非認知能力を育てる子育てについて、具体的に何をすればよいのか悩む保護者は少なくありません。
特別な教育を受けさせなくても、日常の関わり方を少し意識するだけで、こどもの能力は大きく伸びていきます。
朝の準備、食事の時間、遊びの場面、寝る前のひとときなど、毎日の何気ない瞬間が、実はこの能力を育てる絶好の機会なのです。
難しいことや特別なことをする必要はなく、保護者の声かけや関わり方を工夫することが、このような能力の育成の鍵となります。
この記事では、家庭で今日から実践できる、非認知能力を育てる子育ての具体的な方法を7つご紹介します。
非認知能力を育てる子育ての基本的な考え方とは?
非認知能力を育てる子育ての基本は、こどもを信じて見守り、失敗を許容し、プロセスを大切にする姿勢を持つことです。
多くの保護者は、こどもに幸せな人生を送ってほしいと願っています。そのために、良い教育を受けさせたい、良い学校に入れたいと考えるのは自然なことです。しかし、非認知能力を育てるという観点から子育てを見直すと、特別な教育よりも、日常の何気ない関わり方の方が重要であることが分かります。非認知能力は、習い事や教材ではなく、家庭での経験を通じて育まれるからです。
まず大切なのは、こどもを一人の人間として尊重することです。こどもは大人の所有物でも、夢を託す対象でもありません。一人の独立した人格を持った存在として、その意思や感情を尊重する姿勢が、自己肯定感の土台となります。「〇〇しなさい」と命令するのではなく、「どうしたい?」と聞いてみる。「これはダメ」と否定するのではなく、「どうしてそう思ったの?」と理由を聞いてみる。このような対話を通じて、こどもは自分で考え、判断する力を育てていきます。
次に、失敗を許容する環境をつくることが重要です。失敗のない人生はありませんし、失敗なくして成長もありません。こどもが牛乳をこぼしたとき、「何やってるの!」と叱るのではなく、「こぼれちゃったね。どうしたらいいかな?」と一緒に対処法を考える。テストで悪い点を取ったとき、「なんでこんな点数なの!」と責めるのではなく、「どこが難しかった?」と振り返りを促す。失敗を責められない環境があってこそ、こどもは挑戦する勇気を持てます。
そして、結果よりもプロセスを大切にすることです。できた・できないという結果だけでなく、そこに至るまでの過程に注目します。「テストで100点取れたね、すごい!」だけでなく、「毎日コツコツ勉強してたもんね」と努力を認める。「試合に負けちゃったね」で終わらせず、「最後まで諦めずに走ってたね」とプロセスを評価する。この姿勢が、努力することの価値をこどもに伝えます。
また、保護者自身が完璧である必要はないことも理解しておきましょう。子育てに正解はなく、誰もが試行錯誤しながら親になっていきます。保護者が失敗したり、分からないことがあったりする姿を見せることも、こどもにとっては学びです。「お母さんもこれ難しいな」「お父さんも間違えちゃった」という姿を見ることで、こどもは完璧でなくていいこと、失敗しても大丈夫だということを学びます。
つまり、非認知能力を育てる子育ての基本は、こどもの主体性を尊重し、失敗を成長の機会と捉え、結果ではなく努力の過程を認める姿勢なのです。
この基本的な考え方を踏まえて、まず日常の声かけで実践できる方法を見ていきましょう。
非認知能力を育てる声かけと関わり方
非認知能力を育てる声かけとは、努力やプロセスを具体的に認め、失敗を肯定的に捉え直し、こども自身に考えさせる問いかけをすることです。
保護者の何気ない一言が、こどもの非認知能力に大きな影響を与えます。同じ場面でも、どんな言葉をかけるかによって、こどもが学ぶことは全く変わってきます。褒め方一つ、励まし方一つで、こどもの自己肯定感ややり抜く力が育つかどうかが決まると言っても過言ではありません。日々の声かけを少し意識するだけで、子育ての質は大きく変わります。
プロセスを認める声かけ
結果だけでなく、そこに至るまでの過程を認める声かけが、非認知能力を育てます。「すごいね」「えらいね」といった抽象的な褒め言葉ではなく、具体的に何が良かったのかを伝えることが重要です。
例えば、こどもが絵を描いたとき、「上手だね」だけで終わらせるのではなく、「この色の組み合わせが面白いね」「細かいところまで丁寧に描いたね」「最初より色使いが工夫されてるね」といった具体的な観察を伝えます。これによって、こどもは何が評価されているのかを理解し、自分の工夫や努力が認められていることを実感します。
勉強の場面でも同様です。「100点取れたね、すごい!」だけでなく、「毎日15分ずつ勉強してたもんね」「分からないところを質問しに来てたよね」「間違えた問題をもう一度解き直してたね」といった、結果に至るまでのプロセスを具体的に認めます。こうすることで、こどもは「努力すれば成果が出る」という経験を積み、やり抜く力が育ちます。
また、結果が出なかったときこそ、プロセスを認める声かけが重要です。「テストの点数は良くなかったけど、前回より勉強時間を増やしてたよね」「試合には負けたけど、最後まで諦めずに走ってたね」「うまくいかなかったけど、新しい方法を試そうとしてたね」といった声かけが、こどもの努力を無駄にせず、次への意欲につなげます。
失敗を学びに変える声かけ
失敗したときの声かけは、こどもの非認知能力を育てる最大のチャンスです。失敗を責めるのではなく、そこから何を学べるかに焦点を当てます。
こどもが何かに失敗したとき、まず感情を受け止めることが大切です。「悔しいね」「残念だったね」「がっかりしたね」と気持ちに共感することで、こどもは自分の感情を受け止めてもらえたと感じ、落ち着きを取り戻せます。感情を否定したり、「そんなことで泣かないの」と抑圧したりするのではなく、まずは気持ちを受け止めましょう。
その上で、「何が原因だったと思う?」「次はどうしてみる?」といった問いかけをします。答えを与えるのではなく、こども自身に考えさせることが重要です。自分で原因を分析し、改善策を考える経験が、問題解決能力を育てます。保護者はアドバイスをしたくなるかもしれませんが、まずはこどもの考えを聞き、必要に応じてヒントを与える程度に留めましょう。
また、失敗を成長の証として捉え直す声かけも効果的です。「失敗するってことは、新しいことに挑戦してるってことだね」「前はできなかったことに挑戦できるようになったんだね」といった言葉は、失敗を否定的に捉えず、挑戦の証として肯定的に捉え直す視点を与えます。
さらに、保護者自身の失敗談を共有することも有効です。「お父さんも昔、同じような失敗をしたよ」「お母さんもそういうこと、よくあるよ」と伝えることで、こどもは失敗が特別なことではなく、誰にでもあることだと理解します。そして、「そのとき、こうやって乗り越えたんだ」と解決策まで伝えることで、困難への対処法を学べます。
このように、プロセスを認め、失敗を学びに変える声かけを日常的に実践することで、こどもの自己肯定感、やり抜く力、問題解決能力が育つのです。
次は遊びの中で非認知能力を育てる方法を見ていきましょう。
遊びを通じて非認知能力を育てる方法
遊びは、こどもが主体的に楽しみながら試行錯誤し、創造性や社会性を育てる最高の学びの場です。
「遊んでばかりいないで勉強しなさい」と言いたくなることもあるでしょう。しかし、特に乳幼児期から学童期にかけて、遊びこそが最も重要な学びの時間です。遊びの中で、こどもは自ら考え、工夫し、失敗し、再挑戦するという、非認知能力を育てるプロセスを自然に経験します。大人が与える課題ではなく、自分がやりたいことに夢中になれる遊びだからこそ、深い学びが生まれるのです。
家庭でできる遊びの工夫
家庭での遊びは、特別なおもちゃや教材がなくても、工夫次第で非認知能力を育てる豊かな経験になります。
積み木やブロック遊びは、創造性と問題解決能力を育てます。「高く積むにはどうすればいい?」「この形を作るには?」と試行錯誤する中で、論理的思考と粘り強さが育ちます。保護者は作品を評価するのではなく、「どうやって作ったの?」「次は何を作りたい?」と興味を示すことで、こどもの創造意欲を高められます。
ごっこ遊びは、社会性と共感性を育てます。お店屋さんごっこ、お医者さんごっこ、家族ごっこなど、役割を演じる中で、他者の視点に立つ経験ができます。保護者も一緒に参加し、「お客さんは何が欲しいかな?」「患者さんはどんな気持ちかな?」と問いかけることで、こどもの想像力と共感性を刺激します。
ボードゲームやカードゲームは、ルールを守る経験と、勝ち負けを受け入れる経験を与えます。順番を待つ、ルールに従う、負けても泣かないといった自制心が育ちます。また、戦略を考えたり、確率を考えたりすることで、論理的思考も養われます。負けたときに悔しがるこどもには、「悔しいね。でも最後まであきらめなかったね」と感情を受け止めつつ、プロセスを認めましょう。
料理やお菓子作りも、非認知能力を育てる良い活動です。レシピを読んで手順を理解する、材料を測る、失敗しても最後まで作り上げるといった経験は、計画性、忍耐力、達成感を育てます。多少失敗しても、「次はどうしたらいいかな?」と一緒に考えることで、問題解決能力が育ちます。
工作や絵画も、創造性を育てる遊びです。作品の出来栄えよりも、「自分なりの表現を楽しむこと」「最後まで作り上げること」が重要です。「もっとこうしたら?」と大人が指示するのではなく、こどもの自由な発想を尊重しましょう。
外遊びや自然体験の効果
外遊びや自然の中での経験は、身体を動かしながら多様な非認知能力を育てます。
公園での遊びは、社会性を育てる場です。ブランコやすべり台で順番を待つ、知らないこどもと一緒に遊ぶ、遊具の使い方でルールを守るといった経験を通じて、社会性や自制心が育ちます。保護者は見守りながら、必要なときだけサポートし、こども同士で解決できる機会を与えましょう。
鬼ごっこやかくれんぼといった集団遊びは、協調性と創造性を育てます。ルールを守りながら、どうすれば捕まらないか、どこに隠れればいいかを考える経験は、戦略的思考と判断力を養います。また、役割交代や、遊びのルールをみんなで決めるといった経験も、民主的な態度を育てます。
自然の中での遊び(虫探し、石集め、木登り、川遊びなど)は、好奇心と探究心を育てます。自然は予測できない要素が多く、「どうしてこうなるんだろう?」という疑問が次々と湧いてきます。保護者がすぐに答えを教えるのではなく、「なんでだろうね?」「調べてみようか?」と一緒に探究する姿勢を見せることで、学ぶことへの意欲が高まります。
また、自然の中では多少の危険も経験します。木登りで少し高いところまで登る、川で石の上を渡るといった挑戦は、リスクを評価し、自分の能力を試す経験となります。もちろん危険な状況は避けるべきですが、適度なリスクのある遊びは、勇気と慎重さのバランスを育てます。保護者は「危ない!やめなさい!」と制止するのではなく、「気をつけてね」「無理しないでね」と見守る姿勢が大切です。
このように、家庭での遊びも外遊びも、こどもが主体的に楽しみながら非認知能力を育てる貴重な機会なのです。
次は生活習慣の中での育て方を見ていきましょう。
生活習慣の中で非認知能力を育てる
日常の生活習慣、特にお手伝いや家庭でのルール作りは、責任感、自己管理能力、協調性を育てる絶好の機会です。
特別なことをしなくても、朝起きてから夜寝るまでの日常生活の中に、非認知能力を育てるチャンスはたくさんあります。朝の準備、食事、片付け、入浴、就寝といった毎日繰り返される活動こそが、習慣を形成し、自己管理能力を育てる場となります。生活習慣は毎日のことだからこそ、その積み重ねが大きな力となります。
お手伝いは、非認知能力を育てる最も効果的な方法の一つです。食卓の準備、洗濯物をたたむ、掃除、ゴミ出しなど、家族の一員として役割を果たす経験が、責任感と自己効力感を育てます。年齢に応じてできることから始め、徐々に難しい仕事にも挑戦させましょう。
2〜3歳なら、テーブルにお箸を並べる、洗濯物を運ぶといった簡単な手伝いから始められます。4〜6歳になると、食器を運ぶ、おもちゃを片付ける、自分の服をたたむといったことができます。小学生になれば、料理の手伝い、部屋の掃除、買い物のメモ作りなど、より複雑な仕事も任せられます。
お手伝いをさせるときのポイントは、完璧を求めないことです。最初はうまくできなくても、「やってくれてありがとう」「助かったよ」と感謝を伝えましょう。失敗しても責めず、「次はこうしてみようか」と一緒に考えます。また、お手伝いを「やらされること」ではなく、「家族の一員としての役割」として位置づけることで、こどもは誇りを持って取り組めます。
生活リズムを整えることも、自己管理能力を育てます。毎日同じ時間に起きる、食事をする、寝るといった規則的な生活が、身体のリズムを整えるだけでなく、時間を意識する習慣を育てます。小学生になれば、「7時までに準備を終わらせる」「8時には寝る」といった時間管理を少しずつ自分でできるようサポートします。
家庭でのルール作りは、自己規律と責任感を育てます。「ゲームは1日30分まで」「宿題が終わってから遊ぶ」「食事中はテレビを消す」といったルールを、保護者が一方的に決めるのではなく、こどもと一緒に話し合って決めることが重要です。なぜそのルールが必要なのか、守らなかったらどうなるのかを一緒に考えることで、ルールの意味を理解し、守る意欲が高まります。
また、ルールを守れなかったときの対応も重要です。厳しく罰するのではなく、「なぜ守れなかったのか」を一緒に振り返り、「次はどうすればいいか」を考えます。この対話を通じて、自己コントロール能力と問題解決能力が育ちます。
片付けの習慣も、計画性と責任感を育てます。「遊んだら片付ける」「使ったものは元の場所に戻す」といった習慣は、自分の行動に責任を持つ姿勢を育てます。最初は保護者と一緒に片付け、徐々に自分でできるようにします。完璧でなくても、「自分で片付けようとしたね」とプロセスを認めることが大切です。
このように、日常の生活習慣やお手伝い、ルール作りといった何気ない経験が、こどもの責任感、自己管理能力、協調性を着実に育てていくのです。
次は年齢別の子育てのポイントを見ていきましょう。
年齢別の子育てで気をつけるポイント
非認知能力を育てる子育ては、乳幼児期は愛着形成と基本的信頼感、幼児期は自律性と社会性、学童期は自己管理能力と責任感といった、年齢ごとの発達課題に応じて重点を変えることが重要です。
非認知能力を育てる基本的な姿勢はどの年齢でも共通していますが、発達段階によって、特に意識すべきポイントは変わってきます。こどもの発達段階を理解し、その時期に最も伸びやすい能力に焦点を当てることで、より効果的な子育てができます。無理に先取りする必要はなく、今その時期に育つべきものを大切に育てることが、長期的な成長につながります。
0〜2歳の乳幼児期は、愛着形成が最も重要です。この時期に安定した愛着関係を築くことが、すべての非認知能力の土台となります。こどもが泣いたらすぐに応える、笑顔を返す、優しく抱きしめるといった応答的な関わりを大切にしましょう。「泣いても放っておけば我慢強くなる」という考えは誤りです。むしろ、十分に甘えさせることで、安心感が育ち、後の自立につながります。また、この時期は危険なこと以外は「ダメ」と制止せず、自由に探索させることが好奇心を育てます。
3〜6歳の幼児期は、自律性と社会性が育つ時期です。「自分でやりたい」という欲求が強くなるので、時間がかかっても見守り、自分でできる経験を増やしましょう。着替え、靴を履く、トイレに行くなど、できることは自分でさせます。また、ごっこ遊びを十分にさせることで、想像力や社会性が育ちます。友だちとのトラブルも成長のチャンスです。すぐに介入せず、自分たちで解決できるよう見守りながら、必要に応じてサポートします。この時期は、「〇〇しなさい」という命令形よりも、「どうしたい?」と選択肢を与える関わり方が自主性を育てます。
7〜12歳の学童期は、自己管理能力と責任感を育てる時期です。宿題や習い事のスケジュール管理を、少しずつ自分でできるようサポートします。最初は保護者と一緒に計画を立て、徐々に自分で管理できるようにします。失敗したときこそ学びのチャンスです。「宿題を忘れて先生に叱られた」という失敗経験から、「次はどうすればいいか」を自分で考えさせることが、自己管理能力を育てます。また、友人関係が複雑になる時期なので、こどもの話をよく聞き、気持ちを受け止めることが大切です。ただし、すぐに解決策を与えるのではなく、「あなたはどうしたい?」と本人に考えさせることで、問題解決能力が育ちます。
思春期に入ると、親離れが始まります。この時期は、干渉しすぎず、でも関心は持ち続けるという距離感が大切です。こどもが話したいときには耳を傾け、話したくないときは無理に聞き出さず、見守る姿勢が信頼関係を維持します。また、自分で決めて、その結果に責任を持つ経験が重要になります。進路、友人関係、時間の使い方など、できるだけ本人に決めさせ、失敗したときもサポートしながら自分で乗り越えさせることが、自立を促します。
どの年齢においても共通して大切なのは、こどもの発達段階を理解し、その時期に育つべきことを焦らず丁寧に育てる姿勢です。
非認知能力を育てる子育ては、特別なことではなく、日常の関わり方の中にあります。こどもの主体性を尊重し、失敗を許容し、プロセスを認める基本姿勢を持ちながら、声かけを工夫し、遊びを大切にし、生活習慣の中で学ぶ機会を作ることが重要です。
年齢に応じた発達課題を理解し、その時期に育つべき力を丁寧に育てることで、こどもは自己肯定感、やり抜く力、協調性といった非認知能力を着実に身につけていきます。完璧な親である必要はなく、こどもと一緒に試行錯誤しながら成長していく姿勢こそが、最も大切な子育ての在り方なのです。
監修

略歴
| 2017年 | 本田右志理事長より右脳記憶教育講座を指南、「JUNKK認定マスター講師」取得 |
|---|---|
| 2018年 | 幼児教室アップルキッズをリビングサロンとして開講 |
| 2020年 | 佐々木進学教室Tokiwaみらい内へ移転、「佐々木進学教室幼児部」として再スタート |
| 2025年 | 一般社団法人 日本右脳記憶教育協会(JUNKK)代表理事に就任 |



