非認知能力が低い人にはどのような特徴があるのか、気になる保護者は少なくありません。
自分のこどもが困難に直面するとすぐに諦めてしまう、友だちとうまく関われないといった様子を見て、心配になることもあるでしょう。
また、大人になってから自分自身のこの能力の低さに悩む人もいます。
しかし、このような能力が低いことは決して固定されたものではなく、適切な経験と働きかけによって改善できる可能性があります。
この記事では、非認知能力が低い人の特徴と原因、そして大人もこどもも伸ばせる方法について詳しく解説します。
非認知能力が低い人に見られる5つの特徴とは?
非認知能力が低い人の特徴は、すぐに諦める、感情のコントロールが苦手、他者と協力できない、計画性がない、失敗を恐れて挑戦しないという5つの行動パターンとして現れます。
非認知能力が低いとは、どのような状態を指すのでしょうか。テストの点数のように明確な基準があるわけではありませんが、日常生活や仕事の場面で、いくつかの特徴的な行動パターンが見られます。ただし、これらの特徴があるからといって、その人の価値が低いわけでは決してありません。むしろ、改善すべき課題として認識し、成長の機会と捉えることが大切です。
第一の特徴は、すぐに諦めてしまうことです。困難に直面したとき、「どうせ無理」「自分にはできない」とすぐに投げ出してしまいます。少し努力してうまくいかないと、別の方法を試すことなく諦めます。宿題や課題も、難しいと感じるとすぐに「分からない」と言って放棄します。この特徴は、やり抜く力や忍耐力が低いことを示しています。
第二の特徴は、感情のコントロールが苦手なことです。思い通りにならないとすぐに怒る、些細なことで感情的になる、ストレスに弱く落ち込みやすいといった様子が見られます。大人の場合、職場で感情をぶつけてしまう、些細なミスで過度に落ち込むといった形で現れます。こどもの場合、友だちとのトラブルですぐに泣く、負けると怒って物を投げるといった行動として現れます。
第三の特徴は、他者と協力することが苦手なことです。チームで何かをするとき、自分勝手に行動する、他人の意見を聞かない、役割分担を守らないといった行動が見られます。逆に、自分の意見を全く言わず、他人任せにすることもあります。協調性や共感性が低いと、人間関係がうまくいかず、孤立しがちです。
第四の特徴は、計画性がなく衝動的に行動することです。先のことを考えず、その場の気分で行動してしまいます。宿題を計画的に進められず、締め切り直前になって慌てます。お金の管理ができず、欲しいものがあるとすぐに買ってしまいます。時間管理も苦手で、いつも遅刻したり、約束を忘れたりします。この特徴は、自己管理能力や自制心が低いことを示しています。
第五の特徴は、失敗を恐れて新しいことに挑戦しないことです。「失敗したらどうしよう」「うまくできなかったら恥ずかしい」という不安から、安全な選択ばかりをします。新しい環境や初めての経験を避け、慣れたことだけを繰り返します。この背景には、自己肯定感の低さがあります。失敗を受け入れられないため、挑戦を避けるのです。
これらの特徴は、単独で現れることもあれば、複数が組み合わさって現れることもあります。また、ある分野では問題なくても、別の分野では苦手ということもあります。例えば、学業では粘り強く取り組めても、人間関係では協調性が低いといったケースです。
このように、非認知能力が低い人は、やり抜く力、感情のコントロール、協調性、自己管理能力、自己肯定感といった面で課題を抱え、日常生活や対人関係に困難を感じることが多いのです。
では、なぜ非認知能力が低くなってしまうのか、その原因を見ていきましょう。
非認知能力が低くなる主な原因
非認知能力が低くなる原因は、幼少期の愛着形成の不足、過保護または放任な養育環境、失敗や挑戦の経験不足、否定的な評価や比較の積み重ねといった環境的要因にあります。
非認知能力が低い状態は、生まれつきの性格や能力ではなく、主に環境や経験によって形成されます。つまり、適切な環境や経験があれば、誰でも非認知能力を育てることができるということです。逆に言えば、不適切な環境や経験の不足が、非認知能力を低くする原因となります。
第一の原因は、幼少期の愛着形成の不足です。乳幼児期に安定した愛着関係を築けなかった場合、基本的信頼感や自己肯定感が育ちません。保護者が忙しくて十分に関われなかった、頻繁に養育者が変わった、虐待やネグレクトがあったといった環境では、「自分は愛されている」「困ったときには助けてもらえる」という安心感が育たず、これが後の非認知能力の土台を弱くします。
第二の原因は、過保護または放任な養育環境です。過保護な環境では、こどもが自分で考え、行動する機会が奪われます。「危ないから」「失敗するから」と保護者が先回りしてしまうと、自己管理能力や問題解決能力が育ちません。一方、放任的な環境では、適切な指導や支援がなく、社会性やルールを学ぶ機会が不足します。どちらも、非認知能力の発達を妨げます。
第三の原因は、失敗や挑戦の経験不足です。非認知能力は、困難に直面し、失敗し、それを乗り越える経験を通じて育ちます。しかし、失敗を避けられる環境、簡単なことしかさせない環境では、やり抜く力や忍耐力が育ちません。また、新しいことに挑戦する機会がない、いつも同じことの繰り返しという環境も、好奇心や創造性を育てません。
第四の原因は、否定的な評価や比較の積み重ねです。「どうしてできないの」「お兄ちゃんはできたのに」といった否定的な言葉を繰り返し浴びると、自己肯定感が低くなります。結果だけを評価され、努力やプロセスを認めてもらえない環境では、「頑張っても意味がない」と学習性無力感を持つようになります。他の子と常に比較され、劣っていると感じ続けると、挑戦する意欲を失います。
第五の原因は、社会的経験の不足です。友だちと遊ぶ機会が少ない、集団生活の経験がないといった環境では、協調性や共感性が育ちにくくなります。他者と関わる中で、譲り合い、協力し、対立を解決するといった経験が、社会性を育てます。その機会が不足すると、人間関係のスキルが育ちません。
第六の原因は、メンタルヘルスの問題です。うつ病や不安障害などのメンタルヘルスの問題を抱えていると、やる気が出ない、感情のコントロールが難しい、人と関わりたくないといった症状が現れます。これが非認知能力の低さとして見えることもあります。この場合は、専門家のサポートが必要です。
第七の原因は、発達特性です。ADHD(注意欠如・多動症)や自閉スペクトラム症などの発達特性がある場合、衝動性が高い、計画的に行動するのが苦手、他者の気持ちを理解するのが難しいといった特徴が見られることがあります。これは非認知能力が低いというより、脳の特性による違いです。適切な理解と支援が必要です。
このように、非認知能力が低くなる原因は、主に環境や経験によるものであり、適切な環境と経験を提供することで改善できる可能性があるのです。
では、非認知能力が低いまま大人になると、どのような影響があるのでしょうか。
大人になってから非認知能力が低いとどうなるか
大人で非認知能力が低いと、仕事でのパフォーマンスが低下し、人間関係がうまくいかず、ストレスに弱く、人生の満足度が低くなるという影響が現れます。
こどもの頃に非認知能力が十分に育たないまま大人になると、社会生活の様々な場面で困難に直面します。学生時代は守られた環境の中で何とかやり過ごせても、社会に出ると、自己管理能力、協調性、問題解決能力が強く求められるため、課題が顕在化します。
仕事面での影響として、まず生産性の低さが挙げられます。計画性がなく、締め切りを守れない、優先順位がつけられず、いつも慌てて仕事をするといった問題が起こります。やり抜く力が低いと、困難なプロジェクトから逃げ出したくなったり、途中で投げ出したりします。自己管理能力が低いと、遅刻や欠勤が多く、信頼を失います。
また、職場での人間関係にも影響します。協調性が低いと、チームで働くことが苦手で、孤立しがちです。感情のコントロールが苦手だと、上司や同僚とトラブルを起こしやすくなります。共感性が低いと、相手の気持ちを考えず、無神経な発言をしてしまい、人間関係を悪化させます。これらが重なると、職場に居づらくなり、転職を繰り返すことにもなります。
キャリアの発展も難しくなります。新しいスキルを学ぶ意欲がない、失敗を恐れて挑戦しないといった姿勢では、成長の機会を逃します。リーダーシップが求められる立場になっても、責任感が低い、他者を導けないといった問題が生じます。結果として、昇進が遅れたり、望むキャリアを築けなかったりします。
人間関係全般にも影響が及びます。友人関係では、約束を守らない、自分勝手な行動をとる、相手の話を聞かないといった行動により、友人を失いやすくなります。恋愛関係でも、感情のコントロールができず、些細なことで喧嘩になる、相手の気持ちを考えられない、長期的な関係を築けないといった問題が起こります。
家族関係にも課題が生じます。結婚後、家事や育児の責任を果たせない、パートナーと協力できない、こどもの気持ちに共感できないといった問題が起こり得ます。特に、自分が非認知能力を育ててもらえなかった経験があると、自分のこどもにどう関わればいいか分からず、同じような環境を作ってしまう負の連鎖が起こることもあります。
メンタルヘルスへの影響も深刻です。失敗を恐れて行動できない、自己肯定感が低い、ストレスに対処できないといった状態は、うつ病や不安障害のリスクを高めます。人間関係がうまくいかず孤立すると、さらにメンタルヘルスが悪化する悪循環に陥ります。
経済面でも影響が出ます。衝動的にお金を使ってしまう、計画的に貯蓄できない、長期的な視点で投資を考えられないといった問題が起こります。研究では、自制心が低い人は、生涯年収が低い傾向にあることが示されています。
人生の満足度も低くなりがちです。目標を達成する経験が少ない、良好な人間関係を築けない、新しいことに挑戦する喜びを味わえないといった状態では、人生に充実感を感じにくくなります。「なんとなく人生がうまくいかない」「いつも同じところでつまずく」という感覚を持ち続けることになります。
このように、非認知能力が低いと、仕事、人間関係、メンタルヘルス、経済面など、人生の多岐にわたって困難を経験しやすくなるのです。
しかし、大人になってからでも非認知能力を伸ばすことは可能です。
大人になってから非認知能力を伸ばす方法
大人が非認知能力を伸ばすには、小さな目標設定と達成の繰り返し、マインドフルネスや感情の振り返り、新しい挑戦と失敗の受容、他者との協働経験、習慣化とセルフモニタリングという5つの実践方法が効果的です。
幸いなことに、非認知能力は大人になってからでも伸ばすことができます。こどもの頃ほど柔軟ではありませんが、意識的な努力と継続的な実践によって、確実に改善できます。脳の可塑性は生涯にわたって維持されており、新しい経験や訓練によって変化し続けるからです。
第一の方法は、小さな目標設定と達成の繰り返しです。やり抜く力を育てるには、まず達成可能な小さな目標を設定し、それを確実に達成する経験を積むことが重要です。例えば、「毎日10分読書をする」「週に1回ジョギングをする」といった簡単な目標から始めます。達成できたら自分を褒め、次は少し難しい目標に挑戦します。この成功体験の積み重ねが、自己効力感を高め、やり抜く力を育てます。
第二の方法は、マインドフルネスや感情の振り返りです。感情のコントロール能力を高めるには、自分の感情に気づき、それを客観的に観察する練習が効果的です。イライラしたとき、「今、自分はイライラしている」と気づくだけで、感情に飲み込まれにくくなります。毎日数分間、瞑想やマインドフルネスの実践をすることで、感情の調整力が向上します。また、日記をつけて、その日の感情や出来事を振り返ることも効果的です。
第三の方法は、新しいことに挑戦し、失敗を受け入れる経験を積むことです。今まで避けてきたことに、小さく挑戦してみます。例えば、人前で話すのが苦手なら、まず少人数の場で意見を言ってみる。運動が苦手なら、初心者向けのクラスに参加してみる。うまくいかなくても、「挑戦できた自分」を認めることが大切です。失敗は恥ずかしいことではなく、成長の機会だと捉え直します。
第四の方法は、他者と協働する経験を意図的に作ることです。協調性を高めるには、チームでの活動に参加します。ボランティア活動、趣味のサークル、地域の活動など、共通の目標に向かって他者と協力する経験が、協調性を育てます。最初は苦手でも、少しずつ他者の意見を聞く、自分の意見を伝える、妥協点を見つけるといったスキルが身につきます。
第五の方法は、習慣化とセルフモニタリングです。自己管理能力を高めるには、良い習慣を作り、それを継続することが重要です。朝決まった時間に起きる、毎日運動する、計画的にお金を管理するといった習慣を、一つずつ身につけます。また、自分の行動を記録し、振り返ることで、改善点が見えてきます。アプリやノートを使って、目標の達成状況、感情の変化、行動パターンなどを記録します。
第六の方法は、専門家のサポートを受けることです。一人で改善するのが難しい場合、カウンセラーやコーチの助けを借りることも有効です。認知行動療法は、考え方や行動パターンを変える効果的な方法として知られています。メンタルヘルスの問題がある場合は、医療機関を受診することも大切です。
第七の方法は、ロールモデルを見つけることです。非認知能力が高い人を観察し、その行動や考え方を学びます。本や動画、講演などを通じて、成功した人たちがどのように困難を乗り越えたのか、どんな習慣を持っているのかを知ることも、自分の成長につながります。
重要なのは、完璧を目指さないことです。少しずつの改善を積み重ねることが、長期的な成長につながります。焦らず、自分のペースで、できることから始めることが大切です。
このように、大人になってからでも、意識的な実践と継続的な努力によって、非認知能力を確実に伸ばすことができるのです。
自分自身の非認知能力を伸ばすことも大切ですが、こどもを育てる立場にある場合は、こどもの非認知能力を低くしないための関わり方を知っておくことが重要です。
こどもの非認知能力を低くしないために保護者ができること
こどもの非認知能力を低くしないためには、安定した愛着関係を築き、適度な挑戦機会を提供し、結果ではなくプロセスを認め、失敗を受容する環境を作り、過保護にも放任にもならないバランスのとれた関わりをすることが重要です。
自分自身が非認知能力の低さに悩んだ経験がある保護者ほど、こどもには同じ思いをさせたくないと願うでしょう。こどもの非認知能力を低くしないためには、日々の関わり方が重要です。特別なことをする必要はなく、基本的な関わり方を意識するだけで、大きな違いが生まれます。
第一に、安定した愛着関係を築くことです。乳幼児期から、こどもの発するサインに敏感に反応し、温かく受け止めることが、すべての非認知能力の土台となります。泣いたときにはすぐに応える、笑顔を返す、抱きしめるといった応答的な関わりが、「自分は愛されている」「困ったときには助けてもらえる」という基本的信頼感を育てます。この安心感が、後の挑戦意欲や自己肯定感の基盤となります。
第二に、適度な挑戦機会を提供することです。こどもの現在の能力より少しだけ高い課題に挑戦させることが、非認知能力を育てます。簡単すぎる課題では成長の機会がなく、難しすぎる課題では挫折してしまいます。年齢に応じて、「自分でやってみたい」という気持ちを尊重し、時間がかかっても見守ることが大切です。着替え、食事、片付けなど、できることは自分でさせます。
第三に、結果ではなくプロセスを認めることです。「できた・できない」だけでなく、「頑張った」「工夫した」「諦めなかった」といった過程に注目して声をかけます。テストで100点を取ったことだけでなく、毎日コツコツ勉強したことを褒めます。失敗しても、「挑戦したこと」を認めます。この姿勢が、努力することの価値を教え、やり抜く力を育てます。
第四に、失敗を受容する環境を作ることです。「失敗しても大丈夫」「やってみることに価値がある」というメッセージを、日々の言葉がけや態度で伝えます。こどもが何かに失敗したとき、「何やってるの!」と叱るのではなく、「うまくいかなかったね。次はどうしてみる?」と一緒に考えます。保護者自身の失敗談を共有することも、失敗は誰にでもあることだと教えます。
第五に、過保護にも放任にもならないバランスを保つことです。過保護すぎると、こどもが自分で考え行動する機会を奪います。「危ないから」と先回りしすぎず、適度なリスクは経験させます。一方、放任しすぎると、適切な指導や支援が不足します。こどもの様子を見守りながら、必要なときには手を差し伸べるという距離感が大切です。
第六に、他の子と比較しないことです。「お兄ちゃんはできたのに」「〇〇ちゃんはもうできるのに」といった比較は、自己肯定感を傷つけます。その子自身の成長を見て、「前よりできるようになったね」と認めます。一人ひとり得意なこと、苦手なこと、成長のペースが違うことを理解します。
第七に、多様な経験を提供することです。友だちと遊ぶ、自然の中で過ごす、様々な人と関わる、新しい場所に行くといった多様な経験が、非認知能力を育てます。習い事も、こども自身が興味を持ったものを選ばせ、強制せず、楽しみながら続けられる環境を作ります。
第八に、保護者自身が非認知能力を大切にする姿勢を見せることです。新しいことに挑戦する姿、失敗しても諦めない姿、他者と協力する姿を見せることで、こどもは自然とその価値観を吸収します。保護者が感情的に怒鳴ることなく、冷静に対処する姿を見せることも、感情のコントロールを学ぶ機会となります。
このように、日々の基本的な関わり方を意識することで、こどもの非認知能力が低くなることを予防し、健全に育てることができるのです。
非認知能力が低い人には、すぐに諦める、感情のコントロールが苦手、協力できない、計画性がない、挑戦しないという特徴が見られ、その原因は主に環境や経験不足にあり、大人になってからも仕事や人間関係に影響が出ますが、意識的な実践によって伸ばすことは可能であり、こどもに対しては愛着形成、適度な挑戦、プロセスの承認、失敗の受容というバランスのとれた関わりによって非認知能力を健全に育てることができるのです。
監修

略歴
| 2017年 | 本田右志理事長より右脳記憶教育講座を指南、「JUNKK認定マスター講師」取得 |
|---|---|
| 2018年 | 幼児教室アップルキッズをリビングサロンとして開講 |
| 2020年 | 佐々木進学教室Tokiwaみらい内へ移転、「佐々木進学教室幼児部」として再スタート |
| 2025年 | 一般社団法人 日本右脳記憶教育協会(JUNKK)代表理事に就任 |



