周りの子は人見知りをしているのに、自分のこどもは誰にでもニコニコしていると感じることはありませんか。
人見知りをしない赤ちゃんを見て、愛着が形成されていないのではないか、発達に問題があるのではないかと不安になる保護者もいるでしょう。
しかし、理由は様々で、多くの場合は個性や月齢によるものです。
必ずしも問題を意味するわけではなく、愛着形成との関係を正しく理解することが大切です。
この記事では、赤ちゃんが人見知りをしない理由と、愛着形成との関係について詳しく解説します。
赤ちゃんが人見知りをしない理由は?
赤ちゃんが人見知りをしない理由は、月齢がまだ早い場合と、生まれ持った気質による場合の2つに大きく分けられます。
人見知りは一般的に生後6か月頃から始まる発達現象ですが、すべての赤ちゃんが同じ時期に同じように人見知りをするわけではありません。人見知りをしない赤ちゃんを見て心配する保護者もいますが、多くの場合は正常な発達の範囲内です。人見知りの有無や強さは、赤ちゃんの個性を表すひとつの要素に過ぎません。
人見知りをしない理由を理解するには、まず人見知りがなぜ起こるのかを知る必要があります。人見知りは、脳の発達により「見慣れた顔」と「見慣れない顔」を区別できるようになり、見慣れない顔に対して警戒心を抱くことで起こります。つまり、この区別がまだできない段階では、人見知りは現れません。
また、区別ができるようになっても、警戒心の強さは赤ちゃんによって異なります。慎重な気質の赤ちゃんは強い警戒心を示しますが、外向的で適応力の高い気質の赤ちゃんは、警戒心をあまり示さないこともあります。こうした気質の違いが、人見知りをする・しないの違いにつながるのです。
月齢がまだ早い
人見知りをしない最も一般的な理由は、まだ人見知りが始まる月齢に達していないことです。
人見知りが始まるのは、一般的に生後6か月頃からです。それ以前の赤ちゃんは、まだ顔の細かい特徴を識別する能力が十分に発達していません。生後3か月や4か月の赤ちゃんが誰にでもニコニコしているのは、人見知りをしないのではなく、まだ人見知りをする段階に達していないだけです。
生後6か月を過ぎていても、人見知りが始まる時期には個人差があります。早い赤ちゃんでは生後4か月頃から始まることもあれば、遅い赤ちゃんでは生後8か月や9か月頃から始まることもあります。生後7か月や8か月でまだ人見知りをしていなくても、それは単に始まる時期が少し遅いだけかもしれません。
脳の発達速度には個人差があり、視覚認識能力や記憶力が成熟する時期も赤ちゃんによって異なります。ある赤ちゃんは早く発達し、別の赤ちゃんはゆっくり発達する、それだけの違いです。最終的にはどの赤ちゃんも必要な能力を獲得していくため、発達の速度の違いは心配する必要がありません。
また、愛着形成にも時間がかかります。特定の養育者への愛着が深まるにつれて、その人以外への警戒心が生まれるのが人見知りです。愛着形成がまだ浅い段階では、人見知りも現れにくいのです。生後数か月の赤ちゃんが人見知りをしないのは、これから愛着を深めていく過程にあるためです。
月齢がまだ早い段階で人見知りをしないことは、まったく問題ではなく、今後の成長を見守ることが大切です。
気質による個人差
人見知りをしないもうひとつの理由は、赤ちゃんの生まれ持った気質です。
気質とは、生まれつき持っている性格的な傾向のことで、外向的か内向的か、警戒心が強いか弱いか、新しい刺激を楽しむか避けるかなど、様々な特徴があります。人見知りの強さも、この気質に大きく影響されます。
外向的で社交的な気質の赤ちゃんは、人見知りをしないことがあります。新しい人や新しい環境に対して、恐怖よりも興味を感じる傾向があるためです。知らない人を見ても「怖い」ではなく「面白そう」と感じ、笑顔を見せることがあります。こうした赤ちゃんは、成長してからも社交的で適応力の高い性格になることが多いでしょう。
警戒心が弱い気質の赤ちゃんも、人見知りをしにくい傾向があります。慎重さよりも好奇心が勝るタイプで、未知のものに対しても積極的に関わろうとします。これは性格の問題であり、良い悪いではありません。ただし、成長とともに適度な警戒心を育てる必要はあります。
適応力が高い赤ちゃんも、人見知りをしないことがあります。環境の変化や新しい人にすぐに慣れることができるため、長時間警戒心を持ち続けることがないのです。こうした赤ちゃんは、保育園などの集団生活にもスムーズに適応できることが多いでしょう。
育った環境も気質と相互作用します。日常的に多くの人と接する機会がある赤ちゃんは、様々な顔に慣れているため、人見知りが軽い傾向があります。兄弟が多い、頻繁に親戚や友人が訪ねてくる、保育園に通っているなど、人との交流が多い環境では、「知らない顔」への警戒心が薄れやすいのです。
気質による個人差で人見知りをしない場合、それは赤ちゃんの個性であり、性格の一部として受け入れることが大切です。
人見知りをしない理由が分かると、それが問題なのかどうかという疑問が浮かびます。
人見知りをしないことは問題なのか
人見知りをしないことは、多くの場合問題ではなく、赤ちゃんの個性や発達段階によるものです。
人見知りは発達の指標のひとつとして語られることが多いため、人見知りをしないと「発達が遅れているのではないか」と心配する保護者もいます。しかし、人見知りの有無だけで発達を判断することはできません。人見知りは脳の発達の一側面を示すものですが、それがすべてではないのです。
人見知りをしない赤ちゃんでも、他の発達指標が順調であれば問題ありません。首すわり、寝返り、お座り、ハイハイなどの運動発達が月齢相応に進んでいるか、保護者の顔を見て笑う、声に反応する、名前を呼ばれると振り向くなどの社会性が育っているかを総合的に見ることが大切です。
人見知りをしないからといって、愛着が形成されていないとは限りません。愛着形成の有無は、人見知りだけでなく、保護者と離れたときに不安を示すか、保護者の後を追うか、保護者に抱かれると安心するかなど、複数の行動から判断します。人見知りをしなくても、他の愛着行動が見られれば、愛着は順調に形成されています。
むしろ、人見知りをしないことにはメリットもあります。保育園の入園がスムーズ、誰にでも抱かれるため保護者の負担が軽い、外出先で人と関わりやすいなど、日常生活において助かる面も多いのです。人見知りが激しい赤ちゃんの保護者から見れば、羨ましいと感じることもあるでしょう。
ただし、全く警戒心を示さず、誰にでも同じように接する場合は、少し注意が必要です。特定の保護者への愛着が見られない、保護者と離れても全く平気、誰が世話をしても同じ反応、といった様子が見られる場合は、愛着形成に課題がある可能性もあります。こうしたケースでは、一度専門家に相談することをおすすめします。
人見知りをしないこと自体は問題ではなく、赤ちゃん全体の発達や愛着行動を見て判断することが重要です。
では、人見知りをしない赤ちゃんには、どのような特徴があるのでしょうか。
人見知りをしない赤ちゃんの特徴
人見知りをしない赤ちゃんには、いくつかの共通した特徴が見られることがあります。
人見知りをしない赤ちゃんの最も分かりやすい特徴は、誰に抱かれても泣かないことです。保護者だけでなく、祖父母、親戚、近所の人、初めて会う人にも、抵抗なく抱かれます。むしろ、知らない人に対しても笑顔を見せたり、手を伸ばしたりすることもあります。
新しい環境への適応も早い傾向があります。初めて訪れる場所でも緊張した様子を見せず、すぐに周囲を探索し始めます。病院や支援センターなど、普段と違う場所に行っても、比較的落ち着いて過ごせます。環境の変化に対して柔軟に対応できるのです。
人への興味が強いことも特徴です。知らない人がいると、じっと見つめたり、笑いかけたりします。人の顔を見ることが好きで、視線を合わせることも苦にしません。こうした赤ちゃんは、人とのコミュニケーションを楽しんでいるように見えます。
好奇心旺盛な面も見られます。新しいおもちゃ、新しい音、新しい景色など、未知のものに対して積極的に関わろうとします。警戒するよりも興味が勝るため、様々なものを触ったり見たりしようとします。この好奇心の強さが、人に対しても発揮されるのです。
機嫌が良いことが多いのも特徴のひとつです。普段からニコニコしていて、よく笑い、泣くことが少ない傾向があります。情緒が安定しており、ストレスを感じにくい気質なのかもしれません。こうした赤ちゃんは、保護者にとっても育てやすいと感じられることが多いでしょう。
ただし、これらの特徴がすべて当てはまるわけではありません。人見知りをしなくても、新しい環境には慎重な赤ちゃんもいますし、人への興味はあまり強くない赤ちゃんもいます。あくまで傾向として捉え、個々の赤ちゃんの個性を尊重することが大切です。
人見知りをしない赤ちゃんは社交的で適応力が高い傾向があり、それは個性として捉えられる特徴です。
こうした特徴を持つ赤ちゃんでも、愛着は順調に形成されているのでしょうか。
愛着形成との関係は?
人見知りをしないことと愛着形成は、必ずしも直結するものではありません。
愛着形成とは、赤ちゃんが特定の養育者との間に築く情緒的な絆のことです。この絆は、日々の一貫したケアを通じて育まれます。赤ちゃんが泣いたときに応答してもらう、お腹が空いたときに授乳してもらう、不快なときに快適にしてもらうといった経験の積み重ねが、「この人は自分を守ってくれる」という信頼感を生み出します。
人見知りは、愛着が形成された結果として現れる行動のひとつです。特定の保護者への愛着が深まることで、その人以外への警戒心が生まれるのです。しかし、愛着形成を示す行動は人見知りだけではありません。保護者と離れると不安を示す分離不安、保護者の後を追う後追い、保護者に抱かれると安心して泣き止むなど、様々な行動があります。
人見知りをしない赤ちゃんでも、これらの他の愛着行動が見られれば、愛着は順調に形成されています。例えば、誰にでも抱かれるけれど、保護者がいなくなると泣く、保護者が戻ってくると喜ぶ、保護者の声や顔を特別に認識しているといった様子が見られれば、愛着は確実に育っています。
人見知りをしない理由が気質による場合、それは警戒心の強さの違いであり、愛着の深さとは別の問題です。外向的で適応力の高い赤ちゃんは、愛着対象者への愛情は深く持ちながらも、他の人に対しても開かれた態度を示すことができるのです。
ただし、注意が必要なケースもあります。誰が世話をしても同じ反応で、特定の保護者への特別な反応が全く見られない場合は、愛着形成に課題がある可能性があります。保護者がいてもいなくても平気、保護者に抱かれても他の人に抱かれても全く変わらない、目を合わせない、後追いもしないといった様子が見られる場合は、専門家への相談を検討しましょう。
愛着形成のサインとしては、保護者の顔を見て笑う、保護者の声に反応する、保護者がいると安心する、不快なときに保護者を求める、保護者と離れることを嫌がるなどがあります。これらのサインが見られれば、人見知りをしなくても愛着は順調に形成されていると考えられます。
人見知りの有無だけで愛着形成を判断するのではなく、赤ちゃんの行動全体を見て総合的に判断することが重要です。
愛着形成の関係を理解したところで、人見知りをしない赤ちゃんにはどのように関わればよいのでしょうか。
人見知りが始まる前の赤ちゃんへの関わり方
まだ人見知りが始まっていない月齢の赤ちゃんには、愛着を深める関わりを大切にします。
人見知りをしない時期は、実は愛着を形成する大切な時期です。この時期に保護者との絆をしっかり築くことで、やがて訪れる人見知りの時期にも、健全な発達の基盤ができます。人見知りをしないからといって放置するのではなく、むしろ積極的に関わることが大切です。
赤ちゃんの欲求に素早く応答することが、愛着形成の基本です。泣いたらすぐに駆けつける、お腹が空いたら授乳する、おむつが濡れたら替えるなど、赤ちゃんのサインに敏感に反応します。この応答性の高さが、「この人は自分を守ってくれる」という信頼感を育てます。
スキンシップを十分に取ることも重要です。抱っこ、授乳、おむつ替え、お風呂など、日常のケアの中で、赤ちゃんと肌を触れ合わせます。肌の触れ合いは、オキシトシンという愛着ホルモンの分泌を促し、親子の絆を深めます。誰にでも抱かれる赤ちゃんでも、保護者との特別な時間を大切にしましょう。
目を合わせて話しかけることも愛着形成に効果的です。赤ちゃんの目を見ながら、優しく語りかけます。「おはよう」「気持ちいいね」「お腹空いたね」など、何気ない言葉でも構いません。目を合わせることで、赤ちゃんは自分が大切にされていると感じます。
一貫したケアを心がけることも大切です。できるだけ同じ人が主なケアを担当し、赤ちゃんに「いつもこの人がいる」という安心感を与えます。複数の人がバラバラに世話をするよりも、主な養育者が決まっている方が、愛着は形成されやすくなります。
遊びを通じて関わることも効果的です。「いないいないばあ」や歌遊び、おもちゃでの遊びなど、赤ちゃんと楽しい時間を共有します。楽しい経験を通じて、保護者との絆は深まっていきます。人見知りをしない時期だからこそ、こうした関わりを大切にしましょう。
まだ人見知りが始まっていない赤ちゃんには、愛着を深める日々の関わりを大切にすることが何より重要です。
それでは、専門家への相談が必要なのはどのようなケースでしょうか。
専門家への相談が必要なケース
人見知りをしないこと自体は問題ではありませんが、いくつかのサインが見られる場合は専門家への相談を検討しましょう。
まず、1歳を過ぎても全く人見知りが現れない場合です。個人差があるとはいえ、1歳頃までにはほとんどの赤ちゃんに何らかの人見知りや警戒心が見られます。1歳を過ぎても誰に対しても全く同じ反応で、特定の保護者への特別な反応が見られない場合は、一度相談してみるとよいでしょう。
特定の保護者への愛着行動が全く見られない場合も注意が必要です。保護者がいてもいなくても平気、保護者に抱かれても他の人に抱かれても全く変わらない、保護者の声や顔に特別な反応を示さないといった様子が見られる場合は、愛着形成に課題がある可能性があります。
目を合わせない、視線が合わない場合も気をつけたいサインです。人見知りをしない理由が、人への興味の薄さや社会性の課題による場合もあります。呼びかけても反応しない、名前を呼んでも振り向かない、指差したものを見ないなどの様子も併せて見られる場合は、専門家の意見を聞くことをおすすめします。
他の発達の遅れが気になる場合も相談の対象です。運動発達が遅れている、言葉の理解が進まない、表情が乏しいなど、人見知り以外の発達面でも気になることがある場合は、総合的に見てもらう必要があります。
保護者自身が不安を感じている場合も、遠慮なく相談してください。「何となく気になる」「他の子と違う気がする」といった漠然とした不安でも構いません。保護者の直感は、案外当たっていることもあります。不安を抱えたまま過ごすよりも、専門家に相談して安心を得る方が、親子双方にとって良い結果につながります。
相談先としては、まず自治体の保健センターや子育て支援センターが利用しやすいでしょう。保健師が定期的に発達相談を行っており、気軽に相談できます。必要に応じて、小児科医や発達支援の専門機関を紹介してもらうこともできます。
多くの場合、人見知りをしないことは個性や発達段階の違いであり、時間とともに変化していきます。しかし、少しでも気になることがあれば、早めに相談することで、安心して子育てができるようになります。専門家は保護者の味方であり、相談することは決して恥ずかしいことではありません。
赤ちゃんが人見知りをしない理由は、月齢がまだ早い場合と、外向的で適応力の高い気質による場合が多く、ほとんどのケースで問題はありません。人見知りの有無だけで愛着形成を判断するのではなく、保護者への特別な反応や他の愛着行動を総合的に見ることが大切です。
人見知りをしない時期だからこそ、日々の関わりを通じて愛着を深め、赤ちゃんとの絆を育んでいきましょう。ただし、1歳を過ぎても全く愛着行動が見られない場合や、他の発達面で気になることがある場合は、専門家への相談を検討することをおすすめします。
監修

略歴
| 2017年 | 本田右志理事長より右脳記憶教育講座を指南、「JUNKK認定マスター講師」取得 |
|---|---|
| 2018年 | 幼児教室アップルキッズをリビングサロンとして開講 |
| 2020年 | 佐々木進学教室Tokiwaみらい内へ移転、「佐々木進学教室幼児部」として再スタート |
| 2025年 | 一般社団法人 日本右脳記憶教育協会(JUNKK)代表理事に就任 |



