非認知能力を育てる家庭環境について、具体的に何をすればよいのか迷う保護者は多いでしょう。
特別な教育グッズを揃えたり、高価な習い事をさせたりする必要があると思いがちです。
しかし、このような能力を育てるには、お金をかけることよりも、日々の暮らしの中での関わり方や雰囲気づくりが重要です。
安心できる場所、挑戦できる機会、温かいコミュニケーション、適度なルールといった基本的な環境が、こどものこのような能力を大きく育てます。
この記事では、今日から実践できる、非認知能力を育てる家庭環境づくりの5つのポイントを詳しく解説します。
非認知能力を育てる家庭環境とは?
非認知能力を育てる家庭環境とは、こどもが安心して挑戦でき、失敗を恐れず、自分らしく過ごせる場所であり、物理的な環境、心理的な環境、コミュニケーション、習慣とルールの4つの要素から成り立ちます。
家庭環境と聞くと、広い家や立派な子ども部屋を思い浮かべるかもしれません。しかし、非認知能力を育てる家庭環境は、物理的な豊かさではなく、心理的な豊かさが鍵となります。どんなに狭い家でも、どんなに少ないおもちゃでも、こどもが安心して過ごせ、挑戦を応援される環境があれば、非認知能力は十分に育ちます。
非認知能力を育てる家庭環境には、4つの重要な要素があります。第一は物理的な環境です。安全で自由に探索できる空間、年齢に応じた遊びや学習の環境が含まれます。第二は心理的な環境です。安心感、受容的な雰囲気、失敗を許容する文化が含まれます。第三はコミュニケーションです。家族での対話の時間、感情を表現できる雰囲気が含まれます。第四は習慣とルールです。規則正しい生活習慣、適切なルール、責任を持つ機会が含まれます。
これらの要素は、お金をかけずとも整えることができます。むしろ、保護者の意識と日々の関わり方次第で、どの家庭でも非認知能力を育てる環境を作ることができます。重要なのは、完璧な環境を目指すことではなく、こどもにとって「ここは安全な場所」「ここでは自分らしくいられる」と感じられる環境を作ることです。
また、家庭環境は一度整えたら終わりではありません。こどもの成長に応じて、必要な環境も変化します。乳幼児期には安全で探索できる環境が重要ですが、学童期には自己管理能力を育てる環境、思春期には自律性を尊重する環境が重要になります。柔軟に環境を調整していくことが大切です。
さらに、完璧な環境である必要もありません。時には散らかっていたり、忙しくてゆっくり話せなかったりすることもあるでしょう。それは当然のことで、完璧を目指してストレスを溜めるよりも、できる範囲で少しずつ環境を整えていく姿勢が重要です。
このように、非認知能力を育てる家庭環境とは、物理的な豊かさよりも心理的な安心感や挑戦を応援する雰囲気が重要であり、4つの要素をバランスよく整えることが大切なのです。
まず、物理的な家庭環境の整え方から見ていきましょう。
非認知能力を育てる物理的な家庭環境
非認知能力を育てる物理的な家庭環境は、安全で自由に探索できる空間、年齢に応じた遊びや学習の場所、整理整頓されすぎない程よい環境です。
物理的な環境は、こどもの行動や経験に直接影響します。どのような空間を作るか、どんなものを置くかによって、こどもが何を経験できるかが変わります。ただし、高価な教材や広いスペースが必要というわけではありません。工夫次第で、どの家庭でも非認知能力を育てる環境を作ることができます。
まず重要なのは、安全で探索できる空間です。特に乳幼児期は、こどもは好奇心のままに動き回り、様々なものに触れて学びます。そのため、危険なものは手の届かないところに置き、ある程度自由に動き回れる空間を確保します。ただし、すべての危険を取り除くのではなく、適度なリスク(小さな段差、少し高いところに登るなど)は、こどもがリスクを評価し、自分の能力を知る機会となります。
次に、年齢に応じた遊びの環境を整えます。乳幼児期には、積み木、ブロック、お絵かき道具など、自由に創造できるシンプルなおもちゃが効果的です。高価な電子玩具よりも、想像力を働かせて遊べるおもちゃの方が、創造性や問題解決能力を育てます。また、おもちゃは多すぎない方が良いとされています。選択肢が多すぎると、集中して遊べず、すぐに飽きてしまいます。厳選したおもちゃを、定期的に入れ替えることで、新鮮さを保ちます。
読書環境も重要です。本棚を子どもの手の届く高さに置き、自由に本を選べるようにします。リビングなど、家族が集まる場所に本を置くことで、日常的に本に触れる機会が増えます。保護者が読書する姿を見せることも、読書習慣を育てる効果的な方法です。
学童期になると、学習環境が重要になります。宿題をする場所は、必ずしも個室である必要はありません。むしろ、リビングやダイニングテーブルなど、保護者の目が届く場所の方が、集中できることもあります。重要なのは、テレビやゲームなどの誘惑が少なく、必要な文房具が揃っている環境です。また、自分で片付けられる収納を用意し、整理整頓の習慣を育てます。
外遊びの機会も大切です。家の中だけでなく、公園、自然の中など、外で遊ぶ機会を持つことで、身体能力だけでなく、冒険心、リスク管理能力、自然への関心が育ちます。天気の良い日は、できるだけ外で過ごす時間を作ります。
整理整頓については、程よいバランスが大切です。完璧に整理された環境は、こどもが自由に遊びにくくなります。遊んだ後は片付ける習慣は大切ですが、遊んでいる最中は、ある程度散らかっていても構いません。「遊び終わったら一緒に片付けようね」という声かけで、片付けの習慣を育てます。
また、こども自身が環境を整える機会も重要です。自分の部屋の模様替えを一緒に考える、どこに何を置くか決める、といった経験が、自己管理能力や計画性を育てます。
このように、物理的な家庭環境は、安全で探索できる空間、年齢に応じた遊びや学習の場所、程よい整理整頓によって、こどもの好奇心と自己管理能力を育てるのです。
物理的な環境と同じくらい重要なのが、心理的な環境です。
非認知能力を育てる心理的な家庭環境
非認知能力を育てる心理的な家庭環境は、無条件の愛情と受容によって安心感を与え、失敗を許容し挑戦を応援する雰囲気があり、結果よりプロセスを認める文化が根付いている環境です。
心理的な環境とは、家庭の雰囲気、保護者の態度、こどもが感じる安心感や自由度のことです。目に見えない要素ですが、非認知能力の発達に最も大きな影響を与えます。どんなに物理的に整った環境でも、心理的に安心できなければ、非認知能力は育ちません。
最も基本となるのは、無条件の愛情と受容です。「あなたがどんな人でも、あなたを愛している」というメッセージが、自己肯定感の土台となります。成績が良いから、行儀が良いから愛されるのではなく、存在そのものが愛されているという感覚が重要です。この安心感があってこそ、こどもは挑戦する勇気を持てます。
次に重要なのは、失敗を許容する文化です。「失敗しても大丈夫」「失敗は学びのチャンス」というメッセージを、日々の言葉や態度で伝えます。こどもが何かに失敗したとき、「何やってるの!」と叱るのではなく、「うまくいかなかったね。でも挑戦したことがすごいよ」と認めます。保護者自身が失敗したときも、隠すのではなく、「お母さんも失敗しちゃった。次はこうしてみよう」と見せることで、失敗は恥ずかしいことではないと教えます。
挑戦を応援する雰囲気も大切です。こどもが新しいことに挑戦しようとしたとき、「無理じゃない?」「失敗するからやめておきなさい」ではなく、「やってみたいんだね」「どうやってやるの?」と興味を示します。過保護に止めるのではなく、見守る姿勢が、挑戦意欲を育てます。もちろん、本当に危険なことは止めますが、適度なリスクは経験させます。
結果よりプロセスを認める文化も重要です。テストで100点を取ったことだけでなく、「毎日コツコツ勉強したね」という過程を認めます。試合に負けても、「最後まで諦めなかったね」という姿勢を褒めます。この関わりが、努力することの価値を教え、やり抜く力を育てます。
比較をしない文化も大切です。きょうだいや友だちと比較せず、その子自身の成長を見ます。「お兄ちゃんはできたのに」「〇〇ちゃんはもうできるのに」という言葉は、自己肯定感を傷つけます。「前よりできるようになったね」「この前は難しかったけど、今日はできたね」と、その子自身の過去と比較します。
感情を受け止める雰囲気も重要です。こどもが怒ったり、悲しんだり、怖がったりしたとき、「そんなことで泣かないの」と否定するのではなく、「悔しかったね」「怖かったね」と感情を受け止めます。感情を受け止めてもらえる経験が、感情の調整能力を育てます。
自主性を尊重する環境も大切です。「〇〇しなさい」と命令するのではなく、「どうしたい?」と選択肢を与えます。着る服、遊ぶ内容、宿題をする時間など、できる範囲で自分で決めさせます。自分で決めた経験が、自己決定力と責任感を育てます。
また、家庭が安全基地となることが重要です。外で嫌なことがあっても、家に帰れば安心できる、ありのままの自分でいられるという感覚が、こどもの心の安定につながります。この安定があってこそ、外の世界で挑戦する勇気が湧きます。
このように、心理的な家庭環境は、無条件の愛情、失敗の許容、挑戦の応援、プロセスの承認といった要素によって、こどもの自己肯定感と挑戦意欲を育てるのです。
心理的な環境を支えるのが、日々のコミュニケーションです。
非認知能力を育てる家族のコミュニケーション
非認知能力を育てる家族のコミュニケーションは、毎日の対話の時間を持ち、こどもの話をよく聞き、感情を言葉にする機会を提供し、考えを引き出す問いかけをすることです。
家族でのコミュニケーションは、非認知能力を育てる最も強力な手段の一つです。会話を通じて、こどもは自分の考えや感情を整理し、他者の視点を理解し、問題解決の方法を学びます。どのようなコミュニケーションが、非認知能力を育てるのでしょうか。
まず重要なのは、対話の時間を確保することです。忙しい日々の中でも、食事の時間、寝る前のひととき、通学路など、毎日決まった時間にこどもと話す時間を持ちます。スマートフォンを置いて、こどもに向き合う時間を作ることが大切です。長い時間である必要はなく、たとえ10分でも、質の高い対話ができれば十分です。
次に、こどもの話をよく聞くことです。こどもが話しているときは、途中で遮らず、最後まで聞きます。「うんうん」「それで?」と相づちを打ち、興味を持って聞いている姿勢を示します。すぐにアドバイスするのではなく、まず共感することが大切です。「それは嬉しかったね」「大変だったね」と気持ちを受け止めます。
感情を言葉にする機会を提供することも重要です。「今日はどんな気持ち?」「それを聞いてどう思った?」と感情について話す時間を持ちます。感情に名前をつけること(嬉しい、悲しい、怒っている、不安など)で、感情の理解と調整能力が育ちます。保護者自身も、「お母さんは今日こんなことがあって、嬉しかったよ」と感情を共有します。
考えを引き出す問いかけも効果的です。「今日学校で何があった?」という閉じた質問よりも、「今日一番楽しかったことは何?」「今日困ったことはあった?」という開いた質問の方が、会話が広がります。また、「どうしてそう思ったの?」「他にはどんな方法があると思う?」と深く考えさせる質問も、思考力を育てます。
問題が起きたときの対話も重要です。こどもが困難に直面したとき、すぐに解決策を与えるのではなく、「どうしたらいいと思う?」とこども自身に考えさせます。いくつかの選択肢を一緒に考え、それぞれのメリット・デメリットを話し合います。この対話が、問題解決能力を育てます。
家族会議も効果的です。週に一度、家族全員で集まり、今週の出来事や来週の予定、家庭のルールなどについて話し合います。こどもの意見も尊重し、家族の一員として参加させることで、責任感や協調性が育ちます。
食事の時間のコミュニケーションも大切です。テレビを消し、家族で会話しながら食事をする習慣が、コミュニケーション能力を育てます。「今日のハイライトは何?」「今日学んだことは?」といった話題で、会話を始めます。
また、一緒に何かをする中でのコミュニケーションも効果的です。料理を一緒に作る、庭の手入れをする、買い物に行くといった活動の中で、自然な会話が生まれます。この何気ない会話が、親子の絆を深め、こどもの話しやすい雰囲気を作ります。
ただし、無理に話させる必要はありません。特に思春期のこどもは、話したくない日もあります。「話したいときはいつでも聞くよ」という姿勢を示し、こどもが話したいときに聞ける環境を整えておくことが大切です。
このように、家族のコミュニケーションは、対話の時間、傾聴、感情の言語化、考えを引き出す問いかけによって、こどもの自己理解力、コミュニケーション能力、問題解決能力を育てるのです。
コミュニケーションと共に重要なのが、家庭の習慣とルールです。
非認知能力を育てる家庭の習慣とルール
非認知能力を育てる家庭の習慣とルールは、規則正しい生活リズム、こどもと一緒に決めた適切なルール、責任を持つお手伝い、柔軟に見直せる仕組みです。
家庭の習慣とルールは、自己管理能力、責任感、自己規律といった非認知能力を育てる重要な要素です。厳しすぎるルールは自主性を奪いますが、ルールがなさすぎても自己管理能力は育ちません。適度なルールと習慣が、こどもの成長を支えます。
まず基本となるのは、規則正しい生活リズムです。毎日だいたい同じ時間に起き、食事をし、寝るという習慣が、身体のリズムを整えるだけでなく、時間を意識する力、見通しを持つ力を育てます。特に就寝時間と起床時間を一定にすることが重要です。ただし、完璧である必要はなく、週末は少し遅く起きるなど、柔軟性も大切です。
お手伝いを習慣化することも効果的です。年齢に応じたお手伝い(食卓の準備、洗濯物をたたむ、掃除など)を、継続的に任せます。「今日はやって、明日はやらない」ではなく、「これはあなたの仕事」と責任を持たせることで、責任感と自己効力感が育ちます。完璧にできなくても、「ありがとう、助かったよ」と感謝を伝えます。
家庭のルールは、こどもと一緒に決めることが重要です。「ゲームは1日30分まで」「宿題が終わってから遊ぶ」といったルールを、一方的に押し付けるのではなく、なぜそのルールが必要か話し合います。こども自身が納得して決めたルールは、守る意欲が高まります。
ルールは明確で具体的にします。「早く寝なさい」ではなく、「9時までに布団に入る」、「ちゃんとしなさい」ではなく、「使ったおもちゃは元の場所に戻す」というように、具体的に決めます。明確なルールは、こどもが守りやすくなります。
ルールを守れなかったときの対応も重要です。厳しく罰するのではなく、なぜ守れなかったのか一緒に考えます。「今日はゲームの時間を守れなかったね。何があったの?」と聞き、「次はどうしたらいいかな?」と対策を考えます。この対話が、自己管理能力を育てます。
ルールは、こどもの成長に応じて見直すことも大切です。幼児期に決めたルールが、学童期には合わなくなることもあります。定期的に「このルール、まだ必要かな?」と見直し、必要に応じて変更します。こどもの意見も聞き、一緒に見直すプロセスが、柔軟性と問題解決能力を育てます。
また、ルールばかりではなく、自由な時間も確保します。すべてを管理するのではなく、「この時間は自由に使っていいよ」という時間を作ることで、自己決定力が育ちます。
家族の習慣として、感謝を伝え合うことも効果的です。食事の前に「いただきます」、寝る前に「今日ありがとう」と感謝を伝え合う習慣が、感謝の気持ちや思いやりを育てます。
読書の習慣も、家族で共有できると良いです。寝る前の読み聞かせ、週末の図書館訪問など、本に触れる習慣が、好奇心や学習意欲を育てます。
家族で過ごす時間を習慣化することも大切です。週末の朝ごはんを一緒に作る、日曜日の午後は家族で過ごすなど、家族の時間を大切にする習慣が、家族の絆を深めます。
このように、家庭の習慣とルールは、規則正しい生活リズム、こどもと決めた明確なルール、責任あるお手伝い、柔軟な見直しによって、自己管理能力と責任感を育てるのです。
非認知能力を育てる家庭環境とは、物理的には安全で探索できる空間と年齢に応じた遊びや学習の場所、心理的には無条件の愛情と失敗を許容する雰囲気、コミュニケーションでは対話の時間と考えを引き出す問いかけ、習慣とルールでは規則正しい生活とこどもと決めた明確なルールという4つの要素をバランスよく整えることで実現できるのです。
監修

略歴
| 2017年 | 本田右志理事長より右脳記憶教育講座を指南、「JUNKK認定マスター講師」取得 |
|---|---|
| 2018年 | 幼児教室アップルキッズをリビングサロンとして開講 |
| 2020年 | 佐々木進学教室Tokiwaみらい内へ移転、「佐々木進学教室幼児部」として再スタート |
| 2025年 | 一般社団法人 日本右脳記憶教育協会(JUNKK)代表理事に就任 |



