非認知能力はいつまで伸びる?年齢別の発達と臨界期について!

非認知能力

非認知能力はいつまで伸ばせるのか、何歳までに育てなければいけないのか、気になる保護者は多いでしょう。

「もう小学生だから手遅れかもしれない」「乳幼児期に何もしてこなかったから今さら無理」と諦める必要はありません。

脳科学の研究によれば、このような能力は年齢によって発達しやすい時期はあるものの、生涯にわたって伸ばし続けることが可能です。

ただし、乳幼児期が最も効果的な時期であることも事実であり、年齢に応じた適切なアプローチを知ることが大切です。

この記事では、非認知能力がいつまで伸びるのか、年齢別の発達の特徴と効果的な育て方について詳しく解説します。

非認知能力に臨界期はあるの?

非認知能力には言語習得のような明確な臨界期はなく、乳幼児期が最も効果的に育つ時期ではあるものの、生涯にわたって適切な経験や働きかけによって発達させることが可能です。

臨界期とは、ある能力を習得するのに最適な時期を指し、その時期を過ぎると習得が困難になるという概念です。例えば、言語能力には臨界期があり、幼少期が最も習得しやすく、年齢とともに新しい言語の習得は難しくなります。では、非認知能力にも同じような臨界期があるのでしょうか。

結論から言えば、非認知能力には言語のような厳密な臨界期はありません。確かに、乳幼児期が最も脳の可塑性が高く、非認知能力を育てる最適な時期であることは研究で示されています。特に0歳から6歳までの時期は、脳が急速に発達し、情動や社会性を司る脳の領域が形成される重要な時期です。この時期に適切な環境と経験があれば、非認知能力は効率的に育ちます。

しかし、この時期を過ぎたからといって、非認知能力が全く育たなくなるわけではありません。脳の可塑性は生涯にわたって維持されており、新しい経験や訓練によって、何歳になっても脳は変化し続けます。学童期、思春期、成人期、さらには高齢期に至るまで、適切な経験や働きかけがあれば、非認知能力を伸ばすことができます。

ノーベル経済学賞を受賞したジェームズ・ヘックマン教授の研究は、幼児期への投資の重要性を示しています。彼の研究によれば、幼児期に非認知能力を育てる教育を受けた子どもたちは、40年後も年収が高く、犯罪率が低く、健康状態が良いという結果が出ています。この研究から、「幼児期が最も投資効果が高い」ことは明らかですが、それは「幼児期以降は無駄」という意味ではありません。

むしろ、ヘックマン教授自身も、幼児期を過ぎた年齢でも非認知能力を育てることは可能だと述べています。ただし、年齢が上がるほど、習慣や考え方が固まっているため、変化させるには時間と意識的な努力が必要になります。幼児期なら遊びの中で自然に身につくことも、大人になると意識的に訓練する必要があるのです。

また、非認知能力の種類によっても、発達しやすい時期が異なります。愛着形成や基本的信頼感は乳幼児期が決定的に重要ですが、問題解決能力や自己管理能力は学童期以降も大きく発達します。リーダーシップや深い共感性は、思春期や成人期になって初めて十分に発達する側面もあります。

このように、非認知能力には厳密な臨界期はなく、乳幼児期が最も効果的な時期ではあるものの、生涯を通じて発達させることができるのです。

では、具体的に各年齢でどのような非認知能力が発達しやすいのか見ていきましょう。

年齢別の非認知能力の発達

年齢別の非認知能力の発達は、0〜3歳で愛着と基本的信頼感、4〜6歳で自律性と社会性、7〜12歳で自己管理能力と協調性、13〜18歳で自己同一性と目標設定能力、成人期以降で経験に基づく知恵と深い共感性が発達します。

非認知能力は、年齢とともに段階的に発達していきます。それぞれの時期に発達しやすい能力があり、その時期に適した経験を提供することで、効果的に育てることができます。各年齢での発達の特徴と重点を理解しておきましょう。

0〜3歳の乳児期は、愛着形成と基本的信頼感を育てる最も重要な時期です。この時期に安定した愛着関係を築くことが、すべての非認知能力の土台となります。養育者との応答的な関わりを通じて、「自分は愛されている」「困ったときには助けてもらえる」という感覚が育ちます。また、探索行動を通じて好奇心が育ち、感情の調整も少しずつ始まります。この時期は、十分な愛情と安全な環境の中で、自由に探索させることが重要です。

4〜6歳の幼児期は、自律性と社会性が大きく発達する時期です。「自分でやりたい」という欲求が強くなり、自己主張ができるようになります。友だちとの関わりが増え、協調性や共感性が育ち始めます。ごっこ遊びを通じて、他者の視点に立つ経験をします。ルールを守る、順番を待つといった自制心も育ちます。この時期は、遊びを十分にさせ、友だちとの関わりの機会を提供することが重要です。

7〜12歳の学童期は、自己管理能力と協調性がさらに発達する時期です。宿題を計画的に進める、時間を管理するといった自己管理能力が育ちます。チームスポーツや集団活動を通じて、協調性やリーダーシップが発達します。長期的な目標に向けて努力するやり抜く力も育ちます。失敗から学ぶレジリエンスも、この時期に大きく発達します。この時期は、責任を持たせ、自分で考えて行動する経験を増やすことが重要です。

13〜18歳の思春期は、自己同一性の確立と目標設定能力が発達する時期です。「自分とは何か」を問い、アイデンティティを形成します。将来への展望を持ち、長期的な目標を設定する能力が育ちます。抽象的な思考ができるようになり、より深い共感性や道徳性が発達します。この時期は、自分で選択し、決定し、その結果に責任を持つ経験が重要です。保護者は見守りながら、必要なときにサポートする距離感が大切です。

成人期以降も、非認知能力は発達し続けます。仕事や人間関係の中で、問題解決能力、協調性、リーダーシップがさらに洗練されます。人生経験を通じて、レジリエンス、深い共感性、知恵といった、成熟した非認知能力が育ちます。ただし、自然に育つわけではなく、意識的な努力や新しい挑戦が必要です。この時期は、学び続ける姿勢と、柔軟に変化する意欲が重要です。

このように、非認知能力は年齢とともに段階的に発達し、それぞれの時期に適した能力が育つため、年齢に応じたアプローチが効果的なのです。

年齢別の発達を理解したところで、特に重要な乳幼児期の育て方を見ていきましょう。

乳幼児期が最も重要な理由と育て方

乳幼児期が最も重要な理由は、脳の発達が急速で可塑性が高く、愛着形成という全ての非認知能力の土台が形成され、この時期の経験が生涯にわたって影響を与えるからです。

非認知能力はいつまでも伸ばせるとはいえ、乳幼児期が最も重要な時期であることは間違いありません。この時期に適切な環境と経験を提供することが、その後の人生に大きな影響を与えます。なぜ乳幼児期がこれほど重要なのか、そしてどう関わればよいのかを理解しておきましょう。

乳幼児期の重要性の第一の理由は、脳の発達が最も急速な時期だからです。生まれたときの脳は未熟で、3歳までに成人の約80%の大きさに成長します。特に、情動や社会性を司る脳の領域が急速に発達するのがこの時期です。神経細胞のつながり(シナプス)が爆発的に増え、経験によってそのつながりが強化されたり、不要なものが削減されたりします。この時期の経験が、脳の配線を形成するのです。

第二の理由は、愛着形成の臨界期だからです。生後6ヶ月から2歳頃までが、特定の養育者との愛着関係を形成する重要な時期です。この時期に安定した愛着を形成できないと、後の人間関係や情緒の安定に影響が出る可能性があります。愛着は、すべての非認知能力の土台となる基本的信頼感や自己肯定感を育てます。

第三の理由は、この時期の経験が生涯にわたって影響するからです。虐待や極度のネグレクトといった深刻な逆境体験は、ストレス反応システムに長期的な影響を与え、後のメンタルヘルスや身体的健康にも影響します。逆に、温かく応答的な環境で育つと、ストレスに強い脳が育ちます。

第四の理由は、この時期の投資効果が最も高いからです。ヘックマン教授の研究が示すように、幼児期への投資は、後の学力向上や社会的成功につながり、長期的なリターンが大きいのです。早い時期に土台を築くことで、その後の発達がスムーズになります。

では、乳幼児期にどう関わればよいのでしょうか。最も重要なのは、応答的な関わりです。こどもの発するサイン(泣く、笑う、声を出すなど)に敏感に気づき、適切に応えることが愛着形成につながります。泣いたらすぐに駆けつける、笑顔を返す、話しかけられたら応答する、こうした日々の積み重ねが大切です。

スキンシップも重要です。抱っこする、頬を寄せる、優しく撫でるといった身体的な触れ合いは、安心感を与え、愛着を深めます。マッサージや一緒に遊ぶことも、親子の絆を強めます。

自由な探索を許すことも大切です。危険なこと以外は、できるだけ自由に探索させます。「触らないで」「ダメ」ばかり言うのではなく、安全な環境を作った上で、好奇心に従って探索させます。この経験が、好奇心や学習意欲を育てます。

語りかけも重要です。まだ言葉を話せない赤ちゃんにも、たくさん話しかけます。「おむつ替えようね」「お腹すいたね」「お花がきれいだね」といった日常の語りかけが、言語能力だけでなく、コミュニケーションへの意欲を育てます。

一緒に遊ぶ時間を持つことも大切です。おもちゃで一緒に遊ぶ、絵本を読む、歌を歌う、体を動かして遊ぶといった時間が、親子の関係を深め、こどもの発達を促します。

このように、乳幼児期は脳の発達が最も急速で愛着形成の重要な時期であり、応答的な関わり、スキンシップ、自由な探索、語りかけ、一緒に遊ぶ時間といった日々の関わりが、生涯の非認知能力の土台を築くのです。

乳幼児期を過ぎた年齢でも、非認知能力を伸ばすことはできます。

学童期以降でも非認知能力を伸ばす方法

学童期以降でも非認知能力を伸ばすには、責任ある役割を与える、長期的な目標に挑戦させる、失敗から学ぶ経験を積ませる、多様な人との関わりを持たせる、メタ認知を促す振り返りをさせることが効果的です。

「乳幼児期に十分なことをしてあげられなかった」と後悔する保護者もいるかもしれません。しかし、焦る必要はありません。学童期以降でも、適切な関わりと経験によって、非認知能力を十分に伸ばすことができます。年齢が上がった分、より意識的で計画的なアプローチが必要になりますが、確実に成長させることができます。

第一の方法は、責任ある役割を与えることです。学童期のこどもには、家庭での役割(お手伝い、下の兄弟の世話など)や学校での役割(係活動、委員会活動など)を通じて、責任感を育てます。「あなたに任せるね」と信頼して任せることで、自己効力感と責任感が育ちます。最初はうまくできなくても、長期的に見守ることが大切です。

第二の方法は、長期的な目標に挑戦させることです。夏休みの自由研究、スポーツの大会、楽器の発表会など、すぐには達成できない目標に向けて努力する経験が、やり抜く力を育てます。保護者は、目標設定を手伝い、進捗を見守り、励ますことでサポートします。途中で挫折しそうになったときの対処法を一緒に考えることも、レジリエンスを育てます。

第三の方法は、失敗から学ぶ経験を積ませることです。失敗したときに責めるのではなく、「何が原因だったと思う?」「次はどうする?」と振り返りを促します。失敗を分析し、改善策を考える経験が、問題解決能力と成長マインドセットを育てます。保護者自身の失敗談を共有することも、失敗は成長の機会だと教えます。

第四の方法は、多様な人との関わりを持たせることです。学校や家庭以外の場所で、年齢や背景の異なる人と交流する経験が、社会性や共感性を育てます。ボランティア活動、地域の活動、キャンプなどに参加させることで、新しい価値観に触れ、視野が広がります。

第五の方法は、メタ認知を促す振り返りをさせることです。「今日はどんなことがあった?」「何が楽しかった?」「何が難しかった?」と振り返る時間を持ちます。自分の行動や感情を客観的に見る習慣が、自己理解と自己管理能力を育てます。日記をつけることも効果的です。

第六の方法は、自己決定の機会を増やすことです。「宿題をいつやるか」「週末に何をするか」「どの習い事を続けるか」といった選択を、できるだけこども自身にさせます。自分で決めたことに責任を持つ経験が、自律性と責任感を育てます。

第七の方法は、感情のコントロールを教えることです。怒りや悲しみといった感情を感じたときに、深呼吸をする、その場を離れる、信頼できる人に話すといった対処法を教えます。感情を抑圧するのではなく、適切に表現し、調整する方法を学びます。

思春期になると、さらに重点が変わります。この時期は、自分で考え、選択し、責任を取る経験が重要です。保護者は「〇〇しなさい」と指示するのではなく、「どうしたい?」と本人の意思を尊重します。失敗しても、自分で対処させ、必要なときだけサポートします。この自律性の獲得が、成人期の非認知能力の基盤となります。

このように、学童期以降でも、責任ある役割、長期的な挑戦、失敗からの学び、多様な関わり、振り返り、自己決定といった経験を通じて、非認知能力を確実に伸ばすことができるのです。

では、大人になってからでも非認知能力を伸ばすことは可能なのでしょうか。

大人になってからでも非認知能力は伸びる

大人になってからでも非認知能力は伸ばすことができ、新しい挑戦、習慣化、マインドフルネス、他者との協働、専門家のサポートといった意識的な実践によって確実に成長させることが可能です。

「もう大人だから今さら変われない」と諦める必要はありません。脳の可塑性は生涯にわたって維持されており、何歳になっても、新しい経験や訓練によって脳は変化し続けます。確かに、こどもの頃ほど柔軟ではなく、変化には時間と意識的な努力が必要ですが、大人になってからでも非認知能力を伸ばすことは十分に可能です。

実際、多くの成功した人々は、大人になってから非認知能力を伸ばした経験を持っています。困難な状況を乗り越える中でレジリエンスを獲得したり、リーダーの経験を通じてリーダーシップを育てたり、失敗から学んで問題解決能力を高めたりしています。

大人が非認知能力を伸ばす方法として、まず新しいことに挑戦することが重要です。今まで避けてきたこと、苦手だと思っていたことに、小さく挑戦してみます。例えば、人前で話すのが苦手なら、まず少人数の場で意見を言ってみる。運動が苦手なら、初心者向けのクラスに参加してみる。この挑戦の経験が、自己効力感を高めます。

習慣化も効果的です。毎朝決まった時間に起きる、毎日運動する、計画的にお金を管理するといった良い習慣を、一つずつ身につけます。習慣は自己管理能力を高め、やり抜く力を育てます。小さな習慣から始め、徐々に難しい習慣に挑戦します。

マインドフルネスや瞑想も、感情のコントロール能力を高めます。自分の感情に気づき、それを客観的に観察する練習をすることで、感情に飲み込まれにくくなります。毎日数分間の実践でも、効果があります。

他者と協働する経験も重要です。ボランティア活動、趣味のサークル、地域の活動など、共通の目標に向かって他者と協力する経験が、協調性を育てます。最初は苦手でも、少しずつスキルが身につきます。

専門家のサポートを受けることも有効です。カウンセラーやコーチの助けを借りて、考え方や行動パターンを変えることができます。認知行動療法は、非認知能力を高める効果的な方法として知られています。

重要なのは、完璧を目指さず、少しずつの改善を積み重ねることです。焦らず、自分のペースで、できることから始めることが大切です。

非認知能力に明確な臨界期はなく、乳幼児期が最も効果的な時期ではあるものの生涯にわたって伸ばすことができ、年齢別に発達しやすい能力は異なりますが、学童期以降も大人になってからも、意識的な経験と実践によって確実に成長させることが可能なのです。

監修

代表理事
佐々木知香

略歴

2017年 本田右志理事長より右脳記憶教育講座を指南、「JUNKK認定マスター講師」取得
2018年 幼児教室アップルキッズをリビングサロンとして開講
2020年 佐々木進学教室Tokiwaみらい内へ移転、「佐々木進学教室幼児部」として再スタート
2025年 一般社団法人 日本右脳記憶教育協会(JUNKK)代表理事に就任
塾講師として中高生の学習指導に長年携わる中で、幼児期・小学校期の「学びの土台づくり」の重要性を痛感。
結婚を機に地方へ移住後、教育情報や環境の地域間格差を実感し、「地域に根差した実践の場をつくりたい」との想いから、幼児教室アップルキッズを開校。
発達障害や不登校の支援、放課後等デイサービスでの指導、子ども食堂での学習支援など、多様な子どもたちに寄り添う教育活動を展開中。