では、採用基準として知能や学歴だけでなく、リーダーシップ、協調性、問題解決能力といった非認知能力を重視しています。

このように、複数の大規模研究が、非認知能力と年収の間に明確な関係があることを示しているのです。

研究結果を理解した上で、幼少期の非認知能力がなぜ将来の年収に影響するのか、そのメカニズムを見ていきましょう。

幼少期の非認知能力が将来の年収に影響するメカニズム

幼少期の非認知能力が将来の年収に影響するメカニズムは、学業成績の向上を通じた学歴の獲得、良好な人間関係の構築、健康の維持、そして成人期の非認知能力の基盤形成という複数の経路を通じて働きます。

幼少期に育まれた非認知能力が、数十年後の年収にまで影響を与えるのはなぜでしょうか。そのメカニズムは、複数の経路を通じて働いています。

第一の経路は、学業成績と学歴を通じた影響です。自制心が高い子どもは、宿題を先延ばしにせず、テスト勉強を計画的に進められます。やり抜く力がある子どもは、難しい問題でも諦めず取り組みます。その結果、学業成績が向上し、より高い学歴を得られる可能性が高まります。学歴は年収に影響する主要な要因の一つであり、非認知能力は学歴を通じて間接的に年収に影響します。

第二の経路は、人間関係を通じた影響です。協調性や共感性が高い子どもは、友だちや先生との良好な関係を築けます。この対人関係スキルは、大人になってからの職場での人間関係、顧客との関係、ビジネスパートナーとの関係にも活かされます。良好な人間関係は、キャリアの機会を広げ、年収の向上につながります。

第三の経路は、健康を通じた影響です。自制心が高い人は、健康的な生活習慣を維持しやすく、アルコールやタバコの過剰摂取を避けられます。健康状態が良いと、仕事のパフォーマンスが向上し、欠勤が減り、長く働き続けられます。これが生涯収入に影響します。

第四の経路は、成人期の非認知能力の基盤となることです。幼少期に育まれた自制心は、成人期にも維持される傾向があります。子ども時代に自制心を身につけた人は、大人になっても自制心を発揮でき、それが仕事の成果やキャリア形成に影響します。非認知能力は、一度身につけると長期的に効果を発揮するのです。

第五の経路は、問題回避を通じた影響です。自制心が低い人は、衝動的な行動をとりやすく、犯罪、薬物依存、計画外の妊娠といった問題を起こしやすくなります。これらの問題は、キャリアを中断させ、経済的な困難をもたらします。非認知能力が高いと、こうした問題を回避でき、安定したキャリアを築けます。

第六の経路は、資産形成を通じた影響です。自制心が高い人は、収入を計画的に管理し、貯蓄や投資ができます。目の前の消費を我慢して将来に備えることで、資産を形成できます。資産は資産収入を生み、さらに経済的な余裕をもたらします。

これらの経路は、独立して働くのではなく、相互に影響し合っています。例えば、良い学歴を得ると良い職場に就職でき、良い職場では高い収入が得られ、高い収入があると健康的な生活を維持しやすくなります。非認知能力は、こうした好循環の出発点となるのです。

このように、幼少期の非認知能力は、学業、人間関係、健康、成人期の能力、問題回避、資産形成という複数の経路を通じて、将来の年収に長期的な影響を与えるのです。

では、こどもの将来の経済的成功のために、保護者は何ができるのでしょうか。

こどもの将来のために今できること

こどもの将来のために今できることは、愛着形成を基盤に、自制心とやり抜く力を日常生活で育て、結果よりプロセスを認め、失敗を許容する環境を作り、長期的な視点で成長を見守ることです。

非認知能力が年収に影響するという研究結果を知ると、「こどもの非認知能力を高めなければ」と焦るかもしれません。しかし、特別なプログラムや高価な教育を受けさせる必要はありません。日常生活の中で、基本的な関わり方を意識することが最も効果的です。

第一に、安定した愛着関係を築くことです。すべての非認知能力の土台は、乳幼児期の愛着形成にあります。こどもの発するサインに敏感に応答し、温かく受け止めることで、基本的信頼感と自己肯定感が育ちます。この土台があってこそ、自制心ややり抜く力が発達します。

第二に、自制心を日常生活で育てることです。「待つ」経験を意図的に作り、待てたら褒めます。ルールを一緒に決め、守る練習をします。感情を言葉にする習慣をつけ、感情のコントロールを助けます。ただし、厳しく我慢させるのではなく、適度な挑戦を通じて少しずつ育てることが大切です。

第三に、やり抜く力を育てることです。こどもが興味を持ったことに取り組む機会を与え、困難に直面しても見守ります。すぐに助けるのではなく、「どうしたらいいと思う?」と考えさせます。達成したときには、結果だけでなく、努力の過程を認めます。「頑張ったね」「諦めなかったね」という言葉が、やり抜く力を育てます。

第四に、結果よりプロセスを認めることです。テストの点数だけでなく、勉強した努力を認めます。試合の勝敗だけでなく、練習に取り組んだ姿勢を褒めます。この関わりが、「努力には価値がある」というメッセージを伝え、内発的な動機づけを育てます。

第五に、失敗を許容する環境を作ることです。「失敗しても大丈夫」「失敗から学べばいい」というメッセージを日々の言葉と態度で伝えます。失敗を責めるのではなく、「次はどうする?」と一緒に考えます。保護者自身の失敗談を共有することも、失敗を恐れない姿勢を育てます。

第六に、社会性を育てる機会を提供することです。友だちと遊ぶ機会、集団活動に参加する機会を作ります。協力する、譲り合う、対立を解決するといった経験が、協調性とコミュニケーション能力を育てます。これらは、将来の職場での人間関係に直結するスキルです。

第七に、長期的な視点を持つことです。非認知能力は、すぐに目に見える成果が出るものではありません。日々の小さな積み重ねが、数十年後の結果につながります。焦らず、こどものペースに合わせて、長期的に育てる姿勢が大切です。

また、お金の教育も将来の経済的成功に関わります。計画的にお小遣いを使う、欲しいものを我慢して貯金する、といった経験が、金銭管理能力を育てます。

このように、愛着形成、自制心とやり抜く力の育成、プロセスの承認、失敗の許容、社会性の育成といった日常の関わりが、こどもの将来の経済的成功につながるのです。

非認知能力と年収の関係は、複数の大規模研究によって科学的に証明されており、やり抜く力、自制心、協調性といった能力が仕事の成果、昇進、キャリア形成を通じて収入に影響し、幼少期に育まれた非認知能力は学業、人間関係、健康、成人期の能力という複数の経路を通じて将来の年収に長期的な影響を与えるため、日常の基本的な関わりを通じて非認知能力を育てることがこどもの将来のために最も重要なのです。

監修

代表理事
佐々木知香

略歴

2017年 本田右志理事長より右脳記憶教育講座を指南、「JUNKK認定マスター講師」取得
2018年 幼児教室アップルキッズをリビングサロンとして開講
2020年 佐々木進学教室Tokiwaみらい内へ移転、「佐々木進学教室幼児部」として再スタート
2025年 一般社団法人 日本右脳記憶教育協会(JUNKK)代表理事に就任
塾講師として中高生の学習指導に長年携わる中で、幼児期・小学校期の「学びの土台づくり」の重要性を痛感。
結婚を機に地方へ移住後、教育情報や環境の地域間格差を実感し、「地域に根差した実践の場をつくりたい」との想いから、幼児教室アップルキッズを開校。
発達障害や不登校の支援、放課後等デイサービスでの指導、子ども食堂での学習支援など、多様な子どもたちに寄り添う教育活動を展開中。