非認知能力はごっこ遊びで育つ?効果的な遊び方と年齢別のポイント

非認知能力

ごっこ遊びがこどもの発達に良いと聞いたことがある保護者は多いでしょう。

お店屋さんやお医者さんなど、こどもは様々な役割を演じて遊びます。

一見すると単なる遊びに見えますが、実はごっこ遊びは非認知能力を育てる非常に効果的な活動です。

社会性、協調性、共感性、自制心、創造性といった多様な非認知能力が、遊びを通じて自然に育まれます。

この記事では、役割を演じる遊びで育つ力と、年齢別の効果的な遊び方について詳しく解説します。

非認知能力はごっこ遊びで育つ?

ごっこ遊びで育つ非認知能力は、社会性、協調性、共感性、自制心、創造性、問題解決能力、コミュニケーション能力であり、遊びながら自然にこれらの力が身につきます。

ごっこ遊びとは、こどもが何かや誰かになりきって遊ぶ遊びのことです。お母さん役、お店屋さん役、ヒーロー役など、様々な役割を演じます。発達心理学では、ごっこ遊びは象徴遊びと呼ばれ、こどもの認知発達と社会性発達に重要な役割を果たすことが知られています。

なぜごっこ遊びが非認知能力を育てるのでしょうか。それは、ごっこ遊びの中で、こどもは様々な経験を積むからです。役割を演じることで他者の視点を学び、友だちと一緒に遊ぶことで協調性を身につけ、ルールを守ることで自制心を育て、ストーリーを作ることで創造性を発揮します。

ごっこ遊びの重要な特徴は、こども主導で行われることです。大人が教えるのではなく、こども自身が役割を決め、ストーリーを作り、ルールを決めます。この主体的な関わりが、非認知能力を効果的に育てます。遊びの中だからこそ、失敗を恐れず、自由に試行錯誤できるのです。

また、ごっこ遊びは楽しい活動です。こどもは楽しいことには夢中になります。夢中になって遊ぶ中で、自然と非認知能力が育ちます。訓練や勉強として強制されるのとは違い、内発的な動機づけによって学ぶため、効果が高いのです。

ごっこ遊びは2歳頃から始まり、幼児期を通じて盛んに行われます。最初は一人でぬいぐるみに話しかけるような単純なごっこ遊びですが、徐々に友だちと一緒に複雑なストーリーを展開するようになります。年齢とともに遊びが高度になり、それに伴って育つ非認知能力も深まっていきます。

このように、ごっこ遊びは社会性、協調性、共感性、自制心、創造性、問題解決能力など多様な非認知能力を、遊びを通じて自然に育てる非常に効果的な活動なのです。

では、ごっこ遊びがどのように社会性と協調性を育てるのか、詳しく見ていきましょう。

ごっこ遊びが社会性と協調性を育てる理由

ごっこ遊びが社会性と協調性を育てる理由は、役割を分担して演じる経験、暗黙のルールを守る練習、他者と協力してストーリーを作り上げる経験ができるからです。

ごっこ遊びは、本質的に社会的な活動です。一人でもできますが、友だちと一緒に行うことで、社会性と協調性がより効果的に育ちます。ごっこ遊びの中で、こどもは社会で必要なスキルを自然に学んでいきます。

まず、役割分担を学びます。お店屋さんごっこでは、店員役とお客さん役が必要です。お医者さんごっこでは、医者役、看護師役、患者役があります。誰がどの役をやるか話し合い、決める過程で、交渉力や妥協する力を学びます。「今日は私がお医者さんをやりたい」「じゃあ、後で交代ね」といったやり取りが、社会性を育てます。

役割を演じることで、その役割に期待される行動を学びます。お医者さん役は患者さんを診察し、優しく接します。店員役はお客さんに「いらっしゃいませ」と言い、商品を渡します。こうした役割行動を学ぶことで、社会的な期待や規範を理解するようになります。これは、将来の社会生活の基盤となります。

暗黙のルールを守る経験も重要です。ごっこ遊びには、明文化されていないルールがあります。「お医者さんは患者さんを治す」「お店屋さんはお金をもらって商品を渡す」といった暗黙のルールを守ることで、社会のルールを守る力が育ちます。ルールを破ると、「それは違う!」と友だちから指摘され、ルールを意識するようになります。

順番を待つ経験も社会性を育てます。お店屋さんごっこでは、お客さん役は順番を待つ必要があります。自分の番が来るまで我慢する経験が、自制心と社会性を育てます。

友だちと協力してストーリーを作り上げる経験も重要です。「次はこうしよう」「患者さんが来たことにしよう」と、一緒にストーリーを展開します。自分だけの考えを押し通すのではなく、友だちのアイデアも取り入れながら遊びを進める経験が、協調性を育てます。

意見の対立を解決する経験も社会性を育てます。「私は泥棒役をやりたくない」「このおもちゃは私が使う」といった対立が起こることもあります。大人が介入しなくても、こども同士で話し合い、妥協点を見つけることがあります。この経験が、対人関係スキルを育てます。

また、言葉でのコミュニケーションも発達します。役割を決める、ストーリーを提案する、ルールを確認するといった場面で、言葉を使ってやり取りします。「〇〇ってことにしよう」「次は△△しようよ」といった言葉のやり取りが、コミュニケーション能力を育てます。

このように、ごっこ遊びは役割分担、ルール遵守、協力、交渉といった社会で必要なスキルを実践的に学ぶ場となり、社会性と協調性を育てるのです。

社会性と協調性に加えて、ごっこ遊びは共感性と自制心も育てます。

ごっこ遊びが共感性と自制心を育てる理由

ごっこ遊びが共感性と自制心を育てる理由は、他者の視点に立って考える経験、役割に合わせて自分の行動をコントロールする経験、感情を調整する練習ができるからです。

ごっこ遊びの本質は、自分以外の誰かになりきることです。お母さんになる、先生になる、消防士になる。この「なりきる」経験が、共感性と自制心を育てる鍵となります。

共感性を育てる最大の要素は、他者の視点に立つ経験です。お母さん役を演じるとき、こどもは「お母さんはどう考えるか」「お母さんはこういうときどう言うか」を想像します。患者役を演じるとき、「病気のときはどんな気持ちだろう」と考えます。この視点取得の経験が、他者の気持ちを理解する力を育てます。

研究では、ごっこ遊びをよくするこどもは、他者の心の状態を理解する「心の理論」が発達しやすいことが示されています。心の理論とは、他者には自分とは異なる考えや感情があることを理解する能力です。ごっこ遊びで様々な役割を演じることで、この能力が育ちます。

役割を通じて様々な感情を体験することも、共感性を育てます。悲しんでいる患者役を演じる、怒っているお客さん役を演じるといった経験を通じて、様々な感情を疑似体験します。この体験が、実際に他者がその感情を感じているときに共感する力につながります。

自制心を育てるのは、役割に合わせた行動をする経験です。ごっこ遊びでは、自分の役割に期待される行動をとる必要があります。お店屋さん役は、本当はおもちゃで遊びたくても、店員としてお客さんの対応をします。お医者さん役は、ふざけたくても、真剣に患者さんを診察します。自分のやりたいことを抑えて、役割に合った行動をとる経験が、自制心を育てます。

実際、研究では、「コックさんになりきって」という指示を与えられたこどもは、「ケーキを待つ」という我慢課題で、指示なしのこどもより長く待てることが示されています。役割を意識することで、自制心が発揮されやすくなるのです。

ルールを守る経験も自制心を育てます。ごっこ遊びには、「お金を払わないと商品は買えない」「診察の順番を守る」といったルールがあります。ルールを破りたい衝動を抑えて、ルールを守る経験が、自制心を鍛えます。

感情のコントロールも学びます。ごっこ遊びで役割を演じるうちに、感情が高ぶることもあります。ヒーローごっこで興奮しすぎて本当に叩いてしまう、悲しい役を演じて本当に泣いてしまうといったことがあります。こうした場面で、「これは遊びだよ」と気づき、感情をコントロールする経験が、感情調整能力を育てます。

また、遊びが終わったら役割を解除する経験も重要です。お医者さんごっこが終わったら、もうお医者さんではなく普通の自分に戻ります。この切り替えの経験が、感情や行動のコントロール能力を育てます。

このように、ごっこ遊びは他者の視点に立ち、役割に合わせて行動し、感情をコントロールする経験を通じて、共感性と自制心を効果的に育てるのです。

っこ遊びは共感性や自制心だけでなく、創造性と問題解決能力も育てます。

ごっこ遊びが創造性と問題解決能力を育てる理由

ごっこ遊びが創造性と問題解決能力を育てる理由は、想像力を駆使してストーリーを作り出す経験、見立て遊びで柔軟な発想を使う経験、即興で問題に対応する経験ができるからです。

ごっこ遊びは、想像力の宝庫です。何もないところから世界を作り出し、ストーリーを展開し、問題を解決していきます。この創造的なプロセスが、創造性と問題解決能力を育てます。

まず、ストーリーを作り出す経験が創造性を育てます。ごっこ遊びでは、こどもが自分でストーリーを考えます。「お店にお客さんが来て、ケーキを買って、家に帰る」という単純なストーリーから、「泥棒が来たけど、警察が捕まえて、表彰される」という複雑なストーリーまで、自由に展開します。この創作活動が、創造性を育てます。

見立て遊びも創造性を育てます。ごっこ遊びでは、あるものを別のものに見立てます。積み木をお金に、段ボールをお店に、棒を注射器に見立てます。「これは〇〇のつもり」という見立ては、象徴的思考の発達であり、創造性の基盤となります。限られた材料から、想像力で豊かな世界を作り出す経験が、柔軟な発想力を育てます。

即興で対応する経験も問題解決能力を育てます。ごっこ遊びは、計画通りに進むとは限りません。友だちが予想外の行動をとる、必要な小道具がない、途中で別のこどもが参加するといった状況に、即興で対応する必要があります。「お金がないなら、カードで払うことにしよう」「お医者さんがいなくなったから、看護師さんが診ることにしよう」といった柔軟な対応が、問題解決能力を育てます。

役割に関する問題を解決する経験も重要です。「みんながお姫様をやりたがる」「患者さんが来ない」といった問題に対して、「じゃあ、お姫様が何人もいることにしよう」「動物も病気になったことにしよう」といった解決策を考えます。この経験が、実生活での問題解決能力につながります。

制約の中で創造する経験も大切です。ごっこ遊びは、限られたおもちゃ、限られたスペース、限られたメンバーで行われます。この制約の中で、いかに楽しい遊びを作り出すかを考える経験が、創造的問題解決能力を育てます。

複数のアイデアを統合する経験もあります。友だちと一緒に遊ぶとき、それぞれが違うアイデアを持っています。「私は宇宙に行きたい」「僕は海賊ごっこがいい」といった異なるアイデアを、「宇宙海賊ごっこにしよう」と統合します。この経験が、柔軟な思考と創造性を育てます。

また、失敗から学ぶ経験も問題解決能力を育てます。ストーリーがうまくいかない、友だちとの意見が合わないといった失敗を経験し、「次はこうしよう」と改善します。遊びの中での失敗は、低リスクで学べる貴重な経験です。

このように、ごっこ遊びはストーリーの創作、見立て遊び、即興的な対応、制約の中での創造といった経験を通じて、創造性と問題解決能力を効果的に育てるのです。

では、年齢に応じてどのようにごっこ遊びを進めればよいのでしょうか。

年齢別のごっこ遊びの進め方と保護者の関わり方

年齢別のごっこ遊びの進め方は、2〜3歳は保護者と一緒のシンプルな見立て遊び、4〜5歳は友だちとの複雑な役割遊び、6歳以降はルールや設定が精緻化した高度なごっこ遊びへと発展させます。

ごっこ遊びは年齢とともに発達し、遊びの内容も複雑になっていきます。年齢に応じた関わり方をすることで、非認知能力をより効果的に育てることができます。

2〜3歳の時期は、ごっこ遊びの始まりです。この時期のこどもは、ぬいぐるみにミルクをあげる、人形を寝かせるといった、身近な生活を再現する単純なごっこ遊びをします。一人遊びが中心で、まだ友だちと一緒に役割分担をして遊ぶことは難しい時期です。

この時期の保護者の関わり方としては、一緒に遊ぶことが重要です。「お人形さん、お腹すいたのかな?」「一緒にご飯食べようか」と、ごっこ遊びに参加します。保護者が相手役を務めることで、こどもは役割を演じる経験ができます。また、「熱いから気をつけてね」「美味しいね」といった言葉を添えることで、言葉の発達も促します。

シンプルな見立て遊びを一緒に楽しみます。積み木を電話に見立てて「もしもし」と話す、空の容器をコップに見立ててお茶を飲むふりをするといった遊びが、この時期に適しています。こどもの見立てを認め、「おいしいジュースだね」と共感することで、想像力が育ちます。

4〜5歳の時期は、ごっこ遊びが最も盛んな時期です。友だちと一緒に、複雑な役割分担をして遊ぶようになります。お店屋さんごっこ、お医者さんごっこ、ヒーローごっこなど、様々なテーマで遊びます。ストーリーも複雑になり、「お客さんが来て、商品を選んで、お金を払って、帰る」といった一連の流れを展開できます。

この時期の保護者の関わり方としては、遊びを見守り、必要に応じて参加することが大切です。こどもが「お母さんも来て」と誘ったら一緒に遊び、そうでなければ見守ります。大人が主導権を握るのではなく、こどもの発想を尊重します。

トラブルが起きたときは、すぐに介入せず、まずこども同士で解決する機会を与えます。「どうしたらいいと思う?」と問いかけ、自分たちで解決策を考えさせます。どうしても解決できないときだけ、「じゃあ、交代でやってみたら?」と提案します。

小道具を用意することも効果的です。古い服、帽子、バッグ、空き箱、おもちゃのお金など、ごっこ遊びに使える素材を用意します。ただし、全てを揃える必要はありません。足りないものは想像力で補うことが、創造性を育てます。

6歳以降は、ごっこ遊びがさらに高度になります。役割やルールが精緻化し、長時間にわたってストーリーを展開できるようになります。「この国には王様がいて、お姫様は塔に閉じ込められていて、勇者が助けに行く」といった複雑な設定を作り、何日もかけて続きを遊ぶこともあります。

この時期は、保護者はさらに見守る姿勢が中心になります。こどもの遊びに口出しせず、「何やってるの?」と興味を示す程度にします。遊びの内容を聞いて、「面白いね」「よく考えたね」と認めることで、創造性を肯定します。

また、この時期は実際の体験を遊びに取り入れることも効果的です。病院に行った後にお医者さんごっこをする、レストランに行った後にレストランごっこをするといった形で、実体験を遊びで再現することで、体験の理解が深まります。

全ての年齢で共通して大切なのは、こどもの遊びを否定しないことです。「そんな遊び方は違う」「女の子なのにヒーローごっこ?」といった言葉は、創造性や自己表現を妨げます。こどもの発想を尊重し、自由に遊ばせることが、非認知能力を最大限に育てます。

ごっこ遊びは、社会性、協調性、共感性、自制心、創造性、問題解決能力という多様な非認知能力を、こどもが主体的に楽しみながら自然に育てることができる最も効果的な遊びであり、年齢に応じた関わり方で見守り支援することが大切なのです。

監修

代表理事
佐々木知香

略歴

2017年 本田右志理事長より右脳記憶教育講座を指南、「JUNKK認定マスター講師」取得
2018年 幼児教室アップルキッズをリビングサロンとして開講
2020年 佐々木進学教室Tokiwaみらい内へ移転、「佐々木進学教室幼児部」として再スタート
2025年 一般社団法人 日本右脳記憶教育協会(JUNKK)代表理事に就任
塾講師として中高生の学習指導に長年携わる中で、幼児期・小学校期の「学びの土台づくり」の重要性を痛感。
結婚を機に地方へ移住後、教育情報や環境の地域間格差を実感し、「地域に根差した実践の場をつくりたい」との想いから、幼児教室アップルキッズを開校。
発達障害や不登校の支援、放課後等デイサービスでの指導、子ども食堂での学習支援など、多様な子どもたちに寄り添う教育活動を展開中。