後追いで泣かない理由とは?愛着形成との関係について!

後追い

保護者が離れても泣かずに遊び続ける、後追いはするけれど泣かない、そんな我が子の様子に不安を感じることはありませんか。

周りのこどもは保護者の姿が見えなくなると激しく泣くのに、我が子はそうじゃないと、愛着が薄いのではないかと心配する保護者もいるでしょう。

しかしこの理由は様々で、気質による違いや成長による慣れが関係しています。

後追いで泣かないことが必ずしも問題を意味するわけではなく、愛着形成のサインを総合的に見ることが大切です。

この記事では、後追いで泣かない理由と、愛着形成との関係について詳しく解説します。

後追いで泣かない理由は?

後追いで泣かない理由は、こどもの気質による感情表現の違いと、成長に伴う慣れによるものが主です。

後追いは、保護者と離れることへの不安から起こる行動ですが、その表現方法はこどもによって異なります。激しく泣くこどももいれば、泣かずに追いかけるだけのこどももいます。泣かないからといって、不安を感じていないわけではありません。感情の表現方法が違うだけなのです。

気質による違い

後追いで泣かない最も大きな理由は、こどもの生まれ持った気質の違いです。

気質とは、生まれつき持っている性格的な傾向のことで、感情表現の仕方も気質に大きく影響されます。不安を激しく泣いて表現する気質のこどももいれば、静かに不安を感じる気質のこどももいます。後追いで泣かないこどもは、感情を内に秘めるタイプか、不安の程度が軽いタイプである可能性が高いでしょう。

感情表現が控えめな気質のこどもは、不安を感じていても、それを激しく表に出しません。保護者を追いかけることで不安を表現し、泣くという手段は使わないのです。こうしたこどもは、成長してからも、感情を穏やかに表現する傾向があります。必ずしも感情が薄いわけではなく、表現方法が違うだけです。

情緒が安定している気質のこどもも、後追いで泣かないことがあります。保護者と離れることに多少の不安は感じますが、その不安の程度が激しく泣くほどではないのです。「保護者がいなくなったけれど、まあ大丈夫」と思える余裕があるため、泣かずに落ち着いて追いかけます。

自立心が強い気質のこどもも、泣かずに後追いをすることがあります。保護者を求める気持ちはありますが、自分で対処できるという自信があるため、泣く必要を感じません。自分の足で追いかけていけばいいと判断し、泣くという受動的な方法ではなく、追いかけるという能動的な方法を選ぶのです。

泣くことへの抵抗が少ない気質と、泣くことへの抵抗が強い気質もあります。何かあればすぐに泣いて助けを求める気質のこどももいれば、できるだけ泣かずに自分で何とかしようとする気質のこどももいます。後追いで泣かないこどもは、後者のタイプである可能性が高いでしょう。

気質による感情表現の違いが、後追いで泣くか泣かないかの大きな要因です。

慣れと成長

後追いで泣かないもうひとつの理由は、経験を積んで慣れたことと、認知的な成長です。

後追いが始まった当初は泣いていたこどもでも、時間が経つにつれて泣かなくなることがあります。保護者が離れても必ず戻ってくるという経験を重ねることで、不安が軽減されていくのです。「ママ(パパ)はトイレに行っただけで、すぐ戻ってくる」と理解できるようになると、泣く必要を感じなくなります。

対象の永続性の理解が深まることも、泣かなくなる理由です。対象の永続性とは、目の前から見えなくなっても、物や人は存在し続けるという理解のことです。この理解が深まると、保護者が見えなくなっても「どこかにいる」と分かるため、パニックにならずに済みます。泣かずに落ち着いて探すことができるのです。

言葉の理解が進むことも影響します。保護者が「すぐ戻ってくるよ」と言葉で説明すると、その意味を理解できるようになります。言葉による説明が理解できることで、安心感が生まれ、泣かずに待てるようになります。1歳を過ぎると、この傾向が強くなります。

記憶力の発達も関係しています。以前、保護者が離れても戻ってきた記憶があると、「今回も戻ってくるだろう」と予測できるようになります。過去の経験が記憶として蓄積され、それが安心材料になるのです。何度も同じパターンを経験することで、泣かずに対処できるようになります。

月齢が上がるにつれて、感情のコントロール能力も向上します。不安を感じても、すぐに泣くのではなく、少し我慢できるようになります。また、自分で気持ちを落ち着かせる方法を学ぶこともあります。指しゃぶりをする、お気に入りのおもちゃを持つなど、自己調整の方法を身につけると、泣かずに対処できます。

慣れと成長により、後追いはするけれど泣かなくなるという変化が起こります。

後追いで泣かない理由が分かると、それが問題なのかどうかという疑問が浮かびます。

後追いで泣かないことは問題なの?

後追いで泣かないことは、多くの場合問題ではなく、こどもの気質や成長段階を反映しているだけです。

後追いで泣くことが愛着の強さを示すと思われがちですが、泣く・泣かないは愛着の深さとは別の問題です。後追いという行動自体が、保護者を特別な存在として認識している証拠であり、泣かなくても愛着は形成されています。泣くことは感情表現の一つの方法に過ぎず、それがすべてではないのです。

後追いで泣かないこどもでも、保護者を追いかける行動をしている時点で、保護者を求めています。泣かずに追いかけることも、立派な愛着行動です。むしろ、泣かずに自分で対処しようとする姿は、自立心や問題解決能力の芽生えとも言えます。

後追いで泣かないことには、保護者にとってのメリットもあります。泣き声を聞かなくて済む、周囲に気を遣わなくて済む、こども自身も激しく泣くストレスを感じずに済むなど、プラスの面も多いのです。後追いで激しく泣くこどもの保護者から見れば、羨ましいと感じることもあるでしょう。

ただし、後追いもせず、泣きもせず、保護者がいなくなっても全く気にしない場合は、少し注意が必要です。保護者の存在を特別に認識していない可能性があります。しかし、後追いという行動がある時点で、保護者を特別な存在として認識していることは確かです。泣かないことだけを心配する必要はありません。

後追いで泣かないこと自体は問題ではなく、こども全体の発達や愛着行動を総合的に見ることが重要です。

では、愛着形成のサインは、どのように確認すればよいのでしょうか。

愛着形成のサインを確認する

後追いで泣かなくても、他の愛着形成のサインが見られれば、愛着は順調に育っています。

愛着形成とは、こどもが特定の養育者との間に築く情緒的な絆のことです。この絆は、後追いで泣くかどうかだけで判断できるものではありません。様々な行動や反応から、総合的に判断することが大切です。後追いで泣かなくても、他のサインがあれば、愛着は十分に形成されています。

保護者への反応

保護者への特別な反応があるかどうかが、愛着形成の重要なサインです。

最も分かりやすいサインは、保護者を見て笑顔を見せることです。保護者の顔を見ると嬉しそうに笑う、声を聞くと振り向く、近づくと手を伸ばすなどの反応があれば、保護者を特別な存在として認識しています。後追いで泣かなくても、こうした日常的な反応があれば問題ありません。

保護者に抱かれると安心するというのも重要なサインです。泣いているときに保護者が抱っこすると落ち着く、眠いときに保護者にしがみつく、不安なときに保護者の腕の中に入ってくるなどの様子が見られれば、愛着は育っています。誰に抱かれても同じではなく、保護者に抱かれることで特別に安心するという反応が大切です。

保護者の存在を確認する行動も愛着のサインです。一人で遊んでいても、時々保護者の顔を見る、保護者の声がすると探す、保護者の位置を常に把握しているなどの行動が見られれば、保護者を心の拠り所としています。後追いで泣かなくても、保護者の存在を意識していることが分かります。

保護者を呼ぶ行動もサインのひとつです。「ママ」「パパ」と呼ぶ、保護者に何かを見せようとする、保護者と共有したい気持ちを表すなどの行動があれば、保護者との特別な関係があることを示しています。言葉が話せない月齢でも、声を出して保護者を呼ぶ、身振りで伝えようとするなどの行動があります。

保護者の後を追う行動自体も愛着のサインです。泣かなくても、保護者がどこに行くかを追いかける、保護者のそばにいたがる、保護者と同じことをしたがるなどの行動があれば、保護者への愛着は十分に形成されています。

保護者への特別な反応が見られれば、後追いで泣かなくても愛着は順調に形成されています。

分離時の様子

保護者と離れるときの様子も、愛着形成を確認する重要なポイントです。

後追いで泣かなくても、保護者が出かけるときに何らかの反応を示すかどうかを観察しましょう。玄関まで見送りに来る、「バイバイ」と手を振る、少し寂しそうな表情をするなどの反応があれば、保護者の不在を認識し、何かを感じているということです。完全に無関心というわけではないことが分かります。

保育園や幼稚園への登園時の様子も参考になります。激しく泣かなくても、保護者にしがみつく、保護者の手を握る、保護者の後ろに隠れるなどの行動が見られれば、分離への不安を感じています。すぐに先生のところに行けなくても、保護者と一緒にいる時間を延ばそうとする様子があれば、愛着は育っています。

保護者が戻ってきたときの反応も重要です。帰宅したときに駆け寄ってくる、笑顔を見せる、抱きつく、「おかえり」のような声を出すなどの反応があれば、保護者の帰りを喜んでいることが分かります。後追いで泣かなくても、再会を喜ぶ様子があれば、愛着は十分です。

長時間離れた後の様子も観察しましょう。保護者が数時間留守にした後、いつもより甘える、抱っこを求める、そばにいたがるなどの行動が見られれば、保護者がいないことを寂しく感じていたということです。泣かなくても、心の中では保護者を求めていたのです。

人見知りをするかどうかも関連しています。後追いで泣かなくても、人見知りをする場合は、保護者とそれ以外の人を区別できているということです。保護者は特別で安心できる存在、他の人は警戒する対象という認識があることは、愛着が形成されている証拠です。

分離時や再会時に何らかの反応があれば、後追いで泣かなくても愛着は育っています。

愛着形成のサインを確認したところで、後追いで泣かないこどもにはどのような特徴があるのか見ていきましょう。

後追いで泣かないこどもの特徴

後追いで泣かないこどもには、感情表現が穏やかで、自己調整能力が高いという特徴が見られることがあります。

後追いで泣かないこどもの最も顕著な特徴は、感情の起伏が穏やかなことです。不安を感じても激しく表現せず、比較的落ち着いて対処します。泣くという手段を選ばず、他の方法で対応しようとする傾向があります。こうしたこどもは、成長してからも、感情を適度にコントロールできる傾向があるでしょう。

我慢強い性格も見られます。保護者と離れることに不安を感じても、その不安を受け入れ、少し我慢することができます。すぐに泣いて助けを求めるのではなく、自分で何とかしようとする姿勢があります。この我慢強さは、将来の困難への対処力につながります。

自己調整能力が高いことも特徴です。不安を感じたときに、自分で気持ちを落ち着かせる方法を持っています。お気に入りのおもちゃを持つ、指しゃぶりをする、独り言を言うなど、自分なりの安心方法を見つけているのです。この自己調整能力は、成長とともにさらに発達していきます。

観察力が高い傾向もあります。保護者がどこに行ったのか、いつ戻ってくるのかを観察し、状況を理解しようとします。泣くのではなく、まず状況を把握し、それから行動を決めるという思考パターンを持っています。この観察力は、問題解決能力の基礎となります。

独立心が育っている場合もあります。保護者を求める気持ちはありますが、少しの間なら一人でも大丈夫という自信があります。自分で遊ぶことができる、自分で待つことができるという自立の芽生えが見られます。この独立心は、将来の自主性につながる大切な特性です。

集中力が高いこともあります。何かに集中しているときは、保護者がいなくなっても気づかないことがあります。遊びに夢中になれる、一つのことに長時間取り組めるという集中力は、学習においても強みとなるでしょう。

ただし、これらの特徴がすべて当てはまるわけではありません。後追いで泣かなくても、感情表現が豊かなこどももいれば、集中力はそれほど高くないこどももいます。あくまで傾向として捉え、個々のこどもの個性を尊重することが大切です。

後追いで泣かないこどもは感情表現が穏やかで自己調整能力が高い傾向があり、それは個性として捉えられる特徴です。

こうした特徴を持つこどもには、どのように関わればよいのでしょうか。

後追いで泣かないこどもへの関わり方

後追いで泣かないこどもには、感情を表現しやすい環境を作りながら、愛着を深める関わりを大切にします。

後追いで泣かないからといって、何もしなくてよいわけではありません。泣かないこどもは、自分の感情を内に秘めている可能性があります。感情を安心して表現できる環境を作ることが、保護者の役割です。また、泣かなくても不安を感じている可能性があるため、積極的に安心感を与える関わりが必要です。

こどもの感情を言葉にして伝えることが効果的です。「ママがいなくなって寂しかったね」「ちょっと不安だったね」と、こどもが感じているであろう感情を言葉にして伝えます。こども自身が言葉で表現できなくても、保護者が代わりに言葉にすることで、感情を認識しやすくなります。感情に名前をつけることが、感情理解の第一歩です。

泣かないからといって、不安を感じていないと決めつけないことも大切です。泣かなくても、こどもなりに不安を感じている可能性があります。「泣いてないから平気だろう」と思わず、「泣かないけど、心の中ではちょっと寂しいかもしれない」と想像することが重要です。その想像に基づいて、安心感を与える関わりをしましょう。

離れるときは必ず声をかけることを習慣にします。泣かないからといって、黙って離れてよいわけではありません。「トイレに行ってくるね」「すぐ戻ってくるよ」と声をかけることで、こどもは状況を理解でき、さらに安心します。泣かない子ほど、こうした声かけが必要です。

スキンシップを積極的に取ることも重要です。泣かないこどもは、自分から保護者を強く求めることが少ない傾向があります。そのため、保護者の方から積極的に抱っこする、頭を撫でる、手をつなぐなど、身体的な触れ合いを増やしましょう。スキンシップは、言葉以上に安心感を与えます。

感情表現を促すことも大切です。「悲しいときは泣いてもいいんだよ」「嫌なときは嫌って言っていいんだよ」と、感情を表現することを許可します。泣かないこどもは、感情を抑える傾向があるため、感情を出してもいいというメッセージを伝えることが必要です。

遊びの中で分離と再会を体験させることも効果的です。「いないいないばあ」遊びや、かくれんぼなど、保護者がいなくなって戻ってくる経験を遊びの中で繰り返します。楽しい体験として分離と再会を経験することで、不安が軽減され、より安心できるようになります。

こどもの独立心を尊重しながらも、愛着を深める関わりを意識的に持つことが、後追いで泣かないこどもへの関わり方の鍵です。

最後に、注意が必要なケースについて確認しておきましょう。

注意が必要なケース

後追いで泣かないこと自体は問題ではありませんが、いくつかのサインが見られる場合は専門家への相談を検討しましょう。

後追いもせず、泣きもしない場合は注意が必要です。保護者がいなくなっても全く気にしない、追いかけることもない、完全に無関心という状態は、愛着形成に課題がある可能性があります。後追いという行動がある時点で、基本的には問題ありませんが、後追いすらしない場合は、専門家の意見を聞くことをおすすめします。

保護者への特別な反応が全くない場合も相談の対象です。保護者を見ても笑わない、声を聞いても振り向かない、抱かれても反応しないなど、保護者を特別な存在として認識していない様子が見られる場合は、愛着形成に課題がある可能性があります。後追いで泣かないだけでなく、他の愛着行動も見られない場合は注意が必要です。

目を合わせない、視線が合わない場合も気をつけたいサインです。後追いで泣かない理由が、人への興味の薄さや社会性の課題による場合もあります。呼びかけても反応しない、名前を呼んでも振り向かない、指差したものを見ないなどの様子も併せて見られる場合は、専門家の意見を聞くことをおすすめします。

誰が世話をしても全く同じ反応の場合も注意が必要です。母親でも父親でも祖父母でも誰でも同じ、誰に抱かれても同じ、誰がいなくなっても平気という状態が続く場合は、特定の保護者への愛着が形成されていない可能性があります。後追いで泣かないだけでなく、保護者を特別視していない様子があれば、相談を検討しましょう。

再会を喜ばない場合も気になるサインです。保護者が長時間留守にした後、帰宅しても無反応、喜ばない、関心を示さないという様子が見られる場合は、愛着に課題がある可能性があります。泣かなくても、何らかの再会の喜びを示すことが期待されます。

他の発達の遅れが気になる場合も相談が必要です。運動発達が遅れている、言葉の理解が進まない、表情が乏しい、興味の範囲が極端に狭いなど、後追いで泣かないこと以外の発達面でも気になることがある場合は、総合的に見てもらう必要があります。

保護者自身が不安を感じている場合も、遠慮なく相談してください。「何となく気になる」「他の子と違う気がする」といった漠然とした不安でも構いません。不安を抱えたまま過ごすよりも、専門家に相談して安心を得る方が、親子双方にとって良い結果につながります。

相談先としては、まず自治体の保健センターや子育て支援センターが利用しやすいでしょう。保健師が定期的に発達相談を行っており、気軽に相談できます。必要に応じて、小児科医や発達支援の専門機関を紹介してもらうこともできます。

多くの場合、後追いで泣かないことは気質や成長段階の違いであり、問題ではありません。しかし、少しでも気になることがあれば、早めに相談することで、安心して子育てができるようになります。

後追いで泣かない理由は、感情表現が控えめな気質や情緒の安定、そして経験による慣れと認知的な成長が主な要因です。後追いで泣かないことは多くの場合問題ではなく、保護者への特別な反応や分離時の様子など、他の愛着形成のサインを総合的に見ることが大切です。

後追いで泣かないこどもには、感情を表現しやすい環境を作りながら、積極的にスキンシップや安心感を与える関わりを持つことが重要です。ただし、後追いもせず保護者への特別な反応も見られない場合は、専門家への相談を検討することをおすすめします。

監修

代表理事
佐々木知香

略歴

2017年 本田右志理事長より右脳記憶教育講座を指南、「JUNKK認定マスター講師」取得
2018年 幼児教室アップルキッズをリビングサロンとして開講
2020年 佐々木進学教室Tokiwaみらい内へ移転、「佐々木進学教室幼児部」として再スタート
2025年 一般社団法人 日本右脳記憶教育協会(JUNKK)代表理事に就任
塾講師として中高生の学習指導に長年携わる中で、幼児期・小学校期の「学びの土台づくり」の重要性を痛感。
結婚を機に地方へ移住後、教育情報や環境の地域間格差を実感し、「地域に根差した実践の場をつくりたい」との想いから、幼児教室アップルキッズを開校。
発達障害や不登校の支援、放課後等デイサービスでの指導、子ども食堂での学習支援など、多様な子どもたちに寄り添う教育活動を展開中。
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